インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

突然57個の素数を要求されたときの対処法

街中で突然怖い人に

「今すぐ57個素数を教えないと殺す。一桁や二桁の小さいものは駄目だ。」

と言われたとしましょう。

要求される個数が24個であれば357686312646216567629137を覚えていれば十分でした*1

しかし、今回の怖い人はグロタンディーク素数*2が好きなのか、要求してくる素数の数が57個と多めです。しかも、一桁や二桁の小さい素数では満足してくれそうにありません。

そんなときにオススメしたいのが Shyam Sunder Gupta多項式です!!


\displaystyle f(n)=\frac{n^5 - 133n^4 + 6729n^3 - 158379n^2 + 1720294n - 6823316}{4}


この多項式さえ覚えておけば、あとはn0から56を代入していくだけの簡単なお仕事。出てくる値の絶対値を答えれば殺される心配はありません!


\begin{align}
&f(0)=-1705829\\
&f(1)=-1313701 \\
&f(2)=-991127 \\
&f(3)=-729173 \\
&f(4)=-519643 \\
&f(5)=-355049 \\
&f(6)=-228581 \\
&f(7)=-134077 \\
&f(8)=-65993 \\
&f(9)=-19373 \\
&f(10)=10181 \\
&f(11)=26539 \\
&f(12)=33073 \\
&f(13)=32687 \\
&f(14)=27847 \\
&f(15)=20611 \\
&f(16)=12659 \\
&f(17)=5323 \\
&f(18)=-383 \\
&f(19)=-3733 \\
&f(20)=-4259 \\
&f(21)=-1721 \\
&f(22)=3923 \\
&f(23)=12547 \\
&f(24)=23887 \\
&f(25)=37571 \\
&f(26)=53149 \\
&f(27)=70123 \\
&f(28)=87977 \\
&f(29)=106207 \\
&f(30)=124351 \\
&f(31)=142019 \\
&f(32)=158923 \\
&f(33)=174907 \\
&f(34)=189977 \\
&f(35)=204331 \\
&f(36)=218389 \\
&f(37)=232823 \\
&f(38)=248587 \\
&f(39)=266947 \\
&f(40)=289511 \\
&f(41)=318259 \\
&f(42)=355573 \\
&f(43)=404267 \\
&f(44)=467617 \\
&f(45)=549391 \\
&f(46)=653879 \\
&f(47)=785923 \\
&f(48)=950947 \\
&f(49)=1154987 \\
&f(50)=1404721 \\
&f(51)=1707499 \\
&f(52)=2071373 \\
&f(53)=2505127 \\
&f(54)=3018307 \\
&f(55)=3621251 \\
&f(56)=4325119
\end{align}

フィボナッチ数とp進数

F_nn番目のFibonacci数とします:

integers.hatenablog.com

\mathcal{F}:=\{F_n \mid n \in \mathbb{Z}_{>0}\}に対して、二つのFibonacci数の商からなる集合Q({\mathcal F})

\displaystyle Q(\mathcal{F}) := \left\{ \left. \frac{F_n}{F_m} \right| n, m \in \mathbb{Z}_{>0} \right\}

と定義します。黄金比を\displaystyle \phi := \frac{1+\sqrt{5}}{2}とするとき、Binetの公式

\displaystyle F_n = \frac{\phi^n-(-\phi)^{-n}}{\sqrt{5}}

よりQ(\mathcal{F})の元は\mathbb{R}において\phiの整数乗の近くにしか分布しません。一方、次が成り立ちます:

定理*1 任意の素数pに対して、Q(\mathcal{F})p進数体\mathbb{Q}_pで稠密である。

この記事ではこの定理の証明を解説します。

準備

補題1 m \mid n \Longrightarrow F_m \mid F_n.

証明. これは30:Lucas数列と原始的約数 - INTEGERSに書いてある一般的な命題をFibonacci数に適用したもの。 Q.E.D.

補題2 mを正の整数とし、n_1, n_2を整数とする(ここでは0以下の整数も許す)。このとき、F_{n_1}F_{n_2}がともにmで割り切れるならば、F_{n_1+n_2}mで割り切れる。

証明. 整数n_1, n_2に対してF_{n_1+n_2}=F_{n_2-1}F_{n_1}+F_{n_2}F_{n_1+1}が成り立つ(例えば、Binetの公式で右辺を計算すると(L_{n_1+n_2-1}+L_{n_1+n_2})/5に等しいことがわかる。L_{n-1}+L_n=5F_nが成り立つことは数学的帰納法で示せる*2 )。よって、F_{n_1}F_{n_2}mで割り切れるならばF_{n_1+n_2}も割り切れる。 Q.E.D.

補題2とF_n=(-1)^{n-1}F_{-n}より

A_n:=\{n \in \mathbb{Z} \colon \ m \mid F_n\}

\mathbb{Z}のイデアルをなすことがわかる。A_nを生成する正の整数をz(m)で表す。冒頭のフィボナッチ数の記事で述べたようにF_nが偶数であるための必要十分条件はn3の倍数であることだったので、z(2)=3がわかる。

補題3 (Lucas) n, m, kを正整数とする。このとき、
\displaystyle (m+n)^k=m^k+n^k-\sum_{j=1}^{[k/2]}(-1)^j\frac{k}{j}\binom{k-j-1}{j-1}(mn)^j(m+n)^{k-2j}
が成り立つ*3

証明. kに関する数学的帰納法で証明する。k=1, 2の場合は成り立っている。k以下で成り立つと仮定してk+1の場合にも成り立つことを証明しよう。まず、kのときに成立するという仮定より

\begin{align} (m+n)^{k+1} &= (m+n)(m+n)^k \\ &=(m+n)(m^k+n^k)-\sum_{j=1}^{[k/2]}(-1)^j\frac{k}{j}\binom{k-j-1}{j-1}(mn)^j(m+n)^{k-2j+1}\end{align}

が成り立つ。次に、k-1の場合に成立するという仮定より

\displaystyle mn(m^{k-1}+n^{k-1})=mn(m+n)^{k-1}+\sum_{j=1}^{\left[\frac{k-1}{2}\right]}(-1)^j\frac{k-1}{j}\binom{k-j-2}{j-1}(mn)^{j+1}(m+n)^{k-2j-1}.

これを最初の式に代入することにより

\begin{align}(m+n)^{k+1}&=m^{k+1}+n^{k+1}+mn(m+n)^{k-1}\\ &\quad +\sum_{j=1}^{\left[ \frac{k-1}{2}\right]}(-1)^j\frac{k-1}{j}\binom{k-j-2}{j-1}(mn)^{j+1}(m+n)^{k-2j-1}\\ &\quad -\sum_{j=1}^{[k/2]}(-1)^j\frac{k}{j}\binom{k-j-1}{j-1}(mn)^j(m+n)^{k-2j+1}\end{align}

を得る。最後の和は

\begin{align}&\quad -\sum_{j=1}^{[k/2]}(-1)^j\frac{k}{j}\binom{k-j-1}{j-1}(mn)^j(m+n)^{k-2j+1} \\ &= kmn(n+n)^{k-1} -\sum_{j=2}^{[k/2]}(-1)^j\frac{k}{j}\binom{k-j-1}{j-1}(mn)^j(m+n)^{k-2j+1} \\ &= kmn(m+n)^{k-1}+\sum_{j=1}^{\left[ \frac{k-1}{2}\right]}(-1)^j\frac{k}{j+1}\binom{k-j-2}{j}(mn)^{j+1}(m+n)^{k-2j-1}\end{align}

と変形できるので*4

\begin{align}(m+n)^{k+1} &= m^{k+1}+n^{k+1}+(k+1)mn(m+n)^{k-1}\\
 & \quad +\sum_{j=1}^{\left[ \frac{k-1}{2}\right]}(-1)^j\left\{ \frac{k-1}{j}\binom{k-j-2}{j-1}+\frac{k}{j+1}\binom{k-j-2}{j}\right\}(mn)^{j+1}(m+n)^{k-2j-1} \\ &=m^{k+1}+n^{k+1}+(k+1)mn(m+n)^{k-1} \\ &\quad +\sum_{j=1}^{\left[\frac{k-1}{2}\right]}(-1)^j\frac{k+1}{j+1}\binom{k-j-1}{j}(mn)^{j+1}(m+n)^{k-2j-1} \\ &= m^{k+1}+n^{k+1}-\sum_{j=1}^{\left[\frac{k+1}{2}\right]}(-1)^j\frac{k+1}{j}\binom{k-j}{j-1}(mn)^j(m+n)^{k-2j+1}\end{align}

となって、k+1のときも成立することが示された。 Q.E.D.

補題4 pを奇素数とする。このとき、任意の正の整数k, iに対して
\mathrm{ord}_p(F_{kz(p)p^i}) = \mathrm{ord}_p(F_{kz(p)})+i
が成り立つ。

証明. 補題3においてm\mapsto \phi^{kz(p)}, n\mapsto-(-\phi)^{-kz(p)}, k\mapsto p^iとすると、

\displaystyle F_{kz(p)p^i}=\sqrt{5}^{p^i-1}F_{kz(p)}^{p^i}+\sum_{j=1}^{\frac{p^i-1}{2}}(-1)^{jkz(p)}\sqrt{5}^{p^i-2j-1}\frac{p^i}{j}\binom{p^i-j-1}{j-1}F_{kz(p)}^{p^i-2j}

が得られる。右辺について、和のj=\frac{p^i-1}{2}のときの項がp-orderが最も小さく、その項は符号を無視すればp^iF_{kz(p)}であり、p-orderは\mathrm{ord}_p(F_{kz(p)})+iである。j < \frac{p^i-1}{2}のときに1/jの寄与が気になるのでチェックしておく。

\begin{align} &\quad \mathrm{ord}_p\left( (-1)^{jkz(p)}\sqrt{5}^{p^i-2j-1}\frac{p^i}{j}\binom{p^i-j-1}{j-1}F_{kz(p)}^{p^i-2j} \right) \\
&\geq \mathrm{ord}_p\left( \frac{p^i}{j} \right) + \mathrm{ord}_p(F_{kz(p)}^{p^i-2j}) = i-\mathrm{ord}_p(j)+(p^i-2j)\mathrm{ord}_p(F_{kz(p)})\end{align}

なので、

 i-\mathrm{ord}_p(j)+(p^i-2j)\mathrm{ord}_p(F_{kz(p)}) > \mathrm{ord}_p(F_{kz(p)})+i

すなわち

(p^i-2j-1)\mathrm{ord}_p(F_{kz(p)}) > \mathrm{ord}_p(j)

を示せばよい。今、\mathrm{ord}_p(F_{kz(p)}) \geq 1であることに注意する。1 \leq \mathrm{ord}_p(j)=t \leq i-1であったと仮定する(t=0のときは自明)。このとき、j < \frac{p^i-1}{2}であることからj \leq \frac{p^i-p^t}{2}であることがわかる。よって、

p^i-2j-1 \geq p^t-1 > t

であり、示すべきことは全て示された。 Q.E.D.

補題5 任意の正の整数iに対して
\mathrm{ord}_2(F_{3\cdot 2^i}) = i+2
が成り立つ。

証明. iに関する数学的帰納法で証明する。\mathrm{ord}_2(F_6)=\mathrm{ord}_2(8)=3なのでi=1のときは成立する。\mathrm{ord}_2(F_{3\cdot 2^i})=i+2を仮定する。

144:フィボナッチ平方数 - INTEGERSの補題1とリュカ数の記事で紹介したL_{2n}=L_n^2+(-1)^{n-1}\cdot 2より、

L_{2n}=(-1)^n\cdot 2+5F_n^2

が成り立つ。また、F_3=2なので、補題1よりF_{3\cdot 2^{i-1}}は偶数である。よって、

\mathrm{ord}_2(L_{3\cdot 2^i})=\mathrm{ord}_2(L_{2(3\cdot 2^{i-1})}) = \mathrm{ord}_2((-1)^{3\cdot 2^{i-1}}\cdot 2+5F_{3\cdot 2^{i-1}}^2) = 1.

144の記事の補題1よりF_{2n}=F_nL_nなので、

\mathrm{ord}_2(F_{3\cdot 2^{i+1}}) = \mathrm{ord}_2(F_{2(3\cdot 2^i)}) = \mathrm{ord}_2(F_{3\cdot 2^i}) + \mathrm{ord}_2(L_{3\cdot 2^i}) = i+3

となって、i+1のときも成立することが示された。 Q.E.D.

補題6 任意の素数pに対して、\{p^{-r}n \mid n, r \in \mathbb{Z}_{\geq 0}\}\mathbb{Q}_pで稠密である。

証明. p進数xを任意にとる。xp進展開が整数kを用いて

\displaystyle x=p^k\sum_{j=0}^{\infty}a_jp^j

と書けているとする(a_j0からp-1の整数)。NN\geq k+1を満たすような整数とし、\displaystyle n:=\sum_{j=0}^{N-k-1}a_jp^j \in \mathbb{Z}とする。このとき、

\displaystyle \mathrm{ord}_p(x-p^kn) = \mathrm{ord}_p\left( p^k\sum_{j=N-k}^{\infty}a_jp^j \right) = k +\mathrm{ord}_p\left( \sum_{j=N-k}^{\infty}a_jp^j \right) \geq k+(N-k) = N

となるので、xの非常に近いところにp^knはいる。 Q.E.D.

補題7 任意の素数pおよび正整数iに対して
\phi^{4z(p)p^{2i}} \equiv 1, \quad (-\phi)^{-4z(p)p^{2i}} \equiv 1 \pmod{p^{2i}\mathcal{O}_{K}}
が成立する。ここで、\mathcal{O}_{K}K:=\mathbb{Q}(\sqrt{5})の整数環\mathbb{Z}[\phi]

証明. \phi^{4z(p)p^{2i}} \equiv 1を示せば十分。pが奇素数のときは補題4より、p=2の場合は補題5よりp^{2i} \mid F_{z(p)p^{2i}}なので、

\phi^{z(p)p^{2i}}-(-\phi)^{-z(p)p^{2i}} = \sqrt{5}F_{z(p)p^{2i}} \equiv 0 \pmod{p^{2i}\mathcal{O}_K}.

よって、\phi^{z(p)p^{2i}}\equiv (-\phi)^{-z(p)p^{2i}} \pmod{p^{2i}\mathcal{O}_K}であり、これを変形すれば所望の合同式となる。 Q.E.D.

補題8 任意の素数pと正整数k、非負整数rに対して
\mathrm{ord}_p(F_{4z(p)p^{2(k+2r)}})=\mathrm{ord}_p(F_{4z(p)p^{2(k+r)}})+2r
が成り立つ。

証明. pが奇素数の場合は補題4、p=2の場合は補題5より従う。 Q.E.D.

定理の証明

n, kを任意の正整数、rを任意の非負整数とする。正整数mに対して成り立つ恒等式

x^m-y^m=(x-y)(x^{m-1}+x^{m-2}y+\cdots + xy^{m-2}+y^{m-1})

x=\phi^{4z(p)p^{2i}}, y=(-\phi)^{-4z(p)p^{2i}}を代入することによって(iは正整数)、

\begin{align} \frac{F_{4z(p)p^{2i}m}}{F_{4z(p)p^{2i}}} &= \frac{\phi^{4z(p)p^{2i}m}-(-\phi)^{-4z(p)p^{2i}m}}{\phi^{4z(p)p^{2i}}-(-\phi)^{-4z(p)p^{2i}}} \\ &=(\phi^{4z(p)p^{2i}})^{m-1}+\cdots + ((-\phi)^{-4z(p)p^{2i}})^{m-1} \\ &\equiv m \pmod{p^{2i}}\end{align}

ここで、左辺の分数が補題1によって有理整数であることと補題7を用いたことに注意。また、補題8よりpと素な正整数lが存在して、

\displaystyle \frac{F_{4z(p)p^{2(k+2r)}}}{F_{4z(p)p^{2(k+r)}}} = p^{2r}l

が成り立つ。先ほどの式でm=p^rnl, i=k+rとすると、

\displaystyle p^{2r}l\frac{F_{4z(p)p^{2(k+r)}p^rnl}}{F_{4z(p)p^{2(k+2r)}}} = \frac{F_{4z(p)p^{2(k+r)}p^rnl}}{F_{4z(p)p^{2(k+r)}}} \equiv p^rnl \pmod{p^{k+r}}

となり、lpと互いに素であることから

\displaystyle p^{2r}\frac{F_{4z(p)p^{2(k+r)}p^rnl}}{F_{4z(p)p^{2(k+2r)}}}  \equiv p^rn \pmod{p^{k+r}}

を得る。従って、

\displaystyle \mathrm{ord}_p \left( \frac{F_{4z(p)p^{2(k+r)}p^rnl}}{F_{4z(p)p^{2(k+2r)}}}-p^{-r}n \right) \geq k-r

が示された。k, r, nは任意だったので、任意のp^{-r}nという形の有理数にはいくらでも近いところにQ(\mathcal{F})の元がいることがわかった(ただし、今までの議論ではn \neq 0)。 0のいくらでも近いところにもQ(\mathcal{F})の元がいることは補題4、5よりわかる。よって、補題6より証明が完了する。 Q.E.D.

*1:S. R. Garcia, F. Luca, Quotients of Fibonacci numbers, Amer. Math. Monthly, Vol. 123, Mp. 10, (2016), pp. 1039-1044.

*2:L_nはLucas数: integers.hatenablog.com

*3:\displaystyle \frac{k}{j}\binom{k-j-1}{j-1}=\binom{k-j}{j}+\binom{k-j-1}{j-1}は整数。

*4:n < kなら\displaystyle \binom{n}{k}=0とする。

パワフル数に関するMcDanielの定理の証明

パワフル数に関する記事

integers.hatenablog.com

で紹介したMcDanielの定理

定理 (McDaniel 1982) 0でない任意の整数に対して、その数を二つの互いに素なパワフル数で表す表し方が無数に存在する。

の証明を紹介します。

Dを平方数でないような整数とし、正整数nに対する方程式

x^2-Dy^2=n − ①

およびPell方程式

x^2-Dy^2=1 − ②

を考える。解といったら、整数解を表すものとする。

補題1 (p, q)が①の解であり、(u, v)が②の解であるとする。このとき、(pu+Dqv, pv+qu)は①の解である。

証明. (pu+Dqv)^2-D(pv+qu)^2=(p^2-Dq^2)(u^2-Dv^2)=n. Q.E.D.

A:=\left( \begin{smallmatrix} p & Dq \\ q & p \end{smallmatrix}\right)とおくと、\det A=n \neq 0であり、\binom{pu+Dqv}{pv+qu}=A\binom{u}{v}である。このことと、Pell方程式が無数に解を持つことから、①は一つ解があれば無数に解を持つことがわかる。

定義 (p, q)が①の解であり、(u, v)が②の解であるとする。このとき、(pu+Dqv, pv+qu)が①のMcDaniel型の解であるとは、

  • uが奇数
  • vが偶数
  • D \mid pv+qu

であるときにいう。

命題1 (p, q)を①の解とし、(x_0, y_0)x^2-Dy^2=\pm 1の解とする。ただし、y_0 \neq 0。また、d:=(2py_0, D)とおく(最大公約数)。このとき、d \mid qならば①はMcDaniel型の解を無数に持つ。

証明. x_1:=x_0^2+Dy_0^2, y_1:=2x_0y_0とする。このとき、

x_1^2-Dy_1^2=(x_0^2-Dy_0^2)^2=1

なので、(x_1, y_1)は②の解である。y_1は偶数であるから、x_1は奇数である。

x_j+y_j\sqrt{D}=(x_1+y_1\sqrt{D})^j, \quad j=1, 2, \dots

で定まる(x_j, y_j)は②の解であり、y_1\neq 0であるからこれらは全て相異なる解である。具体的に

\displaystyle x_j=x_1^j+\sum_{\substack{k=2 \\ k: \text{偶数}}}^j\binom{j}{k}x_1^{j-k}y_1^kD^{\frac{k}{2}},

\displaystyle y_j=jx_1^{j-1}y_1+\sum_{\substack{k=3 \\ k: \text{奇数}}}^j\binom{j}{k}x_1^{j-k}y_1^kD^{\frac{k-1}{2}}

と書ける。これより、x_jが奇数でy_jが偶数であることがわかる。X_j:=px_j+Dqy_j, Y_j:=py_j+qx_jとおけば補題1より(X_j, Y_j)は①の解であるが、これがMcDaniel型であるようなjが無数に存在することを示す。

Y_j= py_j+qx_j\equiv pjx_1^{j-1}y_1+qx_1^j= x_1^{j-1}(pjy_1+qx_1) \pmod{D}

であり、

pjy_1+qx_1=2pjx_0y_0+q(x_0^2+Dy_0^2) \equiv 2pjx_0y_0+qx_0^2 = x_0((2py_0)j+qx_0) \pmod{D}

である。d=(2py_0, D) \mid qという仮定より、方程式(2py_0)s+Dt=-qx_0は整数解(s, t)を無数に持つ。s及びtはそれぞれある合同類で定まるので、(2py_0)j+qx_0Dで割り切れるようなj > 0が無数に存在することがわかる。つまり、D \mid Y_jとなるようなjが無数に存在し、そのようなjについて(X_j, Y_j)はMcDaniel型である。 Q.E.D.

補題2 (u, v)を②の解とする。このとき、(p, q)=1(すなわち、p, qが互いに素な整数)であるならば、(pu+Dqv, pv+qu)=1

証明. d:=(pu+Dqv, pv+qu)とする。このとき、

d \mid u(pv+qu)-v(pu+Dqv) = q(u^2-Dv^2)=q

かつ

d \mid u(pu+Dqv)-vD(pv+qu) = p(u^2-Dv^2)=p

なので、d=1Q.E.D.

命題2 nn \equiv 0, \pm 1 \pmod{4}であるような正整数とする。このとき、或る平方数でないような奇数Dが存在して、①は互いに素なMcDaniel型の解を無数に持つ。

証明. n=4k-1, k \geq 1の場合

  • D:=16k^2-8k+5
  • p:=8k^2-6k+2
  • q:=2k-1
  • x_0:=32k^3-24k^2+12k-2
  • y_0:=8k^2-4k+1

とする。このとき、Dは平方数ではない奇数で、p^2-Dq^2=n, x_0^2-Dy_0^2=-1が成り立つ。d_0:=(p, D)とすると

d_0 \mid 4(D-2p)-((D-2p)^2-D)=8

で、Dは奇数なのでd_0=1d_1:=(y_0, D)とすると、d_1 \mid D-2y_0=3及びD \not \equiv 0 \pmod{3}よりd_1=1。よって、命題1から①は無数にMcDaniel型の解を持つことがわかるが、d_2:=(p, q)とするとd_2 \mid (4k-1)q-p=-1よりd_2=1であるから、補題2よりそれらの解は全て互いに素である。

n=1の場合

  • D=3
  • p=2
  • q=1
  • x_0=2
  • y_0=1

とする。このとき、p^2-Dq^2=1, x_0^2-Dy_0^2=1が成り立ち、(py_0, D)=(p, q)=1。よって、命題1及び補題2より①は互いに素なMcDaniel型の解を無数に持つ。

n=5の場合

  • D=11
  • p=4
  • q=1
  • x_0=10
  • y_0=3

とする。このとき、p^2-Dq^2=5, x_0^2-Dy_0^2=1が成り立ち、(py_0, D)=(p, q)=1。よって、命題1及び補題2より①は互いに素なMcDaniel型の解を無数に持つ。

n=4k+1, k \geq 2の場合

  • D:=4k^2-4k-1
  • p:=2k
  • q:=1
  • x_0:=4k^2-4k
  • y_0:=2k-1

とする。このとき、Dは平方数ではない奇数で、p^2-Dq^2=n, x_0^2-Dy_0^2=1が成り立つ。d_0:=(p, D)とすると、d_0 \mid p^2-2p-D=1(y_0, D)=(p, q)=1は自明。よって、命題1及び補題2より①は互いに素なMcDaniel型の解を無数に持つ。

n=4k, k \geq 1の場合

  • D:=4k^2+1
  • p:=2k+1
  • q:=1
  • x_0:=2k
  • y_0:=1

とする。このとき、Dは平方数ではない奇数で、p^2-Dq^2=n, x_0^2-Dy_0^2=-1が成り立つ。d:=(py_0, D)とするとd \mid D-(2k-1)py_0=2なので、d=1(p, q)=1は自明。よって、命題1及び補題2より①は互いに素なMcDaniel型の解を無数に持つ。 Q.E.D.

定理の証明

正の整数nに対して互いに素なパワフル数の差として表す表し方が無数に存在することを示せば十分である。

n \not \equiv 2 \pmod{4}のとき
命題2によって無数に存在する①の互いに素なMcDaniel型の解を(X_j, Y_j)とする。このとき、m_1:=X_j^2, m_2:=DY_j^2とすればn=m_1-m_2であり、D \mid Y_jであるからm_1m_2は互いに素なパワフル数である。つまり、nを互いに素なパワフル数の差として表す表し方が無数に存在する。

n \equiv 2 \pmod{4}のとき
n=2+4tとおく。n^2/4=4(t^2+t)+1である。命題2の証明におけるn=1, n=4k+1, k \geq 2の場合において、n \mapsto n^2/4として考える。すなわち、

\displaystyle D:=\begin{cases} 3 & t=0 \\ 4(t^2+t)^2-4(t^2+t)-1 & t \geq 1 \end{cases}

とすると、方程式x^2-Dy^2=\frac{n^2}{4}は互いに素なMcDaniel型の解を無数に持つ。そのような解(X_j, Y_j)に対して、m_1:=X_j+\frac{n}{2}, m_2:=X_j-\frac{n}{2}とおく。このとき、n=m_1-m_2が成り立つので、m_1, m_2が互いに素なパワフル数であることを示せばよい。

解の構成X_j=px_j+Dqy_jよりX_jは偶数なので、m_1, m_2は奇数である。d:=(m_1, m_2)とすると、d \mid m_1+m_2=2X_j及びd \mid m_1-m_2=n(X_j, Y_j)=1であることと、X_j^2-DY_j^2=n^2/4より、(X_j, n)=1。以上より、(m_1, m_2)=1がわかった(D \mid Y_jに注意)。

また、

\displaystyle m_1m_2=\left( X_j+\frac{n}{2} \right) \left( X_j-\frac{n}{2} \right) = X_j^2-\frac{n^2}{4} = DY_j^2

なので、D \mid Y_j^2であることからm_1m_2はパワフル数。このことと、m_1, m_2が互いに素であることからm_1, m_2はそれぞれパワフル数であることがわかる。 Q.E.D.

具体例

冒頭にあげた過去の記事において紹介した

6=5^4\times 7^3-463^2

という表示がこの証明法から導出できることを確認しましょう。まず、9に対してこの証明法による表示を与えることから始めます(自明な表示は9=5^2-4^2でした)。


n=9=4\times 2+1に対しては、D=7, p=4, q=1, x_0=8, y_0=3というデータを取れる。このとき、x_1=x_0^2+Dy_0^2=127, y_1=2x_0y_0=48。一次方程式(2py_0)s+Dt=-qx_0はこの場合は24s+7t=-8となっており、sの一般解は2\bmod{7}。よって、X_2=px_2+Dqy_2, Y_2=py_2+qx_2が一番簡単な場合となる。(127+48\sqrt{7})^2=32257+12192\sqrt{7}よりx_2=32257, y_2=12192なので、X_2=214372, Y_2=81025を得る。こうして、

m_1=X_2^2=2^4\times 53593^2, \quad m_2=DY_2^2=5^4\times 7^3\times 463^2

に対して、9=m_1-m_2が成り立つ。

n=6の場合はn^2/4=9なので、上記X_2に対して

m_1=X_2+3=214375=5^4\times 7^3, \quad m_2=X_2-3=214369=463^3

を考えると、6=m_1-m_2を得る。


Golombの計算では6, 14, 34, 42の表示が?となっていましたが、n=14にMcDanielの証明法による表示を具体的に与えるのは大変です。