インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

n次元球の体積

半径 rn次元球の体積を V_n(r)とします。

定理 \ \ \ \displaystyle V_n(r) = \frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}r^n.

ここで、\Gamma (s)はガンマ関数です(階乗とガンマ関数 - INTEGERS)。

補題1 V_n(r)r^nに比例する。

証明. nに関する帰納法で証明する。n=1のときは V_1(r)=2rなので成立する。n-1のときに主張が正しいと仮定する。

\displaystyle V_n(r) = \int_{-r}^rV_{n-1}(\sqrt{r^2-x^2})dx

であり、帰納法の仮定より V_{n-1}(\sqrt{r^2-x^2}) = V_{n-1}(\sqrt{1-(x/r)^2})r^{n-1} なので、

\displaystyle V_n(r) = r^{n-1}\int_{-r}^rV_{n-1}(\sqrt{1-(x/r)^2})dx = r^n\int_{-1}^1V_{n-1}(\sqrt{1-t^2})dt = r^nV_n(1)

nのときも主張が成立することが示された。 Q.E.D.

a, b > 0に対してベータ関数を

\displaystyle \mathrm{B}(a, b):=\int_0^1x^{a-1}(1-x)^{b-1}dx

と定義します。次の公式は基本的なので演習問題とします。

補題2 以下の各公式が成立する。ただし、sは複素数、nは正整数、a, b > 0とする。

  1. \Gamma(s+1)=s\Gamma(s).
  2. \Gamma(1)=1, \ \Gamma(n) = (n-1)!.
  3. \displaystyle \Gamma \left(\frac{1}{2}\right) = \sqrt{\pi}, \ \Gamma\left(n+\frac{1}{2}\right) = \frac{(2n-1)!!}{2^n}\sqrt{\pi}.
  4. \displaystyle \mathrm{B}(a, b) = \frac{\Gamma(a)\Gamma(b)}{\Gamma(a+b)}.


それでは、定理の証明を与えましょう。

定理の証明. 補題1より

\displaystyle \frac{V_{n-1}(\sqrt{r^2-x^2})}{V_{n-1}(r)} = \left(1-\frac{x^2}{r^2}\right)^{\frac{n-1}{2}}

が成り立つので、

\displaystyle V_n(r) = V_{n-1}(r)\int_{-r}^r\left(1-\frac{x^2}{r^2}\right)^{\frac{n-1}{2}}dx

を得る。被積分関数が偶関数であることに注意して、u=1-x^2/r^2と置換することにより

\begin{align} V_n(r) &= rV_{n-1}(r)\int_0^1u^{\frac{n-1}{2}}(1-u)^{-\frac{1}{2}}du=rV_{n-1}(r)B\left(\frac{n+1}{2}, \frac{1}{2}\right) \\ &= rV_{n-1}(r)\frac{\Gamma\left(\frac{n+1}{2}\right)\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)}{\Gamma\left(\frac{n}{2}+1\right)}\end{align}

を得る。この式があれば数学的帰納法によって定理を証明できる。 Q.E.D.

定理から

\displaystyle V_{2m}(r) = \frac{\pi^m}{m!}r^{2m}, \quad V_{2m+1}(r) = \frac{2^{m+1}\pi^m}{(2m+1)!!}r^{2m+1}

と書けることがわかります。

216:素数と三角数の和

216と言えば

3^3+4^3+5^3=6^3

というuniqueな性質を持つ数ですが、216が関わる面白い予想があるので紹介します。

人は整数を何らかの和の形に表したくなる生き物である。

我々人類は任意の正整数を四つの平方数の和として表してみたり、

integers.hatenablog.com

三つの三角数の和として表したりしています。

integers.hatenablog.com

また、

integers.hatenablog.com

の記事で紹介したことがありますが、整数を二つか三つの素数の和で表すということにも人類は昔から興味を持っています:

Goldbach予想
4以上の任意の偶数は二つの素数の和として表すことができるだろう。

弱いGoldbach予想 (Helfgott)
7以上の任意の奇数は三つの素数の和として表すことができる。

世の中には面白いことを考える人がいて、Zhi-Wei Sunさんは次のような予想を立てています。

予想 (Sun) 216以外の任意の正整数は p+T_n と表すことができるであろう。ただし、pは素数または0であり、T_nは三角数(T_0=0を含める)。

予想が正しいかは証明されていないので何とも言えないですが、もし正しかったとして、216だけが例外的に現れるのは何とも面白く思えます。

ガウスの三角数定理

次の定理はFermatが証明抜きで成立を言明し*1、Gaussが1796年に証明したものです。

三角数定理 任意の正整数は三つ以下の三角数の和として表すことができる。

三角数に T_0=0を含めれば、任意の正整数は丁度三つの三角数の和として表すことができます。Gaussは日記に

ΕΥΡΗΚΑ! num = Δ + Δ + Δ

と書き込んだそうです。三角数定理はGauss-Legendreの三平方の定理から即座に従います。

integers.hatenablog.com

証明. mを任意の正整数とする。Gauss-Legendreの三平方の定理から 8m+3は三平方の和として表すことができるので、非負整数 A, B, Cが存在して

8m+3=A^2+B^2+C^2

と書ける。左辺は奇数なので、A, B, Cは全て奇数であるか、一つだけが奇数である。しかし、

A^2, B^2, C^2 \equiv 0, 1, 4 \pmod{8}

であるから後者のケースはあり得ない。よって、非負整数 a, b, cが存在して

A=2a+1, \ B=2b+1, \ C=2c+1

と書けるので、

\begin{align}8m+3&=(2a+1)^2+(2b+1)^2+(2c+1)^2\\ &= 4a(a+1)+1+4b(b+1)+1+4c(c+1)+1\end{align}

であり、

\displaystyle m=\frac{a(a+1)}{2}+\frac{b(b+1)}{2}+\frac{c(c+1)}{2} = T_a+T_b+T_c

が得られた。 Q.E.D.

*1:より一般の多角数定理について述べています。