§8 Proof of the structure theorem では前節のエネルギー増加法を用いて構造定理(Thm 3.5)を証明します。
(成功): 或る , 有界関数 , 非負値有界関数 が存在して
が成り立つ。(エネルギー増加): 或る複雑度がの-コンパクトな上の-加法族が存在して、エネルギー増加
が生じる。証明. が非負値有界関数であることから、も非負値有界関数であることに注意する。は複雑度が以下の-コンパクトな上の-加法族なので、非負値有界-可測関数 に§6(その三)の命題を適用することによって、非負値有界関数 と或る が存在して、
及び
が成り立つようにできることがわかる(一つとって固定する)。ここで、, と定義する。このように定義すると が成り立っており、はやはり非負値有界関数で、と の非負値有界性から の有界性が従う(非負値とは限らない)。
が成り立つので、-ノルムの三角不等式により
と評価できる。また、条件付き期待値作用素をとっても積分値は変わらなかったので、
である。あとは、であればダイコトミーの(成功)が成立することになる。よって、
と仮定して(エネルギー増加)を示す。このように仮定するとき、§5(その二)の命題2より
を満たすような有界関数 が存在する( が有界であることに注意)。すなわち、
である。このと後でに依存して選択するを用いて
とを定義する。これはを含む-コンパクトな上の-加法族なので、後は複雑度とエネルギーを計算すればよい。
とを
と分解すると、ともに第一項はと直交し(§6(その一)補題2)、従ってとも直交する(§6(その一)補題3の証明中の式より)。第二項は-可測かつと直交(§6(その一)補題3)、の第三項は-可測である。
これより、
を得る*1。
§6(その二)の命題より
である。が有界であることから*2
なので、に依存してを十分小さく取れば
とできる。は有界なので 及び も有界である。-ノルムのCauchy-Schwarzの不等式と三角不等式によって
なので、
であり、エネルギーギャップ公式より
が示された。これがエネルギー増加である。§6(その三)の複雑度の定義との選び方、より、の複雑度は以下である。 Q.E.D.
構造定理の証明
構造定理ダイコトミーに対して§7のエネルギー増加法を適用すればよい。ただし、であること、であること、及びLandauの記号(Vinogradovの記号)にパラメータが追加されていることに注意(パラメータが増えれば、全てのLandauの記号にそのパラメータを付ければ証明が問題なく回るので、帰結となるLandauの記号にもそのパラメータをつければよい。実際、証明においてパラメータは本質的な役割を果たしていなかった)。 Q.E.D.