インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

一意的に定まる或る三角形のペア

最近次の定理が証明されたことが報告されています。とてもクールな結果*1ですが、本人達の了承を得たため結果を紹介させていただきます。

定理 (Hirakawa-Matsumura) 各辺の長さおよび面積が全て有理数であるような三角形のことを有理的な三角形とよぶことにする。このとき、周の長さおよび面積が一致するような有理的な直角三角形と有理的な二等辺三角形のペアは各辺の有理数倍による相似を除いて一意的に定まる。

f:id:integers:20180712111412p:plain:w400

f:id:integers:20180712111500p:plain:w400


これらのペアは周の長さがともに864で、面積がともに23760です。

*1:一意的に決まるところにクールさを感じます。

Grimmの予想

予想 (Grimm, 1969) kを正整数とする。このとき、任意の連続するk個の正整数n+1, \dots, n+kに対して、各n+j \ (1\leq j \leq k)の或る素因数p_jが存在して、p_1, \dots, p_kは相異なる。

これは論文

C. A. Grimm, A conjecture on consecutive composite numbers, Amer. Math. Monthly 76 (10) (1969), 1126–1128.

で提出された予想です*1。この論文では具体例として


\begin{align}1802 &=2\times 17 \times 53\\
1803 &= 3 \times 601 \\
1804 &=2^2 \times 11 \times 41 \\
1805 &=5 \times 19^2 \\
1806 &=2 \times 3 \times 7 \times 43 \\
1807 &=13 \times 139 \\
1808 &= 2^4 \times 113 \\
1809 &=3^3 \times 67 \\
1810 &= 2 \times 5 \times 181\end{align}


があげられており、相異なる9個の素数を53, 601, 41, 19, 43, 139, 113, 67, 181と選べます*2

また、予想に関連して次の二つの定理を証明しています。一つ目は任意の長さの素数砂漠の存在を示すときに現れる有名な連続整数についてです。

定理1 整数n \geq 2に対するn-1個の連続整数n!+2, \dots, n!+nは予想を満たす。すなわち、2 \leq k \leq nを固定するとき、n!+kn!+j (j\neq k, 2 \leq j \leq n)を割り切らないような素因数をもつ。

証明. \lambda_k:=n!/kとすると、n!+k=k(\lambda_k+1)である。
\lambda_k+1が素数のとき: \lambda_k+1 \geq nなので、n!+2, \dots, n!+nの中には\lambda_k+1の倍数は一つしかない。

\lambda_k+1kがともに合成数であるとき: このときはn以下の全ての素数は\lambda_kを割り切るので、\lambda_kと互いに素な\lambda_k+1の素因数は全てnより大きく、やはりそれらはn!+kしか割り切らない。

\lambda_k+1が合成数でkが素数のとき: k \leq n/2のとき: 2k \leq n\lambda_kを割り切るため、この場合もn以下の全ての素数は\lambda_kを割り切り、後は同様。k > n/2のとき: kn!+jを割り切ったと仮定すると、k \mid jとなるが、j=klとするとnl/2 < j \leq nよりl < 2となって、k=jとなる。 Q.E.D.

定理2 kを正整数とする。このとき、n > k^{k-1}を満たすような連続するk個の正整数n+1, \dots, n+kに対して、各n+j \ (1\leq j \leq k)の或る素因数p_jが存在して、p_1, \dots, p_kは相異なる。

証明.jについてn+jの所望の素因数p_jの存在を示したいわけであるが、もしn+jの素因数の個数がk個以上であれば、n+j以外のk-1個の数から取ってきた素因数達と異なる素因数を必ず選べるため、それがp_jとなる。よって、n+jの素因数の個数がk個未満である場合を考える。すると、n+j=p_{1,j}^{e_{1,j}}\cdots p_{l,j}^{e_{l,j}} \ (1 \leq {}^{\exists}l \leq k-1)と素因数分解される。このとき、

p_{1,j}^{e_{1,j}}\cdots p_{l,j}^{e_{l,j}}=n+j > n > k^{k-1}

なので、鳩ノ巣原理によってp_{i,j}^{e_{i,j}} > kなる素因数が存在する。これをp_j^{e_j}と名付け候補素因数とする。素因数の個数がk個未満であるもの達の中で候補素因数が被ったものがあったと仮定する。すなわち、j > j', p:=p_j=p_{j'}であったとする。e:=\min\{e_j, e_{j'}\}とする。すると、p^e > kであるにも関わらず、p^e(n+j)-(n+j')=j-j' < kを割り切って矛盾する。従って、p_j達は所望のものである。 Q.E.D.

*1:Carl Albert Grimm, 1926/4/1 – 2018/1/2

*2:この場合は各最大の素因数を選べる。例えば、24, 25, 26, 27の場合はこのようには選べない。

経済的数・倹約的数

正整数n経済的数(resp. 倹約的数)であるとはnの素因数分解表示に用いるアラビア数字の個数がnの桁数を超えない(resp. nの桁数より小さい)ときにいいます。ただし、素因数分解表示は指数表記するものとします。

これらの概念はSantos(1995), Pinch(1998)で導入されました。

Bernardo Recamán Santos, Equidigital representation: problem 2204, J. Rec. Maths 27 (1995), no. 1, 58–59.
R. G. E. Pinch, Economical numbers, arXiv:math/9802046 [math.NT], 1998.

素数は全て経済的数ですが倹約的数ではありません。最小の倹約的数は125=5^3です。n \geq 6に対して2^nは経済的数です。

倹約的数最初の100個(n番目の倹約的数をa_nとする)

\begin{align}&a_1=125 =5^3 \\
&a_{2}=128=2^7 \\
&a_{3}=243=3^5 \\
&a_{4}=256=2^8 \\
&a_{5}=343=7^3 \\
&a_{6}=512=2^9 \\
&a_{7}=625=5^4 \\
&a_{8}=729=3^6 \\
&a_{9}=1024=2^{10} \\
&a_{10}=1029=3\times 7^3 \\
&a_{11}=1215=3^5\times 5 \\
&a_{12}=1250=2\times 5^4 \\
&a_{13}=1280=2^8\times 5 \\
&a_{14}=1331=11^3 \\
&a_{15}=1369=37^2 \\
&a_{16}=1458=2\times 3^6 \\
&a_{17}=1536=2^9\times 3 \\
&a_{18}=1681=41^2 \\
&a_{19}=1701=3^5\times 7 \\
&a_{20}=1715=5\times 7^3 \\
&a_{21}=1792=2^8\times 7 \\
&a_{22}=1849=43^2 \\
&a_{23}=1875=3\times 5^4 \\
&a_{24}=2048=2^{11} \\
&a_{25}=2187=3^7 \\
&a_{26}=2197=13^3 \\
&a_{27}=2209=47^2 \\
&a_{28}=2401=7^4 \\
&a_{29}=2560=2^9\times 5 \\
&a_{30}=2809=53^2 \\
&a_{31}=3125=5^5 \\
&a_{32}=3481=59^2 \\
&a_{33}=3584=2^9\times 7 \\
&a_{34}=3645=3^6\times 5 \\
&a_{35}=3721=61^2 \\
&a_{36}=4096=2^{12} \\
&a_{37}=4374=2\times 3^7 \\
&a_{38}=4375=5^4\times 7 \\
&a_{39}=4489=67^2 \\
&a_{40}=4802=2\times 7^4 \\
&a_{41}=4913=17^3 \\
&a_{42}=5041=71^2 \\
&a_{43}=5103=3^6\times 7 \\
&a_{44}=5329=73^2 \\
&a_{45}=6241=79^2 \\
&a_{46}=6250=2\times 5^5 \\
&a_{47}=6561=3^8 \\
&a_{48}=6859=19^3 \\
&a_{49}=6889=83^2 \\
&a_{50}=7203=3\times 7^4 \\
&a_{51}=7921=89^2 \\
&a_{52}=8192=2^{13} \\
&a_{53}=9375=3\times 5^5 \\
&a_{54}=9409=97^2 \\
&a_{55}=10000=2^4\times 5^4 \\
&a_{56}=10082=2\times 71^2 \\
&a_{57}=10112=2^7\times 79 \\
&a_{58}=10125=3^4\times 5^3 \\
&a_{59}=10201=101^2 \\
&a_{60}=10206=2 \times 3^6 \times 7 \\
&a_{61}=10240=2^{11}\times 5 \\
&a_{62}=10368=2^7\times 3^4 \\
&a_{63}=10375=5^3\times 83 \\
&a_{64}=10443=3\times 59^2 \\
&a_{65}=10449= 3^5\times 43\\
&a_{66}=10496=2^8\times 41 \\
&a_{67}=10609=103^2 \\
&a_{68}=10624=2^7\times 83 \\
&a_{69}=10625=5^4\times 17 \\
&a_{70}=10633=7^3\times 31 \\
&a_{71}=10658=2\times 73^2 \\
&a_{72}=10752=2^9\times 3\times 7 \\
&a_{73}=10935=3^7\times 5 \\
&a_{74}=10976=2^5\times 7^3 \\
&a_{75}=10985=5\times 13^3 \\
&a_{76}=11008=2^8\times 43 \\
&a_{77}=11045=5\times 47^2 \\
&a_{78}=11125=5^3\times 89 \\
&a_{79}=11163=3\times 61^2 \\
&a_{80}=11392=2^7\times 89 \\
&a_{81}=11421=3^5\times 47 \\
&a_{82}=11449=107^2 \\
&a_{83}=11664=2^4\times 3^6 \\
&a_{84}=11767=7\times 41^2 \\
&a_{85}=11776=2^9\times 23 \\
&a_{86}=11875=5^4\times 19 \\
&a_{87}=11881=109^2 \\
&a_{88}=11907=3^5\times 7^2 \\
&a_{89}=12005=5\times 7^4 \\
&a_{90}=12032=2^8\times 47 \\
&a_{91}=12125=5^3\times 97 \\
&a_{92}=12167=23^3 \\
&a_{93}=12288=2^{12}\times 3 \\
&a_{94}=12393=3^6\times 17 \\
&a_{95}=12416=2^7\times 97 \\
&a_{96}=12482=2\times 79^2 \\
&a_{97}=12500=2^2\times 5^5 \\
&a_{98}=12544= 2^8\times 7^2\\
&a_{99}=12691=2^3\times 37 \\
&a_{100}=12769=113^2\end{align}

連続する経済的数・倹約的数

Pinchは次の9連続経済的数を見つけています:


\begin{align}&1034429177995381247=51551\times 20066132140897\\ 
&1034429177995381248=2^9\times 3\times 88651\times 7596716293\\
&1034429177995381249=17\times 60848775176198897\\
&1034429177995381250=2\times 5^5\times 76757\times 2156268073\\
&1034429177995381251=3^5\times 19\times 383\times 584981475541\\
&1034429177995381252=2^2\times 7^5\times 154267\times 99741877\\
&1034429177995381253= 394007\times 2625408122179\\
&1034429177995381254= 2\times 3\times 23\times 59^3\times 1367\times 26699131\\
&1034429177995381255=5\times 26264543\times 7877001157\end{align}


実は、任意の長さの連続倹約的数の存在が

J.-M. De Koninck, F. Luca, On strings of consecutive economical numbers of arbitrary length, INTEGERS (2005), Volume: 5, Issue: 2, #A5.

で示されています。そのことを以下で証明します。

ここから「である調」に転調し、十進法に限らずb進法で考えることにする(b \geq 2)。d(n)nの桁数とする。すなわち、d(n)=[\log_bn]+1 (d(n)=d \Longleftrightarrow b^{d-1}\leq n < b^d)。

nの素因数分解を\displaystyle n=\prod_{p \mid n}p^{e_p}とするとき、\phi(n)

\displaystyle \phi(n):=\sum_{p \mid n}\left(d(p)+d'(e_p)\right)

と定義する。ただし、d'n > 1に対してd'(n)=d(n)およびd'(1)=0で定まる関数とする。h(n):=d(n)-\phi(n)とする。

定義 正整数nh(n) \geq 0を満たすときnは経済的数であるといい、h(n) > 0を満たすときnは倹約的数であるという。

\omega(n)nの相異なる素因数の個数とする: 数論的関数 ω(n) - INTEGERS

\displaystyle d(n) > \frac{\log n}{\log b} および \displaystyle \phi(n) \leq 2\omega(n)+\sum_{p \mid n}\frac{\log(pe_p)}{\log b} なので、

\displaystyle h(n) > \frac{1}{\log b}\cdot \log \prod_{p \mid n}\frac{p^{e_p-1}}{e_p}-2\omega(n) \tag{1}

が成り立つ。

補題 正整数nが素数qの二乗で割り切れるとする。このとき、q > 2b^{\omega(n)}が成り立てばnは倹約的数である。

証明. \displaystyle n=\prod_{p \mid n}p^{e_p}を素因数分解とするとき、\displaystyle \prod_{p \mid n}\frac{p^{e_p-1}}{e_p} \geq \frac{q}{2} > b^{2\omega(n)}が成り立つので、(1)より

\displaystyle h(n) > \frac{1}{\log b}\cdot \log b^{2\omega(n)}-2\omega(n)=0

となって、nは倹約的数である。 Q.E.D.

定理 (De Koninck-Luca) 任意の長さの連続する倹約的数が存在する。

証明. xを十分大きい正の数とし、\varepsilonを十分小さい正の数とする。\displaystyle k:=\left[\frac{\varepsilon \log \log x}{\log b}\right]とおく。素数定理よりx2xの間にある素数の二乗の個数は大体

\displaystyle \frac{2\sqrt{x}}{\log x}(\sqrt{2}-1)

であり、xが十分大きければこれはkより大きい。そこで、[x, 2x]内のk個の素数の平方p_1^2, \dots, p_k^2をとる。P:=\prod_{i=1}^kp_i^2とするとx^k\leq P \leq (2x)^kである。中国式剰余定理によってP-k以下の正整数nが存在して*11 \leq i \leq kに対してm_i:=n+i-1p_i^2の倍数である。過去記事の補題より

\displaystyle \omega(m_i) =O\left(\frac{\log m_i}{\log \log m_i}\right) = O\left(\frac{\log P}{\log \log P}\right) = O\left(\frac{k\log 2x}{\log \log x}\right)

なので、\varepsilonが十分小さければ

\displaystyle \log \left(2b^{2\omega(m_i)}\right)=\log 2+\log b \cdot O\left(\frac{k\log 2x}{\log \log x}\right)=\log 2+\frac{1}{3}\log x

が成り立つ。一方、

\log 2+\frac{1}{3}\log x < \frac{1}{2}\log x \leq \log p_i

であるから、2b^{2\omega(m_i)} < p_iが成り立つ。よって、補題よりm_iは倹約的数である。すなわち、長さkの連続する倹約的数m_1, \dots, m_kが得られた。x \to \inftyk \to \inftyなので定理の証明が完了する。 Q.E.D.

*1:P-k < n \leq Pとすると合同条件から矛盾する。