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数、特に整数に関する記事。

28:完全数

28は自分自身を除く約数の総和に等しいです: 1+2+4+7+14=28
このような数を完全数といいます。

完全数の例

知られている完全数のうち、小さいものだけ紹介します:
6,
28,
496,
8128,
33550336,
8589869056,
137438691328,
2305843008139952128,
2658455991569831744654692615953842176,
191561942608236107294793378084303638130997321548169216,…

完全数の定義

約数の総和関数
自然数nに対して、nの正の約数の総和を\sigma (n)で表す。
n=p_1^{e_1}\cdots p_l^{e_l}と素因数分解されるとき、\displaystyle \sigma (n) = \prod_{i=1}^{l}\frac{p_i^{e_i+1}-1}{p_i-1}が成り立つ。

公式については、\displaystyle \prod_{i=1}^l(1+p_i+p_i^2+\cdots +p_i^{e_i})を展開すればnの正の約数が丁度一度ずつ現れることと等比数列の和の公式から証明できます。特にnmが互いに素ならば\sigma (nm) = \sigma (n)\sigma (m)が成り立つことが分かります。

完全数の定義 \sigma (n)=2nが成り立つような自然数nのことを完全数という。

偶数の完全数とMersenne素数

偶数の完全数については次のように形が決まっています:

定理 (Euclid-Euler)
素数pに対して、2^p-1が素数であればn:=2^{p-1}(2^p-1)は完全数である。逆に、nが偶数の完全数ならば、ある素数pが存在してn=2^{p-1}(2^p-1)が成り立ち、更に2^p-1は素数である。

証明. 素数pに対して、2^p-1が素数であり、n:=2^{p-1}(2^p-1)とする。このとき、22^p-1は互いに素なので、

\sigma (n)=\sigma (2^{p-1}(2^p-1))=\sigma(2^{p-1})\sigma (2^p-1)

が成り立つ。

\sigma (2^{p-1})=1+2+\cdots +2^{p-1}=2^p-1

であり、

\sigma (2^p-1) =(2^p-1)+1=2^p

なので(2^p-1が素数であることに注意)、

\sigma (n) = (2^p-1)2^p=2\times 2^{p-1}(2^p-1)=2n

となってnは完全数であることが示された。逆にnを偶数の完全数とする。nは偶数なので、n=2^{m-1}kと書ける(m2以上の自然数でkは奇数)。nは完全数であるため、

\sigma (n) = \sigma (2^{m-1}k) = \sigma (2^{m-1})\sigma (k) = (2^m-1)\sigma (k) = 2n =2^mk

が成り立つ。よって、

\displaystyle \sigma (k) =\frac{2^mk}{2^m-1} = k+\frac{k}{2^m-1}

を得る。この式より、\frac{k}{2^m-1}は整数でなければならない。すると、A:=\frac{k}{2^m-1}kの約数である。\sigma (k)の定義を考えると、kはちょうど2つの約数k, Aを持つと言っている。そのような状況はkが素数であり、A=1、すなわちk=2^m-1であるときにしか生じ得ない。従って、n=2^{m-1}(2^m-1)であり、2^m-1は素数であることが示された。このとき、Mersenne素数の必要条件としてmも素数である。 Q.E.D.

この定理によって偶数の完全数とMersenne素数との間に1対1対応があることがわかります。なので
integers.hatenablog.com
で紹介したように48個のMersenne素数が知られているので、知られている偶数の完全数の個数も48個であることが分かります。
また、次の未解決問題1を解決するためには未解決問題2を解けばよいことがわかります。

未解決問題1 完全数は無数に存在するだろう。

未解決問題2 Mersenne素数は無数に存在するだろう。

これは現状、解決の見込みのない難問です。1000万桁を超えても48個しか見つかっていないようなものが無数に存在すると信じる数学者はロマンチストだと感じます。ちなみに日常で一億と聞けば大きい数と感じますが、8桁です。

2016年1月20日追記
新しい完全数が見つかったと宣言されました:
integers.hatenablog.com

奇数の完全数

一方、奇数の完全数は存在が知られていません。「存在しない」ということも証明されていません:

未解決問題3 奇数の完全数は存在するか?

「あったとするとこうでなければならない」というタイプの定理は多数知られています。次は最も基本的な結果です:

定理 (Euler) Nを奇数の完全数とすると、その素因数分解はN=\pi^{m}p_1^{2e_1}\cdots p_k^{2e_k} s.t. \pi \equiv m \equiv 1\pmod{4}なる形でなければならない(\pi, p_1, \dots, p_kは相異なる素数でm, e_1, \dots, e_kは自然数)。

\piのことを"special prime"と言います。

証明. Nの素因数分解をN=q_1^{a_1}\cdots q_l^{a_l}と表示する(q_1, \dots, q_lは相異なる奇素数(Nは奇数である)でa_1, \dots, a_lは自然数)。このとき、Nは完全数という仮定から\sigma (q_1^{a_1})\cdots \sigma (q_l^{a_l}) = 2Nが成立する。2Nは単偶数(素因数分解における2の指数が1であるような整数)なので、素因数分解の一意性により、\sigma (q_j^{a_j})のうち一つは単偶数で残りは奇数であることがわかる。\sigma (q_1^{a_1})が単偶数で、\sigma (q_2^{a_2}), \dots, \sigma (q_l^{a_l})は奇数であると仮定してよい。

\sigma (q_j^{a_j})=1+q_j+\cdots +q_j^{a_j}が奇数\Longleftrightarrow a_jが偶数

なので、a_1は奇数でa_2, \dots, a_lは偶数である。あとはq_1 \equiv a_1 \equiv 1\pmod{4}を示せばよい。もし、q_1\equiv 3\pmod{4}ならば、

\sigma (q_1^{a_1}) = 1+q_1+\cdots +q_1^{a_1} \equiv \underbrace{1+3+1+3+\cdots +1+3}_{a_1+1} \equiv 0 \pmod{4}

となって、\sigma (q_1^{a_1})が単偶数であることに反する。よって、q_1 \equiv 1\pmod{4}。次に、a_1 \equiv 3\pmod{4}と仮定する。このとき、

\sigma (q_1^{a_1}) \equiv \underbrace{1+\cdots +1}_{a_1+1} \equiv 0 \pmod{4}

で、やはり矛盾する。 Q.E.D.

最近の結果としては次のような必要条件が得られています(Nを奇数の完全数とする):

  1. N>10^{1500}.
  2. Nは少なくとも9個の相異なる素因数をもつ(Nielsen 2006).
  3. Nの最大の素因数は10^8より大きい(Goto-Ohno 2008).