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数、特に整数に関する記事。

691:リーマンゼータ関数

691

691はRiemannゼータ値\displaystyle \zeta(12)=\frac{691\pi^{12}}{638512875}に現れる素数です。

Riemannゼータ関数とEuler積表示

Riemannゼータ関数はEulerの研究を経て、1859年のRiemannによる記念碑的論文において定義された複素関数です。数学において最も重要な関数の一つです。最近では見たり、触ったり、食べたり、入り込んだりされています。

定義&命題 複素数s \in \mathbb{C}に対して、級数\displaystyle \zeta (s) = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^s}\mathrm{Re}(s) > 1で絶対収束し、正則関数を定める。ただし、実数tに対してt^s=\exp (s\log t)とする。この関数のことをRiemannゼータ関数という。
証明. まず、sが実数のときを考える。s \geq 1ならば、自然数nに対して

\displaystyle \int_n^{n+1}\frac{dt}{t^s} < \frac{1}{n^s} < \int_{n-1}^n\frac{dt}{t^s}

なので、自然数Nに対して、

\displaystyle \int_1^{N+1}\frac{dt}{t^s} < \sum_{n=1}^N\frac{1}{n^s} < 1+\int_1^N\frac{dt}{t^s}

が成り立つ。

\displaystyle \int_1^{\infty}\frac{dt}{t^s} = \begin{cases} \infty & s=1 \\ \frac{1}{s-1} & s > 1 \end{cases}

であるから、s=1\zeta (s)は発散し*1s > 1のとき、

\displaystyle \frac{1}{s-1} < \zeta (s) < 1+\frac{1}{s-1}

特に、s > 1のとき、 \zeta (s)は収束することがわかる。次に、sを複素数として、\zeta (s)s=\sigma_0 \in \mathbb{R}で収束すると仮定する。\mathrm{Re}(s) \geq \sigma_0のとき、

\displaystyle \frac{1}{|n^s|}=\frac{1}{n^{\mathrm{Re}(s)}} \leq \frac{1}{n^{\sigma_0}}

なので、\zeta (s)\mathrm{Re}(s) \geq \sigma_0で一様に絶対収束する。よって、前半の議論と合わせて、\zeta (s)\mathrm{Re}(s) > 1で広義一様に絶対収束することが示された。特に正則であることも従う。 Q.E.D.
上記証明から次が分かります。

\ \ \ \ \ \ \displaystyle \lim_{s \to +1}(s-1)\zeta (s) = 1, \ \lim_{s \to +\infty}\zeta (s) =1.

Eulerは1737年に次のEuler積表示を与えました:

Euler積表示 \mathrm{Re}(s) > 1なる複素数sに対して、等式
\displaystyle \zeta (s) = \prod_p\frac{1}{1-p^{-s}}
が成立する。ただし、右辺はすべての素数pをわたる無限積である。
証明.
\displaystyle \left| \frac{1}{1-p^{-s}}-1 \right| < \frac{2}{p^{\mathrm{Re}(s)}}

なので、\mathrm{Re}(s) > 1のとき、

\displaystyle \sum_p \left| \frac{1}{1-p^{-s}}-1 \right| < 2\zeta (\mathrm{Re}(s))

は収束し、無限積\displaystyle \prod_p\frac{1}{1-p^{-s}}は絶対収束する。以下、所望の等式を証明する。|p^{-s}| < 1なので、無限等比級数の和の公式より、

\displaystyle \frac{1}{1-p^{-s}}=1+p^{-s}+p^{-2s}+p^{-3s}+\cdots

が成り立つ。よって、2以上の整数Nに対し、

\displaystyle \prod_{p \leq N}\frac{1}{1-p^{-s}}=\prod_{p \leq N}(1+p^{-s}+p^{-2s}+p^{-3s}+\cdots )

を得る。右辺を展開すると、各項はn^{-s}という形であり、素因数分解の一意性よりこれらの自然数nは全て異なる値をとる。また、2以上の自然数は素因数分解することが可能なので、N以下の自然数nに対するn^{-s}は全て現れることがわかる。よって、

\displaystyle \prod_{p \leq N}\frac{1}{1-p^{-s}}=\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{n^s}+\sum\nolimits'\frac{1}{n^s}

である。ここで、\sum'\sum_{n > N}のある部分和を表す。よって、

\displaystyle \left| \prod_{p \leq N} \frac{1}{1-p^{-s}}-\sum_{n=1}^N\frac{1}{n^s} \right| \leq \sum_{n > N}\frac{1}{n^{\mathrm{Re}(s)}}

となり、\mathrm{Re}(s) > 1より右辺の級数はN \to \infty0に収束するので題意は示された。 Q.E.D.
Euler積表示によって、Riemannゼータ関数は素数の情報を持つ関数であることがわかります。

\zeta (s)\mathrm{Re}(s) > 1で零にならない。
無限積の収束の定義に「0でない」が含まれていることに注意します。

Riemannゼータの偶数での値の代数関係

Riemannゼータ関数\zeta (s)sが正の偶数であるような場合の値について、次のような代数関係が成り立ちます。

Williamsの定理 n2以上の整数とする。このとき、
\displaystyle \zeta (2n)=\frac{2}{2n+1}\sum_{k=1}^{n-1}\zeta (2k)\zeta (2n-2k)
が成り立つ。
これはWilliamsが1953年に発見した式で、級数と直接戦って証明する方法はM. Hata, Problems and Solutions in Real Analysis, (2007)のProblem18.7を見れば書いてあります。ここでは3年前に私が発見した証明法を紹介しますが、実はZagierが1994年に同じ手法を既に発表していました*2
補題 n2以上の整数とする。f_n\colon \mathbb{N}^2 \to \mathbb{R}
\displaystyle f_n(i, j) := \frac{2}{ij^{2n-1}}+\sum_{k=2}^{2n-2}\frac{1}{i^kj^{2n-k}}+\frac{2}{i^{2n-1}j}
と定める。このとき、
\displaystyle f_n(i, j)-f_n(i+j, j)-f_n(i, i+j) = 2\sum_{k=1}^{n-1}\frac{1}{i^{2k}j^{2n-2k}}
が成立する。
証明.
\displaystyle f_n(i, j) = \frac{1}{ij^{2n-1}}+\frac{1}{i^{2n-1}j}+\frac{i^{2n-1}-j^{2n-1}}{(i-j)i^{2n-1}j^{2n-1}}

と変形することにより、

\begin{equation}\begin{split}f_n(i+j, j)+f_n(i, i+j) &= \frac{1}{(i+j)j^{2n-1}}+\frac{1}{i^{2n-1}(i+j)}\\ & \ \ \ +\frac{1}{i(i+j)^{2n-1}}+\frac{1}{(i+j)^{2n-1}j}\\ & \ \ \ +\frac{(i+j)^{2n-1}-j^{2n-1}}{i(i+j)^{2n-1}j^{2n-1}}-\frac{i^{2n-1}-(i+j)^{2n-1}}{ji^{2n-1}(i+j)^{2n-1}}\\ &= \frac{i^{2n-1}+j^{2n-1}}{(i+j)i^{2n-1}j^{2n-1}}+\frac{1}{ij^{2n-1}}+\frac{1}{i^{2n-1}j}\end{split}\end{equation}

を得る。従って、

\begin{equation}\begin{split}f_n(i, j)-f_n(i+j, j)-f_n(i, i+j) &= \frac{i^{2n-1}-j^{2n-1}}{(i-j)i^{2n-1}j^{2n-1}}-\frac{i^{2n-1}+j^{2n-1}}{(i+j)i^{2n-1}j^{2n-1}} \\ &=2\sum_{k=1}^{n-1}\frac{1}{i^{2k}j^{2n-2k}}\end{split}\end{equation}

が示された。 Q.E.D.
Williams定理の証明.

\begin{equation}\begin{split} (2n+1)\zeta (2n) &= \sum_{i=j}f_n(i, j) \\ &= \sum_{(i, j)\in \mathbb{N}^2}f_n(i, j)-\sum_{i > j}f_n(i, j) - \sum_{i < j}f_n(i, j) \\ &= \sum_{(i, j) \in \mathbb{N}^2}\{ f_n(i, j)-f_n(i+j, j)-f_n(i, i+j) \} \\ &= \sum_{(i, j) \in \mathbb{N}^2}\sum_{k=1}^{n-1}\frac{2}{i^{2k}j^{2n-2k}} \ \ (\text{補題より}) \\ &=2\sum_{k=1}^{n-1}\left( \sum_{i \in \mathbb{N}}\frac{1}{i^{2k}} \right) \left( \sum_{j \in \mathbb{N}}\frac{1}{j^{2n-2k}} \right) = 2\sum_{k=1}^{n-1}\zeta (2k)\zeta (2n-2k).\end{split}\end{equation}
Q.E.D.

Riemannゼータの偶数での値

Williamsの定理を用いることによって、次の有名なEulerの定理を証明することができます。まず、関-Bernoulli数の定義とEuler-Ramanujanの漸化式

\displaystyle -(2n+1)B_{2n} = \sum_{k=1}^{n-1}\binom{2n}{2k}B_{2k}B_{2n-2k}

を復習しておきます:
integers.hatenablog.com

定理 (Euler 1748) nを自然数とする。このとき、
\displaystyle \zeta (2n) = \frac{(-1)^{n-1}2^{2n-1}B_{2n}}{(2n)!}\pi^{2n}
が成り立つ。ここで、B_{2n}は関-Bernoulli数である。
証明. n=1のときは\zeta (2) = \frac{\pi^2}{6}であり、これは既に証明している:
integers.hatenablog.com
n \geq 2のとき、n-1以下で主張が成立すると仮定して数学的帰納法によって証明する。Williamsの定理に帰納法の仮定を適用することにより、

\begin{equation}\begin{split}\zeta (2n) &= \frac{2}{2n+1}\sum_{k=1}^{n-1}\frac{(-1)^{k-1}2^{2k-1}B_{2k}}{(2k)!}\pi^{2k}\cdot \frac{(-1)^{n-k-1}2^{2n-2k-1}B_{2n-2k}}{(2n-2k)!}\pi^{2n-2k} \\ &= \frac{(-1)^{n}2^{2n-1}}{(2n+1)(2n)!}\left( \sum_{k=1}^{n-1}\binom{2n}{2k}B_{2n}B_{2n-2k} \right) \pi^{2n}\end{split}\end{equation}

と計算される。よって、Euler-Ramanujanの漸化式によってnの場合も所望の等式が成立することが示された。 Q.E.D.
前回の記事で予言した通り、次の結果が得られます:

自然数nに対して、(-1)^{n-1}B_{2n} > 0が成り立つ。
証明. \zeta (2n) >0なので。 Q.E.D.

Riemannゼータ値と素数の無限性

Riemannゼータ関数はEuler積表示によって素数の情報を持っていると述べました。例えば、「素数の無限性」ぐらいだったら\zeta (s)の色々な部分を眺めることによって証明できます。ここでは3通りの証明法を紹介します。

\zeta (1)=\inftyを用いる証明。

もし、素数が有限個しか存在しなければ、

\displaystyle \prod_p\frac{1}{1-p^{-1}}

は有限確定値をとる。Euler積表示によって、これは

\displaystyle \lim_{s \to +1}\zeta (s)

に等しいため、\zeta (1)=\inftyに矛盾する。よって、素数は無数に存在する。 Q.E.D.

\zeta (2)=\frac{\pi^2}{6}を用いる証明。

integers.hatenablog.com
でNivenによる円周率の無理性証明(1947年)を紹介しました。この証明を受けて、岩本義和が1949年に\pi^2の無理性についても同様の証明が適用可能であることを指摘しました。
\pi^2の無理性証明. 自然数a, bを用いて\pi^2=a/bと書けたと仮定する。自然数nを固定し、

\displaystyle f(x) = \frac{x^n(1-x)^n}{n!}

とおく。このとき、Nivenの証明と全く同じ理由によってf^{(j)}(0), f^{(j)}(1) \in \mathbb{Z} \ (0\leq j\leq 2n)がわかる。更に、

\displaystyle F(x) := b^n\sum_{k=0}^{n}(-1)^k\pi^{2n-2k}f^{(2k)}(x)

とおく。このとき、F''(x) = -\pi^2F(x)+b^n\pi^{2n+2}f(x)なので、

\begin{equation}\begin{split} \frac{d}{dx}\Bigl[ F'(x)\sin \pi x-\pi F(x)\cos \pi x \Bigr] &= (F''(x)+\pi^2F(x))\sin \pi x \\ &= b^n\pi^{2n+2}f(x)\sin \pi x \\ &= \pi^2 a^nf(x) \sin \pi x\end{split}\end{equation}

が得られる。よって、

\displaystyle \pi \int_0^1a^nf(x)\sin \pi xdx=F(0)+F(1)

となって、最初の方の指摘から、これは整数である。一方、

\displaystyle 0 < \pi \int_0^1a^nf(x)\sin \pi xdx < \frac{\pi a^n}{n!}

なので、nを十分大きくとれば01の間に整数が存在することが示される。 Q.E.D.

この証明に類似した方法で\cos 2が無理数であることを証明することができます:
integers.hatenablog.com

素数の無限性証明. 素数が有限個であったと仮定する。このとき、Euler積表示

\displaystyle \zeta (2) = \prod_p\frac{1}{1-p^{-2}}

は有理数を高々有限個掛け合わせたものなので、やはり有理数である。しかし、その真の値\pi^2/6は無理数であるため、矛盾である。 Q.E.D.

\displaystyle 2\zeta (2)^2 = 5\zeta (4)を用いる証明。

\zeta (2)\zeta (4)の間には

\displaystyle \frac{\zeta (4)}{\zeta (2)^2} = \frac{2}{5}

という代数関係があります。これは\zeta (2)=\frac{\pi^2}{6}および\zeta (4)=\frac{\pi^4}{90}から証明できるのですが、n=2の場合のWilliamsの定理とその証明を考えることによって、円周率を経由することなく簡単に証明することができます。そうして、この関係だけから素数の無限性が出てきます:
証明. 素数が有限個であると仮定する。Euler積表示により、

\displaystyle \zeta (2) = \prod_p\frac{1}{1-p^{-2}} = \prod_p\frac{p^2}{p^2-1}

および、

\displaystyle \zeta (4) =\prod_p\frac{1}{1-p^{-4}}=\prod_p\frac{p^4}{p^4-1}

が成り立つ。よって、

\displaystyle \frac{2}{5}=\frac{\zeta (4)}{\zeta (2)^2} = \prod_p \frac{p^2-1}{p^2+1}-①

が得られる。さて、p3以外の素数の場合、p^2-13の倍数でp^2+13の倍数ではない(これは
integers.hatenablog.com
の冒頭で述べた事実です)。よって、2/5の分子は3の倍数ではないことから、素数は3しか存在し得ないことが証明された。そんなわけはない。 Q.E.D.


こうしてゼータを適当につつけば素数の無限性が出てくることが分かりますが、もっと精密にゼータの身体検査を行えば、素数に関するもっと深い結果が出てきます。それは将来の記事で紹介していきます。

*1:\zeta (1)=\inftyと表現することにします。

*2:ゴールの公式を知らずに取り組んでいたので、関-Bernoulli数が現れることなくここまで綺麗な関係が成り立つと分かった瞬間は感動しました。ちなみに、証明した当時私が不勉強だっただけで、この証明法は極めて自然です。