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数、特に整数に関する記事。

37:非正則素数

37は最小の非正則素数です。100までの非正則素数は37, 59, 67の3つです。

定義 ある自然数nに対する\displaystyle \frac{B_{2n}}{2n}の分子に現れる素数のことを非正則素数という。また、そうでないような素数のことを正則素数という。

ここで、B_{2n}は関-Bernoulli数です:
integers.hatenablog.com
上の記事の言葉で言えば、「N_{2n}の素因数分解に現れる赤くない素数」が非正則素数です(神秘的な素数と呼んでいました)。nが小さい順に見て行ったときに最初に現れる非正則素数は691でしたが、最小というわけではありません。大きい素数が現れる傾向があるように見えますが、nが大きいところまで見ていくと、ひょこっと小さい非正則素数が現れたりします。N_{32}=−7709321041217=−37\times 683\times 305065927に現れる37が最小の非正則素数です。

それでは非正則素数の例を少しだけみてみましょう:

37 59 67 101 103 131 149 157 233
257 263 271 283 293 307 311 347 353
379 389 401 409 421 433 461 463 467
491 523 541 547 557 577 587 593 607
613 617 619 631 647 653 659 673 677
683 691 727 751 757 761 773 797 809
811 821 827 839 877 881 887 929 953
971 1061 1091 1117 1129 1151 1153 1193 1201

つまり、691は47番目の非正則素数です。
なお、以下のTシャツを着れば10000以下の全ての非正則素数が分かります:
tmix.jp

素数Tシャツは色々な種類があるようです:
matome.naver.jp

普通は非正則素数は次のように定義します*1:

定義 素数pN_2, N_4, \dots, N_{p-3}のいずれかを割り切るとき、pを非正則素数とよぶ。

Kummerの合同式等を用いることによって最初の定義と同値であることがわかるのですが、これについては後々紹介する予定なので、この記事では最初の定義を採用します。しかしながら、この2つ目の定義を用いることによって、与えられた素数が正則か非正則かを判定することは有限のサーチで可能であることが分かります。データおよびheuristicな議論によれば、正則素数は素数全体において61%程であると思われています。100までの非正則素数が3つしかなかったことに比べれば非正則素数はたくさん存在するわけですが、それでも正則素数の方がリードしているようです。ところで、これらは飽くまで推測にすぎず、数学的な現状は「正則素数が無数に存在するかは未解決」であり、「非正則素数が無数に存在することは証明済み」です。

非正則素数が無数に存在することの証明

これは簡単に証明できます。関-Bernoulli数で紹介したN_{2n}の数値例をみれば、n\geq 8に対してはいつでも「赤くない素数」が素因数分解に現れていることが分かります。このような「赤くない素数」が非正則素数であったわけですが、もし万が一、十分大きいnに対してはN_{2n}の素因数分解には常に\pm 1か赤い素数しか現れないという悲劇的状況が生じていれば、我々は非正則素数を手に入れることが出来なくなります。というわけで「このような悲劇的状況は発生していない」ことを証明することが1つ目のステップとなります。例えこれが証明できても、「十分大きいnに対しては新しい赤くない素数が出現することはなく、それまでに現れた有限個の非正則素数しか現れなくなる」という状況が発生する可能性があります。もしそうだったら非正則素数は有限個しか存在しないことになりますが、Von-Staudt-Clausenの定理を用いて「それまでに獲得した非正則素数を関-Bernoulli数の分母に匿う」ことによって、新しい非正則素数を確保することができます。

補題 十分大きいnに対して、\displaystyle \frac{|B_{2n}|}{2n} > 1である。

証明. Eulerの定理
integers.hatenablog.com
によって\displaystyle \frac{|B_{2n}|}{2n}=\frac{(2n-2)!}{2^{2n-1}\pi^{2n}}\zeta (2n)と書けるが、これはn \to \inftyで発散する。 Q.E.D.

非正則素数の無限性の証明(Carlitzによって簡略化された証明). p_1, \dots, p_kを与えられた非正則素数とする。自然数パラメータrをとって、n:=r(p_1-1)\cdots (p_k-1)とおく。補題から十分大きいrをとることによって\displaystyle \frac{|B_{2n}|}{2n} >1とできる。特に、B_{2n}/2nを既約分数表示した際の分子の絶対値は2以上である。よって、その分子の素因数が必ず存在するが、1つとってpとする。これは定義から非正則素数である。一方、nの定義からVon-Staudt-Clausenの定理によってp_1, \dots, p_kB_{2n}/2nの分母に現れており、特に分子には現れない。すなわち、pは与えられた非正則素数p_1, \dots, p_kのいずれとも異なる非正則素数である。 Q.E.D.

Kummerの救出

ここまでの文脈では何故、非正則素数に「非正則」という否定的名称が付いているかは分からないと思います。実は正則素数は次のように役立ったことがあります:

定理 (Kummer).
奇素数pが正則素数であれば、x^p+y^p+z^p=0は自然数解を持たない。

Fermatの最終定理は指数が4か奇素数のときに証明すれば十分なわけですが、Kummerは19世紀にこれだけの成果をあげていたのです。つまり、推測としてはKummerはFermatの最終定理を61%解決していました。しかしながら、現在のところ「Kummerが無数の素数に対してFermatの最終定理を解決していたか」は確定していないわけです。どうか正則素数の無限性をどなたか証明してください。

*1:より代数的な定義は将来の記事で扱います。