インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

tsujimotter氏の記事の補足: 正則素数とFLTのファーストケース

定理解説

新年早々にtsujimotter氏がFLT(Fermat's little theoremの方ではなく、Fermat's last theorem)に関する大変素晴らしい記事を書かれました:
tsujimotter.hatenablog.com
tsujimotter氏の記事では証明における最大のキーポイントが解説されています。そこで、この記事ではtsujimotter氏の記事に書かれていない証明の詳細を少し埋めてみたいと思います。勿論、完全に詳細を埋めることは大変なので、証明の大筋の解説と思って頂ければ幸いです。

tsujimotter氏の記事の内容の復習と本記事の目標

まず、主役となる正則素数を定義します。以下、pは素数とし、1の原始p乗根\zeta_p \in \mathbb{C}を固定します。また、\mathbb{Q}(\zeta_p)の類数をh_pとします。

定義 条件p \nmid h_pが満たされるような素数のことを正則素数という。

これは過去の記事
integers.hatenablog.com
における関-Bernoulli数を用いた定義と違うじゃないかと思われるかもしれません。そうなのです。「違うじゃないか!」と怒りたくなるほど見た目の異なるこれらの定義が実は同値なのです。これぐらいの定理を目の当たりにすると「数学は本当に凄い」と思うようになるなるのですが、残念ながらその証明はこの記事では扱いません。なお、正則素数でない素数のことを非正則素数と言い、引用記事でその無限性を証明しました。関-Bernoulli数を用いた定義からするとある意味自然な証明だったわけですが、類数を用いた定義から考えると証明できる気がしない類の命題となります。

Kummerは次の驚くべき成果をあげました:

定理 p > 2が正則素数ならば、x^p+y^p=z^pは自然数解をもたない(FLT(p)が正しい)。

Kummerの定理の凄さの一つ目は、個々の素数に対するFLTを証明するのではなく、一度に多数のpに対するFLTを解決した点です。

なお、FLTに関する19世紀に得られた定理の証明はファーストケース(x, y, zが全てpで割れない場合)およびセカンドケース(p \mid xyzの場合)に場合分けされることが多く、一般にファーストケースの方が簡単でセカンドケースの方が格段に難しくなります。

tsujimotter氏の記事の主題はKummerの定理のファーストケースの証明において、正則素数という条件がどこに効いてくるのかを解説したものです。簡単に復習すると、「類数が1ならば理想世界(イデアル)に行くことなく現実の数で戦うことが出来るので、p=3のときと同様な証明が上手くいくはずだ」という考え方が最初にあって、「たとえ類数が1でなくても、pが正則素数であれば群論的考察によって、議論したいイデアルに関しては現実の数で実現することができる」というものでした。

それは全く正しい理解なのですが、「現実の数で実現できればFLTは証明可能である」というのは自明ではありません。「イデアルを持ち出さなければどんな問題でも解ける」というわけではないはずです。それに、p=3で上手くいったのはもしかしたら偶然だったかもしれません。また、完全系列

1 \longrightarrow \mathcal{O}^{\times} \longrightarrow K^{\times} \longrightarrow \mathcal{I}_K \longrightarrow \mathrm{Cl}(K) \longrightarrow 1

が示すように、準同型K^{\times} \longrightarrow \mathcal{I}_Kを仮に(現実世界)から(理想世界)への写像だと思ったときに、\mathrm{Ker}(K^{\times} \longrightarrow \mathcal{I}_K)=\mathcal{O}^{\times}および\mathrm{Coker}(K^{\times} \longrightarrow \mathcal{I}_K)=\mathrm{Cl}(K)の両方が二世界の'ずれ'を表しています(Kは数体、\mathcal{O}はその整数環、\mathcal{I}_KKの分数イデアル群、\mathrm{Cl}(K)Kのイデアル類群)。つまり、正則素数の定義が処理してくれるのはイデアル類群の方のみなので、p > 3の場合は単数の扱いが難しくなって解けないということは十分にありえそうです。そういうわけで、「ちゃんと最後まで証明を見ないと本当に解決しているか疑問に思えてきたのでファーストケースの場合の証明を埋めよう」というのが本記事の目標です(Washingtonの教科書を参考にしています)。

ファーストケースのみならばSophie Germainも別の一般的定理を得ていたのですが、Kummerの定理の二つ目の凄さは、セカンドケースでも証明できることです。セカンドケースの場合は正則素数であることがどのように効いてくるかも自明ではないように思えますし、この場合には実際に単数の取り扱いが難しくなります。実は、Kummerが1847年に発表した論文ではpの正則性だけではなく、単数に関するある仮定を追加した上でFLTを証明していました。しかしながら、Kummerは3年後、正則性からその仮定が導かれることを証明したのです(Kummerの補題)。このKummerの補題の証明は現代的に見ればKubota-LeopoldtのpL関数を使う証明、あるいは(不分岐)類体論を用いた証明がよく知られていますが、どちらも準備がいるため、今回の記事で扱うことは断念します*1。とはいえ、正則素数は単数についての情報までをも引き出すとは驚きです。セカンドケースの難しさを見る為に、付録としてFLT(3)の証明を最後に載せます。

準備

pは奇素数とする。

命題1 \mathbb{Q}(\zeta_p)の整数環は\mathbb{Z}[\zeta_p] である。特に、\mathbb{Z}[\zeta_p] はDedekind整域である。

これは如何にも成り立ちそうな気もする基本的な命題ですが、証明は意外にも、ある程度の議論が必要となります。というわけで、今回は証明は割愛します。

前節で議論したことに関わるのですが、単数に関するある命題が必要となります。その命題を証明するために、3つほど補題を示します:

補題1 代数的整数\alphaに対して、\alphaの任意の共役元の絶対値が1ならば\alpha1の冪根である。

証明.dおよびC > 0が与えられたとき、次数がd以下の代数的整数であって、その任意の共役元の絶対値がC以下であるようなものは高々有限個である」ことをまず示す。そのような代数的整数\betaを一つとり、その最小多項式f(x)を考える。このとき、\deg f(x) \leq dであり、係数は\betaの共役元の基本対称式で書ける。よって、\betaに対する仮定から、f(x)の係数の絶対値はdCのみに依存した数で上から押さえることができる。すなわち、f(x)の係数の候補は有限個であり、f(x)の候補も有限個となって、結局\betaの候補も有限個となる。さて、任意の共役元の絶対値が1であるような代数的整数\alphaを考えよう。このとき、\alphaの任意の冪についても共役元の絶対値が1であり、なおかつ、次数は\alphaの次数以下である。よって、前半で示した有限性から、あるn, m \ (n\neq m)が存在して\alpha^n=\alpha^mが成り立つ。このとき、\alpha^{n-m}=1となって\alpha1の冪根であることが示された。 Q.E.D.

補題2 pと互いに素な自然数r, sに対して、\displaystyle \frac{\zeta_p^r-1}{\zeta_p^s-1} \in \mathbb{Z}[\zeta_p]^{\times}が成り立つ。

証明 spが互いに素であるから、st\equiv r \pmod{p}なるt \in \mathbb{Z}_{ > 0}をとることができる。このとき、

\displaystyle \frac{\zeta_p^r-1}{\zeta_p^s-1} = 1+\zeta_p^s+\cdots +\zeta_p^{s(t-1)} \in \mathbb{Z}[ \zeta_p]

が成り立つ。同様に、\displaystyle \frac{\zeta_p^s-1}{\zeta_p^t-1} \in \mathbb{Z}[\zeta_p] が示される。 Q.E.D.

補題3 単項イデアル(1-\zeta_p)\mathbb{Z}[\zeta_p] の素イデアルである。

証明 \displaystyle X^{p-1}+\cdots +X+1 = \prod_{i=1}^{p-1}(X-\zeta_p^i)においてX=1とすることによって、\displaystyle p=\prod_{i=1}^{p-1}(1-\zeta_p^i)を得る。補題2より単項イデアルとしては

(1-\zeta_p^i)=(1-\zeta_p) \ (i=1, \dots, p-1)

なので、(p)=(1-\zeta_p)^{p-1}が成り立つ。素イデアル分解の一般論により、(p)=\mathfrak{p}_1\cdots \mathfrak{p}_dと素イデアル分解されているとき(\mathfrak{p}_i達は等しくてもよい)、d\leq p-1である。よって、(1-\zeta_p)は素イデアルでなければならない。 Q.E.D.

命題2 \varepsilon \in \mathbb{Z}[ \zeta_p]^{\times}に対し、\varepsilon_1 \in \mathbb{Q}(\zeta_p+\zeta_p^{-1})およびr \in \mathbb{Z}が存在して\varepsilon = \zeta_p^r\varepsilon_1とできる。

証明. \alpha := \varepsilon / \overline{\varepsilon}とする。ここで、\overline{\varepsilon}\varepsilonの複素共役を表す。\varepsilonは単数なので、\alpha \in \mathbb{Z}[\zeta_p] である。|\varepsilon|=|\overline{\varepsilon}|であるため、|\alpha|=1が成り立つが、実は\alphaの任意の共役元が絶対値1である。これはGalois群の元と複素共役が可換であることから従う。よって、補題1より\alpha1の冪根である。つまり、ある整数aが存在して\alpha = \pm \zeta_p^{a}と書ける(このことを確かめるには若干の議論が必要である。\zeta_nを固定された1の原始n乗根とする。まず、mが奇数ならば\mathbb{Q}(\zeta_{2m})=\mathbb{Q}(\zeta_m)であることに注意する。この上で、以下m, n \not \equiv 2 \pmod{4}であると仮定する。\mathrm{prime}(d(\mathbb{Q}(\zeta_m))=\mathrm{prime}(m)が知られている(それは判別式を計算した結果そうなっているという類の証明である)。ここで、\mathrm{prime}(m)mの素因数全体のなす集合であり、d(\mathbb{Q}(\zeta_m))\mathbb{Q}(\zeta_m)の判別式。よって、nmが互いに素ならば\zeta_m \not \in \mathbb{Q}(\zeta_n)がわかる。なぜならば、もし、\zeta_m \in \mathbb{Q}(\zeta_n)だと\mathbb{Q}(\zeta_m) \subset \mathbb{Q}(\zeta_n)となって、mの素因数qをとると\mathbb{Q}(\zeta_m)で分岐し、従って\mathbb{Q}(\zeta_n)で分岐することになる。これはq \mid nを意味するので矛盾)。ところが、\pm+であることが以下のように示される: \varepsilon / \overline{\varepsilon} = -\zeta_p^aと仮定する。\varepsilon \in \mathbb{Z}[\zeta_p] なので、

\varepsilon = b_0+b_1\zeta_p+\cdots +b_{p-2}\zeta_p^{p-2}

と書ける(b_0, \dots, b_{p-2} \in \mathbb{Z})。1 \equiv \zeta_p \pmod{1-\zeta_p}なので、

\varepsilon \equiv b_0+b_1+\cdots +b_{p-2} \pmod{1-\zeta_p}

が分かる。しかし、1 \equiv \zeta_p^{-1} \pmod{1-\zeta_p}でもあるため、

\overline{\varepsilon} = b_0+b_1\zeta_p^{-1}+\cdots + b_{p-2}\zeta_p^{-(p-2)} \equiv b_0+b_1+\cdots +b_{p-2} \pmod{1-\zeta_p}

である。すなわち、\overline{\varepsilon} \equiv \varepsilon = -\zeta_p^a\overline{\varepsilon} \equiv -\overline{\varepsilon} \pmod{1-\zeta_p}となって、2\overline{\varepsilon} \equiv 0 \pmod{1-\zeta_p}が得られる。今、2 \not \in (1-\zeta_p)である(補題3の証明より(1-\zeta_p)pの上にある)ため、\overline{\varepsilon} \in (1-\zeta_p)となる((1-\zeta_p)は素イデアルであることに注意)。これは\overline{\varepsilon}が単数であることに反する。よって。\varepsilon / \overline{\varepsilon} = \zeta_p^aであることが示された。2r\equiv a\pmod{p}なる整数rをとって、\varepsilon_1 := \zeta_p^{-r}\varepsilonと定める。このとき、\overline{\varepsilon}_1=\zeta_p^r\overline{\varepsilon}=\zeta_p^{r}\zeta_p^{-a}\varepsilon = \zeta_p^{-r}\varepsilon =\varepsilon_1となる。故に\varepsilon_1 \in \mathbb{Q}(\zeta_p) \cap \mathbb{R} = \mathbb{Q}(\zeta_p+\zeta_p^{-1})を得る。 Q.E.D.

更にいくつか準備をします:

補題4 FLT(p)のファーストケースにおいて、xyが互いに素であれば、(x+\zeta_p^iy) \ (i=0, \dots, p-1)はどの2つをとっても互いに素である。

証明 素イデアル\mathfrak{p}がある1 \leq i \neq j \leq p-1に対して、\mathfrak{p} \mid x+\zeta_p^iyかつ\mathfrak{p} \mid x+\zeta_p^jyを満たすと仮定する。このとき、\mathfrak{p} \mid \zeta_p^iy-\zeta_p^jy = (\text{ある単数})\times (1-\zeta_p)yとなる(補題2)。よって、\mathfrak{p} = (1-\zeta_p)であるか\mathfrak{p} \mid yが成り立つ((1-\zeta_p)が素イデアルであることに注意)。一方、\mathfrak{p} \mid \zeta_p^j(x+\zeta_p^iy)-\zeta_p^i(x+\zeta_p^jy) = (\text{ある単数})\times (1-\zeta_p)xとなるので、\mathfrak{p}=(1-\zeta_p)であるか\mathfrak{p} \mid xである。もし、\mathfrak{p} \neq (1-\zeta_p)ならば\mathfrak{p} \mid x, yとなって、x, yはある共通の素数で割り切れることになる。これは仮定に反する。よって、\mathfrak{p}=(1-\zeta_p)である。x+y \equiv x+\zeta_p^iy \equiv 0 \pmod{\mathfrak{p}}なので、x+y \in \mathbb{Z}であることからx+y \equiv 0 \pmod{p}を得る。従って、z^p=x^p+y^p \equiv x+y \equiv 0\pmod{p}となる。pは素数なのでp \mid zとなって、ファーストケースであることに矛盾する。 Q.E.D.

補題5 任意の\alpha \in \mathbb{Z}[\zeta_p] に対して、\alpha^pはある有理整数と法pで合同である。

証明. \alpha = b_0+b_1\zeta_p+\cdots +b_{p-2}\zeta_p^{p-2} \ (b_i \in \mathbb{Z})とする。このとき、

\alpha^p \equiv b_0^p+b_1^p\zeta_p^p+\cdots +b_{p-2}^p\zeta_p^{(p-2)p} = b_0^p+\cdots +b_{p-2}^p \pmod{p}
Q.E.D.

補題6 \alpha = a_0+a_1\zeta_p+\cdots +a_{p-1}\zeta_p^{p-1}, \ a_j \in \mathbb{Z}に対して、少なくとも1つのiについてa_i=0であると仮定する。このとき、p \mid \alphaならば、全ての0\leq j \leq p-1に対してp \mid a_jとなる。

証明. 1+\zeta_p+\cdots +\zeta_p^{p-1}=0なので、\{1, \zeta_p, \dots, \zeta_p^{p-1}\}の任意のp-1個の元からなる部分集合は\mathbb{Z}[\zeta_p] の基底をなす。a_i=0なるiが一つあるため、残った係数は基底の係数となる。あとは\alpha /p\mathbb{Z}[\zeta_p ] の元として同じ基底を用いて有理整数係数で表すことによって、係数の一意性から題意が従う。Q.E.D.

FLT(3)のファーストケースを先に証明しておきます:

p=3の場合の証明

3 \nmid xならば、x^3\equiv \pm 1 \pmod{9}が成り立つ。よって、x^3+y^3\equiv \pm 2 \ \text{or} \ 0\pmod{9}である。一方、z^3\equiv \pm 1\pmod{9}であるからx^3+y^3 \neq z^3となる。 Q.E.D.

p=5の場合の証明(不要)

次の節の証明はp\geq 5なる正則素数に対して適用可能な証明ですが、実は上の簡単な論法はp=5に対しても働きます:

5 \nmid xならば、x^5 \equiv \pm1, \pm 7\pmod{25}が成り立つ。よって、x^5+y^5 \equiv \pm 8, \ \text{or} \ 0, \ \text{or} \ \pm 6\pmod{25}である。一方、z^5 \equiv \pm 1, \pm 7\pmod{25}なので、x^5+y^5 \neq z^5となる。 Q.E.D.

この論法がいつまでも続けばファーストケースはとても簡単ということになるのですが、1^7+30^7 \equiv 31^7\pmod{49}であるため、p\geq 7に対しては一般にこの論法は適用できません。

証明

p\geq 5なる正則素数pに対して、p \nmid xyzなる整数x, y, zが存在してx^p+y^p=z^pが成り立ったと仮定する。まず、x \equiv y \equiv -z\pmod{p}と仮定すると、-2z^p \equiv z^p \pmod{p}となって、p \nmid 3zなので矛盾することに注意する。よって、x\not \equiv y\pmod{p} or x\not \equiv -z\pmod{p}である。従って、必要ならx^p+(-z)^p=(-y)^pとすることによってx\not \equiv y\pmod{p}と仮定してよい(自然数解が存在しないことを示すのではなく、非零解が存在しないことを示すことにする)。また、x, y, zはどの2つをとっても有理整数として互いに素であると仮定してよい。

x^p+y^p=z^pから、イデアルの等式

\displaystyle \prod_{i=0}^{p-1}(x+\zeta_p^iy) = (z)^p

を得る。補題4より、(x+\zeta_p^iy)はどの2つをとっても互いに素であるから、素イデアル分解の一意性によって(x+\zeta_p^iy)=A_i^pと書けることが分かる(A_iはあるイデアル)。今、pは正則素数なので、tsujimotter氏の記事の議論により、ある\alpha_i \in \mathbb{Z}[\zeta_p] が存在してA_i=(\alpha_i)が成り立つ。よって、

x+\zeta_p^iy=(\text{単数})\times \alpha_i^p

と書ける。実は、以下、i=1を見れば十分である。\varepsilon \in \mathbb{Z}[\zeta_p]^{\times}が存在して、x+\zeta_py = \varepsilon \alpha^pと書ける(\alpha_1=\alphaとおいた)。このとき、命題2より、ある整数rと単数\varepsilon_1が存在して\varepsilon = \zeta_p^r\varepsilon_1, \ \overline{\varepsilon}_1=\varepsilon_1とできる。更に、補題5より、ある整数aが存在して\alpha^p \equiv a \pmod{p}が成り立つので、

x+\zeta_py = \zeta_p^r\varepsilon_1\alpha^p \equiv \zeta_p^r\varepsilon_1a \pmod{p}

となる。一方、

x+\zeta_p^{-1}y=\overline{x+\zeta_py} = \zeta_p^{-r}\varepsilon_1\overline{\alpha^p} \equiv \zeta_p^{-r}\varepsilon_1a \pmod{p}

よって、

\zeta_p^{-r}(x+\zeta_py) \equiv \zeta_p^r(x+\zeta_p^{-1}y) \pmod{p}

すなわち

x+\zeta_py-\zeta_p^{2r}x-\zeta_p^{2r-1}y \equiv 0 \pmod{p}-(*)

が得られた。この式を用いて矛盾を導く。もし、1, \zeta_p, \zeta_p^{2r}, \zeta_p^{2r-1}が全て異なれば、p\geq 5であることから、補題6によってp \mid x, yとなって、ファーストケースを考えていることに矛盾する。よって、1, \zeta_p, \zeta_p^{2r}, \zeta_p^{2r-1}の全てが異なることはないことがわかった。一方で1\neq \zeta_p\zeta_p^{2r}\neq \zeta_p^{2r-1}であるため、以下の3通りに分けられる:

1=\zeta_p^{2r}、②1=\zeta_p^{2r-1}、③\zeta_p=\zeta_p^{2r-1}

①のとき: (*)は

x+\zeta_py-x-\zeta_p^{-1}y \equiv 0 \pmod{p}\zeta_py-\zeta_p^{p-1}y \equiv 0 \pmod{p}

と書き直せる。\zeta_p \neq \zeta_p^{p-1}なので、補題6によってp \mid yとなって、ファーストケースであることに矛盾。

②のとき: (*)は

(x-y)-(x-y)\zeta_p \equiv 0 \pmod{p}

と書き直せる。補題6よりp\mid x-yとなって、最初の仮定に矛盾する!

③のとき: (*)は

x-\zeta_p^2x\equiv 0\pmod{p}

と書き直せる。補題6よりp \mid xとなって、ファーストケースであることに矛盾。以上で証明が完了した。 Q.E.D.

付録1 Pythagoras数

定理 x^2+y^2=z^2 (x, y, zはどの2つをとっても互いに素であり、yは偶数)の自然数解(x, y, z)は互いに素な自然数n, mを用いて、x=n^2-m^2, y=2nm, z=n^2+m^2
と書ける。更に、n, mのパリティは異なる。

証明 y^2=z^2-x^2=(z-x)(z+x)\left( \frac{y}{2}\right)^2=\frac{z-x}{2}\frac{z+x}{2}と変形できる。zxは互いに素なので、\frac{z-x}{2}\frac{z+x}{2}も互いに素である―①。よって、素因数分解の一意性によりある自然数n, mが存在して、\frac{z-x}{2}=m^2\frac{z+x}{2}=n^2と書ける。①よりn, mは互いに素である。xは奇数なので、n, mのパリティは異なる。 Q.E.D.

付録2 FLT(4)

FLT(4)を証明します。実際には、少し強い次の定理が示せます:

定理 x^4+y^4=z^2は自然数解を持たない。

証明. 背理法で、解のうちzが最小であるようなものをとる。このとき、x, yは互いに素である。z^2 =x^4+y^4 \equiv 1 \ \text{or} \ 2\pmod{4}であるが、z^2 \not \equiv 2 \pmod{4}なのでzは奇数である。そこで、xは奇数、yは偶数と仮定してよい。すると、(x^2, y^2, z)に対して付録1を用いることにより、互いに素な自然数n, mを用いてx^2=n^2-m^2, y^2=2nm, z=n^2+m^2と書ける。nmのパリティは異なるが、もしnが偶数でmが奇数ならばx^2\equiv -1\pmod{4}となって矛盾するため、nは奇数であり、mは偶数である。そこで、m=2lと表す(l \in \mathbb{Z})。このとき、(y/2)^2=nlと書け、nlは互いに素なので、n=s^2, l=t^2と互いに素な自然数s, tを用いて書くことができる。sは奇数である。そうして、x^2=s^4-4t^4であることから、(2t^2)^2+x^2=(s^2)^2書き直せる。2t^2, x^2, s^2はどの2つも共通因数をもたないため、付録1を用いて2t^2=2uv, s^2=u^2+v^2と書ける(u, vは互いに素な整数)。t^2=uvおよびu, vが互いに素であることより、u=a^2, v=b^2なる自然数a, bが存在する。我々はa^4+b^4=s^2を獲得したことが分かる。しかしながら、s\leq s^2=n\leq n^2 < n^2+m^2 = zなので、zの最小性に反する。 Q.E.D.

付録3 FLT(3)

Eulerによる証明をフォローしても面白いですが、ここでは高木貞治著『初等整数論講義』に従って、FLT(3)よりも強い次の定理を証明しましょう:

定理 x^3+y^3+z^3=0, \ xyz\neq 0\mathbb{Z}[\zeta_3] に解をもたない。

\mathbb{Z}[\zeta_3] はUFDであり、\lambda :=1-\zeta_3は素元。単数群は\mathbb{Z}[\zeta_3]^{\times}=\{\pm 1, \pm \zeta_3, \pm \zeta_3^2\}。単項イデアルとして、(\lambda)=(\sqrt{-3})に注意する。

補題7 \alpha = x+\zeta_3y \in \mathbb{Z}[\zeta_3] に対して、\lambda \mid \alpha \Longleftrightarrow x \equiv -y\pmod{3}

証明. x+\zeta_3y=(x+y)-\lambda y \equiv x+y \pmod{\lambda}および(\lambda) \cap \mathbb{Z} = (3)より従う。 Q.E.D.

補題8 \alpha \in \mathbb{Z}[\zeta_3] に対して\lambda \nmid \alpha \Longleftrightarrow \alpha^3 \equiv \pm 1 \pmod{9}が成り立つ。

証明. \lambda \nmid \alpha=x+\zeta_3yならば、補題7よりx+y \equiv \pm 1\pmod{3}なので、\alpha = \pm 1 +\sqrt{-3}\beta \ (\beta \in \mathbb{Z}[\zeta_3])と書ける。このとき、\alpha^3 = \pm 1 + 3\sqrt{-3}\beta \mp 9\beta^2-3\sqrt{-3}\beta^3が成り立つ。これを\bmod{\lambda^4}で考えればよく、従って、\beta(1-\beta^2)\lambdaで割り切れることを示せばよい。\lambda \nmid \betaのときに、1-\beta^2 \equiv 0 \pmod{\lambda}であればよいが、補題7によって\beta \equiv \pm 1 \pmod{\lambda}である。 Q.E.D.

準備が整ったので、定理を背理法で証明しよう。すなわち、解(x, y, z)があったと仮定する。x, y, zはどの2つをとっても互いに素であると仮定してよい。ファーストケース、セカンドケースという概念は、「x, y, zがどれも\lambdaで割れない場合」と「\lambda \mid xyzの場合」への場合分けになる。この場合も、やはりファーストケースは簡単に証明される。

ファーストケース

この場合、補題8によってx^3+y^3+z^3=0という方程式から\pm 1 \pm 1 \pm 1 \equiv 0 \pmod{9}でなければならないが、これは起こり得ない。

セカンドケース

\lambda \mid xyzであるが、どの2つをとっても互いに素という状況から、x, y, zの1つが\lambdaで割れて、残り2つは\lambdaで割れない。\lambdaで割れるものはzであると仮定しても一般性を失わない。すると、\mathrm{ord}_{\lambda}z = m \geq 1のときz=\lambda^mz_0と書ける(z_0\lambdaと互いに素)。つまり、x^3+y^3=-\lambda^{3m}z_0^3という式が得られるが、この方程式の不可能性を以下のように拡張した形で証明する:

主張 x^3+y^3=\varepsilon \lambda^{3m}z^3, \ \lambda \nmid x, y, z, x, y, zはどの2つをとっても互いに素、\varepsilon \in \mathbb{Z}[\zeta_3]^{\times}, m \in \mathbb{N}を満たすようなx, y, z \in \mathbb{Z}[\zeta_3]\setminus\{ 0 \}は存在しない。

主張の証明. 補題8より、解があれば\pm 1 \pm 1 \equiv \varepsilon \lambda^{3m}z^3 \pmod{\lambda^4}となるが、\lambda \nmid 2なので左辺は0のときしか起こり得ない。また、0 \equiv \varepsilon \lambda^{3m} z^3 \pmod{\lambda^4}m=1の場合は起こり得ない。すなわち、m=1の場合は証明された。そこで、m\geq 2のときに解があると仮定して、そのときにm-1でも解があることを示すことが出来れば証明は完了する(無限降下法)。以下、そのように仮定する。

x^3+y^3=(x+y)(x+\zeta_3y)(x+\zeta_3^2y) = \varepsilon \lambda^{3m}z^3-④

および

\begin{cases}x+\zeta_3y = (x+y)-\lambda y \\ x+\zeta_3^2y = (x+y) + (\lambda -3)y\end{cases}-⑤

に注意する。素元分解を考えたときに、\lambda^{3m}x+y, x+\zeta_3y, x+\zeta_3^2yの間に、どのように分配されるかを考える。3つのうちの1つが\lambdaで割り切れたとき、⑤より残りの2つも\lambdaで割り切れることがわかる。一方、\lambda^2で割り切れるものに対して、⑤から残りの2つは丁度\lambda^1で割り切れることがわかる。従って、必要ならばy\mapsto \zeta_3y, y\mapsto \zeta_3^2yとすることによって、

\begin{cases}x+y = \lambda^{3m-2}\alpha \\ x+\zeta_3y = \lambda \beta \\ x+\zeta_3^2y = \lambda \gamma \end{cases}, \lambda \nmid \alpha, \beta, \gamma

としても一般性を失わない(\alpha, \beta, \gamma \in \mathbb{Z}[\zeta_3] )。このとき、\alpha, \beta, \gammaはどの2つをとっても互いに素である(例えば、\alpha\betaが共通因数をもったと仮定する。このとき、(x+y)-(x+\zeta_3 y) =\lambda yおよび\zeta_3(x+y)-(x+\zeta_3y) = -\lambda xよりxyも共通因数を持つことになって矛盾する。他の場合も同様に示せる)。

④より\alpha \beta \gamma = \varepsilon z^3を得るので、素元分解を考えることにより、\alpha_0, \beta_0, \gamma_0 \in \mathbb{Z}[\zeta_3] (\alpha_0, \beta_0, \gamma_0はどの2つをとっても互いに素), \varepsilon_1, \varepsilon_2, \varepsilon_3 \in \mathbb{Z}[\zeta_3]^{\times}が存在して、

\begin{cases}x+y=\varepsilon_1 \lambda^{3m-2} \alpha_0^3 \\ x+\zeta_3y = \varepsilon_2 \lambda \beta_0^3 \\ x+\zeta_3^2y = \varepsilon_3 \lambda \gamma_0^3 \end{cases}

と書ける。これより



\begin{array}{|ccc|}
1 & 1 & \varepsilon_1 \lambda^{3(m-1)}\alpha_0^3 \\
1 & \zeta_3 & \varepsilon_2 \beta_0^3 \\
1 & \zeta_3^2 & \varepsilon_3 \gamma_0^3 \\
\end{array}
=0

を得る。第3列で余因子展開することにより、\varepsilon_1 \lambda^{3(m-1)}\alpha_0^3 (\zeta_3^2-\zeta_3)-\varepsilon_2\beta_0^3(\zeta_3^2-1)+(\zeta_3-1)\varepsilon_3 \gamma^3=0が得られる。単項イデアルとしては(\zeta_3^2-\zeta_3)=(\zeta_3^2-1)=(\zeta_3-1)=(\lambda)なので、両辺を\lambdaで割って単数を調整することによって\beta_0^3+\varepsilon_4\gamma_0^3=\varepsilon_5 \lambda^{3(m-1)}\alpha_0^3が成り立つ。ここで、\varepsilon_4, \varepsilon_5 \in \mathbb{Z}[\zeta_3 ]^{\times}である。m\geq 2なので、補題8より\pm 1 \pm \varepsilon_4 \equiv 0 \pmod{\lambda^4}となる。単数は6通りしかないので全て調査することによって、左辺は0、すなわち\varepsilon_4=\pm 1でなければならないことがわかる。\varepsilon_4=-1のときは\gamma_0 \mapsto \gamma_0と置き換えることによって

\beta_0^3+\gamma_0^3=\varepsilon_5 \lambda^{3(m-1)}\alpha_0^3

が得られた。こうして、無限に降下する。 Q.E.D.

*1:断念とは言っても、いつか書きたいとは思っています。