インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

格子点正多角形

n角形の頂点が全て格子点*1であれば(格子点正n角形とよぶことにします)、n=4です。つまり、格子点正多角形は正方形しかありません。

格子点正方形

これはいくらでもあります。座標軸に対して、斜めに配置したりもできますね。

格子点正三角形の不可能性

大学入試などでも取り扱われることがしばしばあります。例えば、座標幾何を用いて背理法によって証明することが可能ですので挑戦してみてください。

格子点正五角形の不可能性

ここで紹介する証明は高校生のときに初めて聴いて大変感動した記憶があります。
格子点正五角形が存在したと仮定します。このとき、以下の図のように内部に別の正五角形を描きます。

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この正五角形が格子点正五角形であることを示すことができれば、いくらでも小さい領域に格子点正五角形が存在することになって矛盾します。
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図において、ACBOは平行四辺形であるため、\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{OB}=\overrightarrow{OC}が成り立ちます。仮定より、\overrightarrow{OA}および\overrightarrow{OB}は成分が整数であるようなベクトルなので、\overrightarrow{OC}も成分が整数であることがわかります。すなわち、Cは格子点です。対称性より、内部の正五角形は格子点正五角形であることが証明されました。

一般の場合(初等幾何的解法)

上記方法は一般の場合にも拡張できます。格子点正n角形\mathcal{P}が存在したと仮定し、n > 6とします。\mathcal{P}の頂点をP_1, \dots, P_nと名付けます(P_1から時計回りに番号付けます)。各番号iに対して、点Q_iを四角形P_{i+1}P_iP_{i-1}Q_iが平行四辺形になり、かつQ_i\mathcal{P}の内部にくるような点とします(n > 4のとき、このようなQ_iが存在します。また、P_{0}=P_{n}, P_{n+1}=P_1とします)。今、n > 6なので、\displaystyle \theta = \frac{\pi (n-2)}{n} > \varphi = \frac{4\pi}{n}であり、O\mathcal{P}の中心とするとき、Q_iは線分OP_iの内分点であることがわかります。

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よって、Q_1, \dots, Q_nを頂点とするn角形\mathcal{Q}が定まり、\mathcal{Q}は構成の仕方から格子点正n角形であることがわかります。この操作を繰り返すことによっていくらでも小さい領域にあるような正n角形を構成できるので(Oは格子点による集積点となる!)、矛盾が生じます。

n=5のときは既に示しましたが、Q_iOP_iの外分点になるだけで、全く同じ証明であることがわかります。というわけで、あとはn=3, 6のみが残っています。n=3のときは演習問題にしました。n=6のときは、もし格子点正六角形が存在すればその中の三頂点を選んで格子点正三角形を作れるのでn=3の場合に帰着されます。 Q.E.D.

一般の場合(代数的解法)

最後に代数的な解法を紹介します。平面を複素平面で考えることにし、格子点をGauss整数環\mathbb{Z}[i] の元とします(iは虚数単位)。もし、格子点正n角形が存在すれば、その頂点z_1, \dots, z_n \in \mathbb{C}\mathbb{Z}[ i ] の元です。このとき、隣り合う二点z_1, z_2および正n角形の中心\displaystyle w := \sum_{i=1}^n\frac{z_i}{n}を考えると、

\displaystyle  \zeta_n := \frac{z_2-w}{z_1-w}

1の原始n乗根であり、\zeta_n \in \mathbb{Q}(i)となります。n\geq 3なので、

\mathbb{Q} \subsetneq \mathbb{Q}(\zeta_n) \subset \mathbb{Q}(i)

[ \mathbb{Q}(i):\mathbb{Q}]=2 より、

\mathbb{Q}(\zeta_n) = \mathbb{Q}(i)

および

[ \mathbb{Q}(\zeta_n):\mathbb{Q}]=2

が従います。整数論で(証明はそんなに簡単ではないですが)よく知られた定理

[ \mathbb{Q}(\zeta_n):\mathbb{Q} ]=\varphi (n)

を用いると(\varphiはEulerのトーシェント関数)、\varphi(n)=2となります。\varphi (n)=2を満たすn3, 4, 6しかありません。明らかに\mathbb{Q}(\zeta_3)=\mathbb{Q}(\zeta_6) \neq \mathbb{Q}(i)なので、n=4でなければならないことがわかりました。 Q.E.D.

\varphi (n)=2

オイラーのトーシェント関数とφ(R(n))=n - INTEGERSで紹介したように、nm互いに素ならば\varphi (nm) = \varphi (n)\varphi (m)が成り立ち、素数pと自然数kに対して\varphi (p^k)=p^{k-1}(p-1)が成り立ちます。よって、n5以上の素因数をもつか、2^3または3^2を因数にもてば\varphi (n) \geq 4となることがわかります。すなわち、\varphi (n) =2を満たすようなnの候補は1, 2, 4, 3, 6, 12に絞られます。このうち、\varphi (n) =2を満たすのはn=3, 4, 6のみです。

久留島喜内

関孝和、建部賢弘と並んで三大和算家と呼ばれる和算家、将棋指しの久留島喜内がEulerより先にトーシェント関数を発見していたと言われているそうです。主家断絶後に浪人になって数学を研究したなんてかっこよすぎますね。

*1:この記事では平面\mathbb{R}^2においてx座標およびy座標がともに整数であるような点のことを格子点とよぶことにします。