インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

222:「猫の日」と「べき乗和に関する不等式」

2月22日は猫の日ですね(=^・^=) 私は猫が大好きです!

222^2 + 222^{22} + 222^{222} + 1は素数です!

というわけで*1、今日は"べき乗和に関する不等式"を紹介します。

普通のべき乗和公式については
integers.hatenablog.com
を参照してください。

また、基本不等式としてJensenの不等式を用いるため、ご存じない方は以下のサイトで復習することができます:
mathtrain.jp

べき乗和に関する不等式

実数r \geq 1に対して数論的関数S_r(n)

S_r(n) := 1^r+2^r+\cdots +n^r

と定義する。このとき、次の不等式が成立する:

定理 \ \ \ \displaystyle \frac{(n+1)^rn^{r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}}\leq S_r(n) \leq \frac{n^r(n+1)^{r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}}

左側の不等式はDragomirとHoekの1998年の論文に現れます。

補題

  1. \displaystyle (n+2)^r\{ (n+1)^r+n^{r+1}\} \geq (n+1)^{2r+1}
  2. \displaystyle n^r(n+2)^{r+1} \leq (n+1)^r\{ n^r + (n+1)^{r+1}\}


証明. r\geq 1よりy=x^rは下に凸な関数なので、Jensenの不等式よりx, y \geq 0および\alpha + \beta > 0を満たすような\alpha, \beta \geq 0に対して

\displaystyle \frac{\alpha x^r+\beta y^r}{\alpha +\beta} \geq \left( \frac{\alpha x +\beta y}{\alpha +\beta} \right)^r

が成り立つ。

\alpha =n, \beta =1, x=n(n+2), y=(n+1)(n+2)

を代入することにより、

\displaystyle \frac{n\{n(n+2)\}^r+(n+1)^r(n+2)^r}{n+1} \geq \left( \frac{n^2(n+2)+(n+1)(n+2)}{n+1}\right)^r

が成り立つ。整理すると、

\displaystyle \frac{n^{r+1}(n+2)^r+(n+1)^r(n+2)^r}{n+1}\geq \left( \frac{n^3+3n^2+3n+2}{n+1} \right)^r

を得る。n^3+3n^2+3n+2 > (n+1)^3に注意して上記不等式を整理することにより、一つ目の不等式が得られる。

次に、

\displaystyle \alpha =n+1, \beta =1, x=(n+1)^2, y=n(n+1)

と代入することにより、

\displaystyle \frac{(n+1)\{(n+1)^2\}^r+\{n(n+1)\}^r}{n+2}\geq \left( \frac{(n+1)^3+n(n+1)}{n+2}\right)^r

が成り立つ。整理すると、

\displaystyle \frac{(n+1)^{2r+1}+n^r(n+1)^r}{n+2} \geq \left( \frac{n^3+4n^2+4n+1}{n+2} \right)^r

であるが、n^3+4n^2+4n+1 > n(n+2)^2なので、これを用いて上記不等式を整理することによって二つ目の不等式が得られる。 Q.E.D.

定理の証明. まず、左側の不等式をnに関する数学的帰納法で証明する。n=1のときは

\displaystyle 1 \geq \frac{2^r}{2^{r+1}-1}

すなわち、2^{r+1} \geq 2^r+1を示せばよいが、これはr \geq 1より成り立つ。

\displaystyle S_r(n) \geq \frac{(n+1)^rn^{r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}}

を仮定して、

\displaystyle S_r(n+1) \geq \frac{(n+2)^r(n+1)^{r+1}}{(n+2)^{r+1}-(n+1)^{r+1}}

を示す。S_r(n+1) = S_r(n)+(n+1)^rなので、帰納法の仮定より

\begin{equation}\begin{split}S_r(n+1) &\geq \frac{(n+1)^rn^{r+1}+(n+1)^{2r+1}-(n+1)^rn^{r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}} \\ &= \frac{(n+1)^{2r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}}\end{split}\end{equation}

であるから、

\displaystyle \frac{(n+1)^{2r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}} \geq \frac{(n+2)^r(n+1)^{r+1}}{(n+2)^{r+1}-(n+1)^{r+1}}

を示せばよい。これは、両辺を(n+1)^{r+1}で割ることにより、

\displaystyle \frac{(n+1)^r}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}} \geq \frac{(n+2)^r}{(n+2)^{r+1}-(n+1)^{r+1}}

に同値であり、分母をはらって整理すると補題の一つ目の不等式に帰着される。

では、全く同様にして右側の不等式をnに関する帰納法で証明する。n=1のときは

\displaystyle 1 \leq \frac{2^{r+1}}{2^{r+1}-1}

を示せばよいが、これは2^{r+1}-1 \leq 2^{r+1}に同値であり、r \geq 1より成り立つ。

\displaystyle S_r(n) \leq \frac{n^r(n+1)^{r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}}

を仮定して

\displaystyle S_{r}(n+1) \leq \frac{(n+1)^r(n+2)^{r+1}}{(n+2)^{r+1}-(n+1)^{r+1}}

を示す。再び、S_r(n+1)=S_r(n)+(n+1)^rが成り立つことから、帰納法の仮定より

\begin{equation}\begin{split}S_r(n+1) &\leq \frac{n^r(n+1)^{r+1}+(n+1)^{2r+1}-n^{r+1}(n+1)^r}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}} \\ &= \frac{n^r(n+1)^r+(n+1)^{2r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}}\end{split}\end{equation}

であるから、

\displaystyle \frac{(n+1)^r\{n^r+(n+1)^{r+1}\} }{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}} \leq \frac{(n+1)^r(n+2)^{r+1}}{(n+2)^{r+1}-(n+1)^{r+1}}

を示せばよい。これは、両辺を(n+1)^rで割ることにより

\displaystyle \frac{n^r+(n+1)^{r+1}}{(n+1)^{r+1}-n^{r+1}}\leq \frac{(n+2)^{r+1}}{(n+2)^{r+1}-(n+1)^{r+1}}

に同値であり、分母を払って整理すると補第の二つ目の不等式に帰着される。 Q.E.D.

ちなみに、この不等式を用いれば2013年9月の大学への数学の宿題の問題

\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n\frac{k^n}{n^n} = \frac{1}{1-e^{-1}}

の一つの解答になります。というよりも、上記不等式の方がより強い情報を与えています。

*1:今日が猫の日であることと冪乗和公式の間には今のところ何らの関係も見出せません。ただ、書きたくなっただけです(笑)。