インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

1の原始n乗根の一様分布性

定理(1の原始n乗根の一様分布性) Uを複素平面上の単位円周とし、弧A \subset Uを一つとって、その長さをl(A)とする。また、自然数nに対して1の原始n乗根全体のなす集合を\mathbf{\mu}_n^* \subset \mathbb{C}と記す。このとき、
\displaystyle \#(\mathbf{\mu}_n^* \cap A) \sim \frac{l(A)}{2\pi}\varphi (n), \ \ (n \to \infty)
が成り立つ。

\varphi (n)はEulerのトーシェント関数:
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注目すべき点は\#(\mathbf{\mu}_n^* \cap A)の漸近する値がAの長さにしか依らないということです。主張を言葉で表現すれば、「単位円周上の弧を任意に取ると、1の原始n乗根全体の個数とその弧に属する1の原始n乗根の個数の比はnが十分大きいと円周の長さと弧の長さの比に近づく」となります。単位円周上に分布する1の原始n乗根が実軸に対して対称に分布しているのは自明ですが、例えばn=6のときは実部が正の部分にしか1の原始6乗根は現れません。上記定理によれば、nを十分大きくすると虚軸に対して実部が正の部分と負の部分で殆ど均等に1の原始n乗根が分布していることが分かります。

記号

\mu (n)はMöbius関数、\mathbf{\mu}_n1n乗根\in \mathbb{C}全体のなす集合とし、

\mathbf{\mu}_n(A):= \#(\mathbf{\mu}_n\cap A), \ \ \mathbf{\mu}^*_n(A):= \#(\mathbf{\mu}^*_n\cap A)

とする。また、\omega (n)nの素因数の個数とする。

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証明

補題 \ \ \ \displaystyle \left| \mathbf{\mu}_n (A)-\frac{l(A)}{2\pi}n \right| \leq 1.

証明. \mathbf{\mu}_n \cap Aの元はU上等間隔であることから

\displaystyle (\mathbf{\mu}_n(A)-1)\frac{2\pi}{n} \leq l(A) < (\mathbf{\mu}_n(A)+1)\frac{2\pi}{n}
が成り立つ。 Q.E.D.

定理の証明. Möbiusの反転公式(上記参考記事の反転公式(その一))より

\displaystyle \mathbf{\mu}_n^*(A)-\frac{l(A)}{2\pi}\varphi (n) = \sum_{d \mid n}\mu (d) \left( \mathbf{\mu}_{\frac{n}{d}}(A)-\frac{l(A)}{2\pi}\frac{n}{d} \right)

が成り立つので、

\displaystyle \left| \mathbf{\mu}_n^*(A)-\frac{l(A)}{2\pi}\varphi (n) \right| \leq \sum_{\substack{d \mid n \\ d: \text{無平方}}}\left| \mathbf{\mu}_{\frac{n}{d}}(A)-\frac{l(A)}{2\pi}\frac{n}{d}\right| \leq \sum_{\substack{d \mid n \\ d: \text{無平方}}}1 = 2^{\omega (n)}

と評価できる。よって、

\displaystyle \left| \frac{\mathbf{\mu}_n^*(A)}{\frac{l(A)}{2\pi}\varphi (n)}-1 \right| \leq \frac{2\pi}{l(A)}\frac{2^{\omega (n)}}{\varphi (n)}

を得る。最後の数はn \to \infty0に収束することを2つ目の参考記事で示しているため、証明が完了する。 Q.E.D.