前回の記事ではBell数について書きました:
integers.hatenablog.com
そこで紹介した、Bell数の母関数表示の証明を今回の記事で与えます。
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第二種Stirling数
個の元からなる集合の分割の個数がBell数でしたが、に対して、個の元からなる集合の個の部分集合への分割の個数を第二種Stirling数といい、と表します。すると、定義から
が成り立つことがわかります。ただし、のときは、、のときは、です。冒頭の母関数表示を証明するには、次の第二種Stirling数に関する2変数母関数表示を証明すれば十分です:
定理
第二種Stirling数の満たす漸化式
のとき、第二種Stirling数は次の漸化式によって定まることがわかります(二項係数に関するパスカルの三角形の類似):
個の元からなる集合が与えられたとき、これを個の部分集合に分割する個数はを個の部分集合に分けてからをそれらの部分集合のどこかに入れて得られる個の分割と、とを個の部分集合に分割して得られる分割を合わせて得られる個の分割に分けられるので、上の漸化式が成立することが分かります。
補題1 形式的冪級数環に作用する微分作用素に関して、次の等号が成立する:ただし、微分作用素の積は合成によって定める。
証明. に関する帰納法で証明する。のときは確かに等号が成立しているので、のときに成立すると仮定して、の場合に証明する。
と変形できるので、の場合も成立することがわかる。ただし、とする。 Q.E.D.
補題2 なる上の微分作用素に対して、が成立する。
証明. に対してが成り立つことを示せば十分であるが、
と計算できる。 Q.E.D.
定理の証明
補題1および補題2より、
と計算できるので、両辺をで割ればよい。 Q.E.D.