インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

Riemann予想に関するLagariasの定理

前回の記事で、RobinによるRiemann予想の初等的言い換えを紹介しました:
integers.hatenablog.com

今回は、Lagariasによって得られた別ヴァージョンを紹介します:

Lagariasの定理 Riemann予想が成立することと、任意の自然数nに対して
\displaystyle \sigma (n) \leq H_n +e^{H_n}\log H_n
が成り立つ(等号成立条件はn=1)ことは同値である。

\displaystyle H_n=\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}は調和数です。
integers.hatenablog.com
を参照してください。

Robinの定理に比べると、Eulerの定数\gammaを用いなくてよい、n \geq 5041などという中途半端な条件ではなく全ての自然数で成り立つ不等式で書けるという美しさがあります。一方、整数好きの観点から言えば、Robinの定理は5040という数を好きになるのでRobinの定理の方が好きだったりします。Robinの定理の証明は難しいのでまだ紹介していませんが、Robinの定理を用いればLagariasの定理は容易に導けます。その導出を以下で解説します。

補題 n \geq 3に対して次の不等式が成り立つ:
\begin{align}e^{H_n}\log H_n &\geq e^{\gamma}n\log \log n, \\ H_n + e^{H_n}\log H_n &\leq e^{\gamma}n\log \log n+\frac{4n}{\log n}\end{align}.

証明.
以下n \geq 3とする(\log \log 3 > 0)。調和数の記事で示したようにH_n-\log nは単調減少であり、\displaystyle \gamma = \lim_{n \to \infty}(H_n-\log n)であるから、H_n \geq \log n+\gammaが成り立つ。よって、

\displaystyle e^{H_n} \geq e^{\gamma}n ―①

を得る。また、H_n \geq \log nであるから、

\displaystyle \log H_n \geq \log \log n. ―②

①、②を掛け合わせることにより、一つ目の不等式が示された。

\displaystyle \frac{1}{n+1} > \int_{n+1}^{n+2}\frac{dx}{x} = \log (n+2) - \log (n+1)

であるから、H_n-\log (n+1)は単調増加であることがわかる。また、\displaystyle \lim_{n \to \infty}(H_n-\log (n+1))=\gammaなので、H_n-\log (n+1) \leq \gammaが成り立つ。よって、

\displaystyle e^{H_n} \leq e^{\gamma}(n+1) ―③

を得る。Abelの総和法に関する記事
integers.hatenablog.com
の漸近公式3の証明より

\displaystyle H_n=1+\log n-\int_1^n\frac{\{x\}}{x^2}dx \leq \log n+1 ―④

が得られる。よって、

\begin{equation}\begin{split}\log H_n &\leq \log (\log n+1) = \log \left( \log n \left( 1+\frac{1}{\log n}\right) \right) \\ &\leq \log \log n+\frac{1}{\log n}\end{split}\end{equation} ―⑤

なる評価を得る。ここで、x \geq 0に対して\log (1+x) \leq xが成り立つことを用いた。簡単な計算により

\displaystyle \log \log n+\frac{1}{\log n} \leq \frac{n}{2\log n}, \ \ \log n+1 \leq \frac{n}{\log n}, \ \ \frac{3e^{\gamma}}{2}+1 \leq 4

がわかるので、③、④、⑤より、

\begin{equation}\begin{split}H_n+e^{H_n}\log H_n &\leq \log n+1+e^{\gamma}n\log \log n+\frac{e^{\gamma}n}{\log n} +e^{\gamma}\left( \log \log n+\frac{1}{\log n} \right) \\ &\leq e^{\gamma}n\log \log n+\frac{4n}{\log n}\end{split}\end{equation}

となって、二つ目の不等式も示された。 Q.E.D.

定理の証明.
Riemann予想が成り立つと仮定する。このとき、Robinの定理および補題の一つ目の不等式から、n \geq 5041に対して

\displaystyle \sigma (n) \leq e^{\gamma}n \log \log n < H_n + e^{H_n}\log H_n

が成り立つ。n \leq 5040のときは主張の不等式が成立することが直接確認できる(例えば計算機を用いて)。実際、n=1のときのみ等号成立していることもわかる。

逆に定理の主張する不等式が成立すると仮定して、Riemann予想が成立することを示す。そのために、Riemann予想が成立しないと仮定して矛盾を導く。このとき、前記事の最後に述べたRobinの定理によって、0 < \beta < 1/2, \ C > 0が存在して、

\displaystyle \sigma (n) \geq e^{\gamma}n\log \log n+C\frac{n\log \log n}{(\log n)^{\beta}}

が無数のnについて成り立つ。よって、仮定している不等式と補題の二つ目の不等式によって

\displaystyle e^{\gamma}n\log \log n+C\frac{n\log \log n}{(\log n)^{\beta}} \leq e^{\gamma}n\log \log n+\frac{4n}{\log n}

が無数のnに対して成り立つ。すなわち、

\displaystyle C\log \log n \leq 4

が無数のnに対して成り立つことになり、これは明らかに矛盾である。 Q.E.D.