インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

70:奇妙数

70は最小の奇妙数です。自分自身を除く正の約数の和が自分自身より大きい自然数(このような数を過剰数という)であって、自分自身を除く正の約数をいくつか選んでその和が自分自身に一致するかを考えたとき、どのように選んでも一致しないときに奇妙数といいます*1
自分自身を除く正の約数をいくつか選んでその和を自分自身に一致させることができる数のことを疑似完全数というので、奇妙数=過剰数かつ非疑似完全数となります。

例えば、20は自分自身を除く正の約数は1, 2, 4, 5, 10であって1+2+4+5+10=22 > 20なので過剰数です。しかし、1+4+5+10=20なので奇妙数ではありません。

一方、70は自分自身を除く正の約数は1, 2, 5, 7, 10, 14, 351+2+5+7+10+14+35=74 > 70で過剰数であり、これらのうちどれを選んで足しても70に出来ないため奇妙数です。

\sigma (n)nの正の約数の総和とします。基本性質については完全数 - INTEGERSを参照してください。

補題 nを奇妙数とし、pp > \sigma (n)を満たすような素数とする。このとき、pnは奇妙数である。

証明. nが奇妙数であることから \sigma (n) > 2nであり、

\sigma (pn) = \sigma (p)\sigma (n) = (p+1)\sigma (n) > (p+1)\cdot 2n > 2(pn)

が成り立つ。よって、pnが奇妙数であることを示すにはpnが非擬似完全数であることを示せばよい。そこで、pnが擬似完全数であったと仮定する。nの相異なる正の約数を d_1, \dots, d_rとするとき、pnの正の約数のなす集合は\{d_1, \dots, d_r, pd_1, \dots, pd_r\}である*2。よって、背理法の仮定より非負整数k_1, k_2が存在して

d_{i(1)}+\cdots +d_{i(k_1)}+pd_{j(1)}+\cdots +pd_{j(k_2)}=pn

という形の等式が成り立つ(ただし、d_{j(1)}, \dots, d_{j(k_2)} \neq n)。もし、k_1=0であれば

d_{j(1)}+\cdots +d_{j(k_2)}=n

となってnが非擬似完全数であることに反する。k_1 \geq 1であっても

p \mid d_{i(1)}+\cdots +d_{i(k_1)}

から

p \leq d_{i(1)}+\cdots +d_{i(k_1)} \leq \sigma(n)

となって p > \sigma(n)であるという仮定に反する。よって、pnは非擬似完全数であり、従って奇妙数である。 Q.E.D.

よって、素数の無限性より次がわかります:

奇妙数は無数に存在する。

一方、次は未解決問題です。

未解決問題 奇数の奇妙数は存在するか?

補題から、次の原始奇妙数の概念を定義することができます:

定義 自分より小さい如何なる奇妙数の倍数にならないような奇妙数のことを原始奇妙数という

予想 原始奇妙数は無数に存在する。

奇妙数、最初の100個

\begin{align}&70, \ 
836, \ 
4030, \ 
5830, \ 
7192, \ 
7912, \ 
9272, \ 
10430, \ 
10570, \ 
10792, \ 
10990, \ 
11410, \\ 
&11690, \ 
12110, \ 
12530, \ 
12670, \ 
13370, \ 
13510, \ 
13790, \ 
13930, \ 
14770, \ 
15610, \ 
15890, \\ 
&16030, \ 
16310, \ 
16730, \ 
16870, \ 
17272, \ 
17570, \ 
17990, \ 
18410, \ 
18830, \ 
18970, \ 
19390, \\ 
&19670, \ 
19810, \ 
20510, \ 
21490, \ 
21770, \ 
21910, \ 
22190, \ 
23170, \ 
23590, \ 
24290, \ 
24430, \\ 
&24710, \ 
25130, \ 
25690, \ 
26110, \ 
26530, \ 
26810, \ 
27230, \ 
27790, \ 
28070, \ 
28630, \ 
29330, \\ 
&29470, \ 
30170, \ 
30310, \ 
30730, \ 
31010, \ 
31430, \ 
31990, \ 
32270, \ 
32410, \ 
32690, \ 
33530, \\ 
&34090, \ 
34370, \ 
34930, \ 
35210, \ 
35630, \ 
36470, \ 
36610, \ 
37870, \ 
38290, \ 
38990, \ 
39410, \\ 
&39830, \ 
39970, \ 
40390, \ 
41090, \ 
41510, \ 
41930, \ 
42070, \ 
42490, \ 
42910, \ 
43190, \ 
43330, \\ 
&44170, \ 
44870, \ 
45010, \ 
45290, \ 
45356, \ 
45710, \ 
46130, \ 
46270, \ 
47110, \ 
47390, \ 
47810, \end{align}

原始奇妙数、最初の100個

\begin{align}&70, \ 
836, \ 
4030, \ 
5830, \ 
7192, \ 
7912, \ 
9272, \ 
10792, \ 
17272, \ 
45356, \ 
73616, \ 
83312, \\ 
&91388, \ 
113072, \ 
243892, \ 
254012, \ 
338572, \ 
343876, \ 
388076, \ 
519712, \ 
539744, \\ 
&555616, \ 
682592, \ 
786208, \ 
1188256, \ 
1229152, \ 
1713592, \ 
1901728, \ 
2081824, \ 
2189024, \\ 
&3963968, \ 
4128448, \
4145216, \ 
4199030, \ 
4486208, \ 
4559552, \ 
4632896, \ 
4960448, \\ 
&5440192, \ 
5568448, \ 
6460864, \ 
6621632, \ 
7354304, \ 
7470272, \ 
8000704, \ 
8134208, \\ 
&8812312, \ 
9928792, \ 
11339816, \ 
11547352, \ 
12872512, \ 
12979264, \ 
13086016, \\ 
&14528576, \
15126992, \ 
17999992, \ 
28279232, \ 
29465852, \ 
29581424, \ 
31297472, \\ 
&33277312, \
33736064, \ 
34315712, \ 
34869056, \ 
35442304, \ 
36228736, \ 
36817024, \\ 
&37111168, \ 
37499776, \ 
38546576, \ 
43955584, \ 
44473216, \ 
44818304, \ 
52059008, \\ 
&52870528, \ 
55691392, \ 
58433152, \ 
58668928, \ 
58904704, \ 
74899952, \ 
85389368, \\ 
&89283592, \
91322752, \ 
92624768, \ 
95327216, \ 
110232704, \ 
120888092, \ 
141659096, \\ 
&146279296, \ 
146764264, \ 
160074368, \ 
162079768, \ 
167373952, \ 
173482552, \ 
254533504, \\ 
&259858324, \ 
260378492, \ 
263144192, \ 
263654656, \ 
266311424, \end{align}

*1:Wikipediaなどは「不思議数」としていますが、"Weird number"の訳で「不思議数」は少し嫌なので「奇妙数」を提唱します。

*2:個数が2r個とは限らない。