インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

四平方の定理に関する追加的内容について

Lagrangeの四平方の定理という有名な定理を以前取り上げました:
integers.hatenablog.com

どのような定理であったかをもう一度書いておきます:

四平方の定理 任意の自然数は4つの平方数の和として表すことができる。ただし、0も平方数に含める。

いつみても美しいですね^^

以前の記事ではより強いJacobiの四平方の定理の証明を紹介しましたが、Lagrangeの四平方の定理の証明はもっとすっきり証明できるにも関わらず紹介していませんでした。しかしながら、Wikipediaに証明がしっかりと書いてあるため(またそこで使われるLegendre記号についてはインテジャーズで紹介済みであるため)、まだ証明を読んだことがない方はそちらをお読みください。→ 四平方定理 - Wikipedia

さて、今回は5/11にarXivにあげられたYu-Chen SunとZhi-Wei Sunによるプレプリントで証明されている次の定理を紹介しようと思います*1

改良版Lagrangeの四平方定理 任意の自然数nに対して或る整数x, y, z, wが存在して、
\begin{align} &n=x^2+y^2+x^2+z^2, \\ &x+y+z+w\text{は平方数}\end{align}
が成り立つ。

四平方の定理で存在する4つの整数に対してある制約(和が平方数になる)を課しても、やはりそのような整数が存在するという主張です。例えば、

31=5^2+2^1+1^2+1^2

ですが、

5+2+1+1=9=3^2

が成り立っています。最初は「げ、まじで!?」と思ったのですが、「整数」には「0や負の数も含める」ことに注意しましょう*2

551=15^2+(-14)^2+11^2+(-3)^2

に対して

15+(-14)+11+(-3)=9=3^2

17=(-3)^2+2^2+2^2+0^2

に対して

(-3)+2+2+0=1=1^2

のような感じです。上にあげた例には3^2になるものがありますが、実際の証明を読むと「x+y+z+w0または4の冪にできる」ことを示していることがわかります。主張もこう書くべきだったのでは?という気がしています。

さて、証明には「Gauss-Legendreの三平方の定理」を使います。この定理は非常に有名な定理ですが、残念ながら当ブログではまだ紹介していませんでした。証明は若干難しく、これまたまだ証明を紹介していないDirichletの算術級数定理を使うため、今回は定理を認めて証明は後回しにさせていただきます:

Gauss-Legendreの三平方の定理 自然数が3つの平方数の和で書けるための必要十分条件はその自然数が4^k(8l+7)(k, lは自然数)の形に書けないことである。ただし、平方数には0を含める。

この大定理を認めればSun-Sunの定理の証明は簡単です:
証明 n=0, 1, \dots, 15のときは容易に直接確認できる。よって、n \geq 16に対してn未満では主張が成立すると仮定して帰納法で証明する。nの状況に応じて場合分けを行う。

CaseⅠ:n16で割り切れる場合
帰納法の仮定によって或る整数x, y, z, wが存在して

\displaystyle \frac{n}{16}=x^2+y^2+z^2+w^2, \ x+y+z+w=\Box

が成り立つ(ここで、=\Boxは「は平方数である」と読むことと規約する)。このとき、

n=(4x)^2+(4y)^2+(4z)^2+(4w)^2, \ 4x+4y+4z+4w=\Box

であるからnに対して主張が成立することがわかる。

CaseⅡ:nが偶数であって16で割り切れない場合
CaseⅡ-1:どのような自然数lに対してもn=4(8l+7)ならない場合
このとき、Guass-Legendreの定理より或る整数u, v, wが存在して

n=u^2+v^2+w^2

が成り立つ。一般に整数mに対してmの偶奇とm^2の偶奇が一致することに注意すると、u+v+wは偶数であることが分かる。よって、次の4つの整数を導入することができる:

\displaystyle t:=\frac{u+v+w}{2}, \ x:=\frac{-u+v+w}{2}, \ y:=\frac{u-v+w}{2}, \ z:= \frac{u+v-w}{2}

このときx+y=w, y+z=u, x+z=vであり、

\begin{equation}\begin{split}n&=u^2+v^2+w^2\\ &=(y+z)^2+(x+z)^2+(x+y)^2\\ &=(x+y+z)^2+x^2+y^2+z^2 \\ &= (-t)^2+x^2+y^2+z^2\end{split}\end{equation}

と変形できるが、(-t)+x+y+z=0 = \Boxである。

CaseⅡ-2:或る自然数lが存在してn=4(8l+7)と書ける場合
このとき、n=4(8l+6)は「4^k(8l+7)型の整数」ではない。よって、Gauss-Legendreの定理より或る整数u, v, zが存在して

n-4=(u-2)^2+(v-2)^2+(w-2)^2

が成り立つ。やはりu+v+wは偶数なので、4つの整数を先ほどと同様に定義できる:

\displaystyle t:=\frac{u+v+w}{2}, \ x:=\frac{-u+v+w}{2}, \ y:=\frac{u-v+w}{2}, \ z:= \frac{u+v-w}{2}

このとき、

\begin{equation}\begin{split} n&= (u-2)^2+(v-2)^2+(w-2)^2+4 \\ &=(y+z-2)^2+(x+z-2)^2+(x+y-2)^2+4 \\ &= (x+y+z-4)^2+x^2+y^2+z^2 \\ &=(4-t)^2+x^2+y^2+z^2\end{split}\end{equation}

と変形でき、(4-t)+x+y+z=4=\Boxである。

CaseⅢ:nが奇数の場合
このとき、4n-1 \equiv 3\pmod{8}なのでGauss-Legendreの定理により或る整数u, v, wが存在して

4n-1=(2u-1)^2+(2v-1)^2+(2w-1)^2

が成り立つ*3。必要ならばu\mapsto 1-u, v\mapsto 1-v, w\mapsto 1-wとすることによってu+v+wは偶数であると仮定しても一般性を失わない。このとき、今までと同様に

\displaystyle t:=\frac{u+v+w}{2}, \ x:=\frac{-u+v+w}{2}, \ y:=\frac{u-v+w}{2}, \ z:= \frac{u+v-w}{2}

とすると

\begin{equation}\begin{split} 4n-1 &= (2u-1)^2+(2v-1)^2+(2w-1)^2\\ &= (2(y+z)-1)^2+(2(x+z)-1)^2+(2(x+y)-1)^2\\ &= 4\{ (x+y+z-1)^2+x^2+y^2+z^2)-1\end{split}\end{equation}

と変形できるので、n=(1-t)^2+x^2+y^2+z^2, \ (1-t)+z+y+z=1=\Boxを得る。 Q.E.D.

16の倍数のときだけ帰納法で示して、あとはGauss-Legendreの定理によって存在する三平方和を変形して所望の四平方和を作っています。また、n毎にx+y+z+wが具体的に何にできるかも分かります。結局04の冪しか作っていないので面白くないです。最初にあげた例では3^2などが作れているので、もっと精密に研究すれば面白い事がでてくるかもしれません。

*1:彼ら以前に誰もこの定理を発見・証明していなかったかはまだ調査していません。

*2:全部正の数で出来れば吃驚仰天ですが定理の主張はそうは言ってないです。

*3:n=X^2+Y^2+Z^2と整数で書けるとき、n\equiv 3 \pmod{4}ならばX, Y, Zが全て奇数でなければならないことは背理法で容易に示せる。