Ramanujanの関数に関する非常に難しい未解決問題を紹介します。
に掲載した数値例をみると、
の四つは「がの倍数である」という著しい性質を持ちます。
しかし、
以降は全然同じ性質を満たす素数が出現しません*1。このような素数は非常に珍しいのです。名称を定義しておきましょう:
この定義によって、は非通常素数であることが分かります。
Romantic Supersingular Primes!~ロマンティック数学ナイトの飛び込みプレゼン枠で発表してきた - INTEGERS
ラマヌジャンのΔと或る重さ2の保型形式の間の合同式 - INTEGERS
で紹介した数列についても同様の概念が定義されました(非通常素数ではなく超特異素数という名前が付いていましたが、それは楕円曲線の超特異還元に由来するからです)。そして、Elkiesによって超特異素数の無限性が示されていました(大定理)!
に対する超特異素数はを除いて必ずとなったのに対し、
Ramanujanのτ関数に対するLehmer予想と佐藤-Tate予想 - INTEGERS
で紹介したLehmer予想を信じると、に対する非通常素数はとなるはずなので様子が違います。また、重さがより大きい保型形式に対してこの手の問題を扱うことは極めて難しく、驚くべきことに次の問題ですら未解決なのです!
専門用語になりますが、は虚数乗法を持たないため、予想としては密度で(すなわち殆ど全ての)素数は通常素数であるにも関わらず、我々人類はいまだにその無限性を示せずにいます(上の楕円曲線、重さの保型形式のときは簡単)。
一方、非通常素数は密度と予想されていますが、有限なのか無限なのか分かっていません*2:
例えば、岩澤理論や肥田理論など、通常素数のときには理論を組み立てやすいといった現象が数論で見られます。しかし、(局所大域原理的な観点など)応用の視点からみると全ての素数を扱うべきです。すなわち、非通常素数も無視するわけにはいきません。もしそれが有限個しかないのであれば、それらを個別に調べれば理論が完成することになるかもしれませんが、数論の深さ・神秘性を考えると、私には非通常素数は無数に存在するような気がしてなりません*3。
以外に非通常素数はあるか?
冒頭でチェックしたようには非通常素数であり、最初の四つの素数が立て続けに非通常素数であるという状況になっています。しかし、
Ramanujanのτ関数の満たす合同式と23の不思議 - INTEGERS
で紹介したように、はで特徴的な合同式を満たすため、或る意味ではこれらが非通常であることは不思議ではないと思えます。その後、通常素数ばかりが現れることになりますが、この四つ以外に非通常素数は知られていないのでしょうか? 1968年のSerreの論文には
とあります。
実を言うと、
1972年にNewmanによってが発見されました。実際、
となっています。
そして、2010年3月15日に、Lygerosと Rozierによってもう一つの非通常素数が発見されました!!その数値は
ご安心ください。!!!!!は驚嘆を表す記号で、決して階乗を表す記号ではございません。
実際に、
となっています。
が私の好きな素数暫定一位(一意)です。このような素数がもしかしたら他にも無数にあるかもしれないと思うと、興奮して夜も眠れません*4。