インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

Bell数に関するSun-Zagierの定理

B_nをBell数とします。

Bell数に関する過去記事一覧:
integers.hatenablog.com
integers.hatenablog.com
integers.hatenablog.com
integers.hatenablog.com
integers.hatenablog.com

Zhi-Wei SunはBell数に関する次の興味深い事実を発見しました:

Z. W. Sunの予想 自然数mを固定し、pmを割り切らないような素数とする。このとき、\displaystyle \sum_{k=1}^{p-1}\frac{(-1)^kB_k}{m^k}pに依らずに或る整数と\bmod{p}で合同であろう。例えば、
\displaystyle \sum_{k=0}^{p-1}\frac{(-1)^kB_k}{6^k} \equiv -43 \pmod{p}, \ \ (p \neq 2, 3)
\displaystyle \sum_{k=0}^{p-1}\frac{(-1)^kB_k}{8^k} \equiv -1853 \pmod{p}, \ \ (p \neq 2)
が成り立つ。

この事実は2011年にZ.W. SunとD. Zagierによって証明されました。

D_n
integers.hatenablog.com
で紹介したMontmort数とします。

D_5=44D_7=1854をみると、先ほどの例と関係がありそうです。漸化式

D_n=nD_{n-1}+(-1)^n ‐①

を思い出しておきます。これより、nが偶数(resp. 奇数)ならばD_nは奇数(resp. 偶数)であることもわかります。

Sun-Zagierの定理 自然数mを固定し、pmを割り切らないような素数とする。このとき、
\displaystyle \sum_{k=1}^{p-1}\frac{(-1)^kB_k}{m^k} \equiv (-1)^{m-1}D_{m-1} \pmod{p}
が成立する。

証明. 任意の素数pを固定して、mを動かして証明する。pは奇素数としてよい。というのも、mが奇数のときにはD_{m-1}は奇数であるが、合同式の左辺は-1/mであるからp=2のときに主張が成立することが確認できる。次に、0 < m < pなるmについて証明すれば十分であることに注意する。これは合同式の両辺がm\bmod{p}のみで決まることを確認すればよい。左辺については自然数nに対して

(-m+np)^k \equiv (-m)^k \pmod{p}

なのでOK。右辺についても、

\displaystyle (-1)^nD_n = \sum_{r=0}^{\infty}(-1)^rn(n-1)\cdots (n-r+1)

と表示すれば周期p\bmod{p}の値が決まることが分かる(rn+1以上の項は必ず0になることに注意)。

そうして、0 < m < pなるmに対しては数学的帰納法で証明する。合同式の左辺をS_mとおこう。

  • S_1 \equiv 1 \pmod{p}
  • mS_m \equiv S_1 - S_{m+1} \pmod{p}, \ \ (2\leq m \leq p-2)

を示せばよい(これが示せれば、①より帰納法がまわること分かる)。

過去記事で示した事実として、

  • B_0=1
  • \displaystyle B_{n+1} = \sum_{k=0}^n \binom{n}{k}B_n
  • B_p \equiv 2 \pmod{p}

があり、\displaystyle \binom{p-1}{k} \equiv (-1)^k \pmod{p}が成り立つので、

\displaystyle S_1 = \sum_{k=1}^{p-1}(-1)^kB_k \equiv \sum_{k=1}^{p-1}\binom{p-1}{k}B_k  = B_p-B_0 \equiv 2-1 = 1\pmod{p}

S_1 \equiv 1 \pmod{p}が証明できる。次に、Fermatの小定理およびk=n+1, r=n-kによって

\begin{equation}\begin{split}-mS_m &= -m\sum_{k=1}^{p-1}\frac{B_k}{(-m)^k} \\ &\equiv \sum_{n=0}^{p-2}(-m)^{p-n-1}B_{n+1} \\ &= \sum_{n=0}^{p-2}(-m)^{p-n-1}\sum_{k=0}^n\binom{n}{k}B_k \\ &= \sum_{k=0}^{p-2}B_k\sum_{n=k}^{p-2}\binom{n}{k}(-m)^{p-n-1} \\ &= \sum_{k=0}^{p-2}B_k\sum_{r=0}^{p-k-2}\binom{k+r}{k}(-m)^{p-k-1-r} \pmod{p}\end{split}\end{equation}

と変形できる。

\displaystyle \binom{k+r}{r}(-1)^{p-1-r} \equiv \binom{p-k-1}{r} \pmod{p}

が成り立つので、再びFermatの小定理によって

\begin{equation}\begin{split}-mS_m &\equiv \sum_{k=0}^{p-2}(-1)^kB_k\sum_{k=0}^{p-k-2}\binom{p-k-1}{r}m^{p-k-1-r} \\ &= \sum_{k=0}^{p-2}(-1)^kB_k\left\{ (m+1)^{p-1-k}-1 \right\} \\ &\equiv S_{m+1}-S_1 \pmod{p} \end{split}\end{equation}

と所望の合同式が証明された。 Q.E.D.

integers.hatenablog.com
で紹介した冪乗和の公式において、S_n(k)=1^n+\cdots +k^nが任意の自然数nに対してk(k+1)で割り切れることを容易に確認することができます。このことから、p > n+1ならば、S_n(p-1) \equiv 0 \pmod{p}が分かります。

さて、k, n \in \{1, \dots, p-1\}としましょう。すると、上記観察から

\displaystyle \sum_{m=1}^{p-1}(-m)^{n-k} \equiv \begin{cases}-1 & (n=k) \\ 0 & (n\neq k) \end{cases} \pmod{p}

が得られます(負冪のときはFermatの小定理を使う)。よって、

\begin{equation}\begin{split}\sum_{m=1}^{p-1}m^n\sum_{k=1}^{p-1}\frac{B_k}{(-m)^k} &= \sum_{k=1}^{p-1}(-1)^nB_k\sum_{m=1}^{p-1}(-m)^{n-k} \\ &\equiv  -(-1)^nB_n\pmod{p}\end{split}\end{equation}

と計算でき、定理と合わせることによってn=1, \dots, p-1に対して

\displaystyle (-1)^nB_n \equiv \sum_{m=1}^{p-1}(-1)^mm^nD_{m-1} \pmod{p}

が成り立つことを示せました。特に、n=p-1とすれば次が得られます:

素数pに対して
B_{p-1} \equiv D_{p-1}+1 \pmod{p}
が成り立つ。

証明. 直前の式でn=p-1とすることにより、

\begin{equation}\begin{split}(-1)^{p-1}B_{p-1} &= \sum_{m=1}^{p-1}(-1)^{m}m^{p-1}D_{m-1} \\ &\equiv \sum_{m=1}^{p-1}(-1)^mD_{m-1} \\ &= (-1)^{p-1}D_{p-1} - \sum_{k=0}^{p-1}\binom{p-1}{k}D_k \\ &= (-1)^{p-1}D_{p-1} - (p-1)! \\ &\equiv D_{p-1}+1 \pmod{p-1}\end{split}\end{equation}

を得る。最後にWilsonの定理を用いた。 Q.E.D.


ひとまず、Bell数について語りたいことは紹介できました。