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数、特に整数に関する記事。

ストーン・ワイエルシュトラスの定理

定理解説

Weierstrassの多項式近似定理
integers.hatenablog.com
は1937年にStoneによって拡張されました(通称Stone-Weierstrassの定理)。それを述べるために言葉の導入から始めましょう。

Xをコンパクト位相空間とします。このとき、連続関数空間

C(X, \mathbb{R}) := \{f\colon X \to \mathbb{R} \mid f\text{は連続}\}

を考えましょう。Xはコンパクトなので、C(X, \mathbb{R})にはsupノルム

\displaystyle ||f||:=\sup_{t \in X}|f(t)|

が入ります。簡単に確かめられるように、このノルムについてC(X, \mathbb{R})\mathbb{R}上のBanach代数をなします。

Xを区間[a, b] \subset \mathbb{R}としたとき、C([a, b], \mathbb{R})の部分代数\mathrm{Pol}([a, b], \mathbb{R})

\mathrm{Pol}([a, b], \mathbb{R}) := \{ f\colon [a, b] \to \mathbb{R} \mid f\text{は実係数多項式から定まる関数}\}

とすると、Weierstrassの多項式近似定理は次のように述べることができます:

定理 \mathrm{Pol}([a, b], \mathbb{R})C([a, b], \mathbb{R})で稠密である。

Stoneは[a, b]を一般のコンパクト空間にした場合に、部分代数が稠密になるための条件を与えたのです。

Stone-Weierstrassの定理

定義 C(X, \mathbb{R})の部分代数\mathcal{A}Xの点を分離するとは、任意の相異なるXの二点x, y \in X \ (x \neq y)に対して、或る連続関数f \in \mathcal{A}が存在して、f(x) \neq f(y)が成り立つときにいう。

次がStone-Weierstrassの定理です*1

Stone-Weierstrassの定理 Xをコンパクト位相空間とし、\mathcal{A}C(X, \mathbb{R})の(1を含む)部分代数とする。このとき、\mathcal{A}Xの点を分離するならば、AC(X, \mathbb{R})で稠密である。

ちなみに、\mathcal{A}Xの点を分離するという条件が成り立つのはXがHausdorffのときだけです。実際、x, yXの相異なる二点としたとき、\mathcal{A}Xの点を分離するならば、f \in \mathcal{A}が存在してf(x) \neq f(y)が成り立ちます。よって、\mathbb{R}のHausdorff性から開集合U, V \subset \mathbb{R}が存在して、

f(x) \in U, \ f(y) \in V, \ U \cap V = \emptyset

を満たします。すると、fは連続なので、x, yは開集合f^{-1}(U), \ f^{-1}(V)によって分離されて、XはHausdorffというわけです。

というわけで、Stone-Weierstrassの定理を述べる場合、最初からXをコンパクトHausdorff空間とすることが多いです。しかしながら、証明にはHausdorff性は用いません。

この記事では

B. Brosowski, F. Deutsch, An elementary proof of the Stone–Weierstrass theorem, Proc. Amer. Math. Soc., 81 (1981), pp. 89–92.

の証明を紹介します。彼らの証明法は束の性質など、従来の証明法で用いられてきた幾つかの事実を使わない初等的な証明です。用いるのはコンパクトの定義とBernoulliの不等式
mathtrain.jp
だけと言っても過言ではありません。

準備

定理の条件を仮定します。

補題 t_0 \in Xとし、Ut_0の開近傍とする。このとき、V \subset Uなるt_0の開近傍Vであって、次の性質を満たすものが存在する:任意の\varepsilon > 0に対して或るf \in \mathcal{A}が存在し、

  1. 0 \leq f(x) \leq 1, \ (x \in X),
  2. f(x) < \varepsilon, \ (x \in V),
  3. f(x) > 1-\varepsilon, \ (x \in X\setminus U).

証明 .t \in X\setminus Uに対して、AXの点を分離することから、f_t \in \mathcal{A}が存在して

f_t(t) \neq f_f(t_0)

が成り立つ。よって、g_t := f_t-f_t(t_0)\cdot 1 \in \mathcal{A}とすると(\mathcal{A}1を含む\mathbb{R}代数であることに注意)、

g_t(t) \neq g_t(t_0) = 0

となる。更に、\displaystyle h_t:= \frac{1}{||g_t||^2}g_t^2 \in \mathcal{A}とすれば、

h_t(t_0)=0, \ h_t(t) > 0, \ 0 \leq h_t(x) \leq 1 \ (x \in X)

なる性質を持つ関数を構成できた。ここで、

U_t := \{ x \in X \mid h_t(x) > 0\}

は明らかにtの開近傍である。

\displaystyle X\setminus U \subset \bigcup_{t \in X\setminus U} U_t

なので、X\setminus Uのコンパクト性*2から、t_1, \dots, t_m \in X \setminus  Uが存在して

\displaystyle X\setminus U \subset \bigcup_{i=1}^mU_{t_i}

を得る。ここで、h \in \mathcal{A}\displaystyle h:=\frac{1}{m}\sum_{i=1}^mh_{t_i}と定めると、h_{t_i}の性質から、h

  • 0 \leq h(x) \leq 1 \ (x \in X)
  • h(t_0)=0
  • h(x) > 0 \ (x \in X\setminus U)

を満たすことがわかる。X\setminus Uはコンパクトなので、hはその上で最小値をとる。よって、0 < \delta < 1であって

h(x) \geq \delta \ (x \in X\setminus U)

なるものが存在する。所望のV

V:= \{ x \in X \mid h(x) < \frac{\delta}{2}\}

で与えられることを示そう。hの性質から、Vt_0の開近傍であり、V \subset Uであることがわかる。

k \in \mathbb{Z}

\displaystyle k-1\leq \frac{1}{\delta} < k

なるものとする。\displaystyle k < \frac{2}{\delta}なので、1 < k\delta < 2が成り立つ。このkを用いて、自然数n毎にf_n \in \mathcal{A}

f_n(x) := (1-h(x)^n)^{k^n}

と定める。hの性質により、0 \leq f_n(x) \leq 1 \ (x \in X)f_n(t_0)=1である。

任意のx \in Vに対して、kh(x) < k\frac{\delta}{2} < 1に注意すると、Bernoulliの不等式ににより

\displaystyle f_n(x) \geq 1-(kh(x))^n > 1-\left( \frac{k\delta}{2}\right)^n \xrightarrow{n \to \infty} 1

なる評価を得る(最後の極限はV上一様であることに注意)。

次に、任意のx \in X\setminus Uに対して、kh(x) \geq k\delta > 1に注意すると、再びBernoulliの不等式により

\begin{align} f_n(x) &= \frac{1}{k^nh(x)^n}(1-h(x)^n)^{k^n}k^nh(x)^n \\ &< \frac{1}{(kh(x))^n}(1-h(x)^n)^{k^n}(1+k^nh(x)^n) \\ &\leq \frac{1}{(kh(x))^n}(1-h(x)^n)^{k^n}(1+h(x)^n)^{k^n} \\ &= \frac{1}{(kh(x))^n}(1-h(x)^{2n})^{k^n} \\ &< \frac{1}{(k\delta)^n}  \xrightarrow{n \to \infty} 1\end{align}

なる評価を得る(最後の極限はX\setminus U上一様であることに注意)。

以上より、与えられた\varepsilon > 0に対して十分大きいnを取れば

  1. 0 \leq f_n(x) \leq 1, \ (x \in X)
  2. f_n(x) < \varepsilon, \ (x \in V)
  3. f_n(x) > 1-\varepsilon, \ (x \in X\setminus U).

が成り立つことがわかる。 Q.E.D.

命題 ABを共通部分を持たないようなXの閉部分集合とする。このとき、任意の0 < \varepsilon < 1に対して次を満たすようなf \in \mathcal{A}が存在する:

  1. 0\leq f(x) \leq 1, \ (x \in X),
  2. f(x) < \varepsilon, \ (x \in A),
  3. f(x) > 1-\varepsilon, (x \in B).

証明. U:=X\setminus Bとする。各t \in Aに対して、補題で存在するようなVV_tとする。

\displaystyle A \subset \bigcup_{t \in A}V_t

であり、Aはコンパクトなので、t_1, \dots, t_mが存在して、

\displaystyle A \subset \bigcup_{i=1}^mV_{t_i}

が成り立つ。0 < \varepsilon < 1をとる。各i=1, \dots, mに対してf_i \in \mathcal{A}が存在して

  • 0 \leq f_i(x) \leq 1 \ (x \in X)
  • \displaystyle f_i(x) < \frac{\varepsilon}{m} \ (x \in V_{t_i})
  • \displaystyle f_i(x) > 1-\frac{\varepsilon}{m} \ (x \in B)

が成り立つ(補題より)。これらを用いて、f:=f_1\cdots f_m \in \mathcal{A}としよう。すると、

  • 0 \leq f(x) \leq 1 \ (x \in X)
  • \displaystyle f(x) < \frac{\varepsilon}{m} \leq \varepsilon \ (x \in \bigcup_{i=1}^mV_{t_i} \supset A)

であり、Bernoulliの不等式から、x \in Bに対して

\displaystyle f(x) > \left( 1-\frac{\varepsilon}{m} \right)^m \geq 1-\varepsilon

が成り立つ。 Q.E.D.

Stone-Weierstrassの定理の証明

f \in C(X, \mathbb{R})および\varepsilon > 0を任意にとって、

|f(x) - g(x)| < 2\varepsilon, \ (x \in X)

なるg \in \mathcal{A}が存在することを示す。ff+||f||でとりかえることによってf(x) \geq 0 \ (x \in X)と仮定して良い(\mathcal{A}は定数関数を含むので許される)。また、\varepsilon < \frac{1}{3}としてよい。

(n-1)\varepsilon \geq ||f||

なる整数nをとって固定する。j=0, 1, \dots, nに対して

\begin{align}A_j&:= \{ x \in X \mid f(x) \leq \left( j-\frac{1}{3}\right) \varepsilon \} \\ B_j &:= \{ x \in X \mid f(x) \geq \left( j+\frac{1}{3} \right) \varepsilon \}\end{align}

とする。これらはXの閉部分集合であり、

\begin{align} \emptyset = &A_0 \subset A_1 \subset \cdots \subset A_n = X \\ &B_0 \supset B_1 \supset \cdots \supset B_n = \emptyset\end{align}

を満たす。命題によって、各j=0, 1, \dots, nに対してg_j \in \mathcal{A}であって

  • 0 \leq g_j(x) \leq 1 \ (x \in X)
  • \displaystyle g_j(x) < \frac{\varepsilon}{n} \ (x \in A_j)
  • \displaystyle g_j(x) > 1-\frac{\varepsilon}{n} \ (x \in B_j)

なるものが存在する。そうして、\displaystyle g:=\varepsilon \sum_{i=0}^ng_j \in \mathcal{A}と定義する。任意にx \in Xをとる。このとき、x \in A_j\setminus A_{j-1}なるj \geq 1が存在する。すなわち、

\displaystyle \left( j-\frac{4}{3}\right) \varepsilon < f(t) \leq \left( 1-\frac{1}{3} \right) \varepsilon -①

および

\displaystyle g_i(t) < \frac{\varepsilon}{n} \ \ (i \geq j) -②

が成り立つ。i \leq j-2に対してx \in B_jなので、

\displaystyle g_i(x) > 1-\frac{\varepsilon}{n} \ \ (i \leq j-2) -③

である。②より

\begin{align}g(x) &= \varepsilon \sum_{i=0}^{j-1}g_i(x) + \varepsilon \sum_{i=j}^ng_i(x) \\ &\leq j\varepsilon + \varepsilon (n-j+1)\frac{\varepsilon}{n} \\ &\leq j\varepsilon + \varepsilon^2 \\ &< \left( j+\frac{1}{3} \right) \varepsilon \end{align}

と評価でき、j \geq 2のとき、③より

\begin{align}g(x) &\geq \varepsilon \sum_{i=0}^{j-2}g_i(x) \\ &\geq (j-1)\varepsilon \left( 1-\frac{\varepsilon}{n} \right) \\ &> (j-1)\varepsilon -\varepsilon^2 \\ &> \left( j-\frac{4}{3} \right) \varepsilon \end{align}

と評価できる(評価の結論自体はj=1でも成立することに注意)。すなわち、①と合わせて

\displaystyle \left( j-\frac{4}{3} \right) \varepsilon \leq f(x), \ g(x) < \left( j+\frac{1}{3} \right) \varepsilon

なので、

\displaystyle |f(x) - g(x)| < \left( j+\frac{1}{3} \right) \varepsilon- \left( j-\frac{4}{3} \right) \varepsilon < 2\varepsilon

が示された。 Q.E.D.

三角多項式近似

Weierstrassの多項式近似定理は確かにStone-Weierstrassの定理の系になっていますが、他変数化も容易に得られます。すなわち、n次元Euclid空間\mathbb{R}^nにおける有界閉集合上定義された連続関数はn変数多項式によって一様近似できます(Stone-Weierstrassの定理の条件を満たすことは容易に確認できる)。

また、Fourier解析と関連する三角多項式近似も得られます。

命題 非負整数Nと実数a_0, a_1, \dots, a_N, b_1, \dots, b_Nを用いて
\displaystyle a_0+\sum_{n=1}^N(a_n\cos (nx)+b_n\sin (nx))
と書ける周期関数\mathbb{R}\to \mathbb{R}(周期2\pi)実三角多項式という。

三角関数の積和公式より実三角多項式全体は1を含む\mathbb{R}代数をなすことがわかります。

周期関数の実三角多項式近似*3
周期2\piの実連続関数は実三角多項式によって一様近似できる。

証明. 周期2\piの実連続関数全体のなす集合を\mathcal{P}\mathbb{R}^2の有界閉集合である単位円周を\mathbb{T}とする。このとき、f \in C(\mathbb{T}, \mathbb{R})に対して\overline{f}(x):=f(\cos x, \sin x) \in \mathcal{P}を対応させることによって、\mathcal{P}C(\mathbb{T}, \mathbb{R})を同一視できる。この同一視によって実三角多項式全体のなす\mathcal{P}の部分代数は、二変数多項式(の定める\mathbb{T}上の連続関数)全体のなすC(\mathbb{T}, \mathbb{R})の部分代数に対応する(cf. チェビシェフの多項式)。よって、二変数多項式による一様近似によって所望の結果を得る。 Q.E.D.

*1:必要十分条件を与える形で書くこともできますし、定理の複素版もありますが、ここでは省略します。

*2:コンパクト空間の閉部分集合はコンパクト。

*3:周期が2\piでなくても三角多項式の定義をmodifyすれば同様の近似が得られることは簡単にわかる。