インテジャーズ

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インテジャーズ

数、特に整数に関する記事。

フォーチュン予想

エイプリルフールに出した問題
integers.hatenablog.com
の問1:

問1
素数を順番に掛け合わせて1足した数をEuclid数という*1
2+1=3
2\times 3+1=7
2\times 3\times 5+1=31
2\times 3\times 5\times 7+1=211
2\times 3\times 5\times 7\times 11+1=2311
これらは偶然全て素数であるが
2\times 3\times 5\times 7\times 11\times 13+1=30031=59\times 509
は素数でない。それでは、以上の考察を受けて
「素数をn個順番に掛け合わせてa_n足し合わせると素数となるような最小の2以上の整数a_n
を考察することにしよう。例えば:
2+3=5
2\times 3+5=11
2\times 3\times 5+7=37
2\times 3\times 5\times 7+13=223
2\times 3\times 5\times 7\times 11+23=2333
2\times 3\times 5\times 7\times 11\times 13+17=30047
2\times 3\times 5\times 7\times 11\times 13\times 17+19=510529
2\times 3\times 5\times 7\times 11\times 13\times 17\times 19+23=9699713
2\times 3\times 5\times 7\times 11\times 13\times 17\times 19\times 23+37=223092907
2\times 3\times 5\times 7\times 11\times 13\times 17\times 19\times 23\times 29+61=6469693291
2\times 3\times 5\times 7\times 11\times 13\times 17\times 19\times 23\times 29\times 31+67=200560490197
から
a_1=3, a_2=5, a_3=7, a_4=13, a_5=23, a_6=17, a_7=19, a_8=23, a_9=37,
a_{10}=61, a_{11}=67
が分かる。任意のnに対してa_nは素数であることを証明せよ。

について記事を書きます。

まず、この問題の答えですが、未解決問題のため私は答えを知りません笑

つまり、この問のみ嘘をついているわけではないのでエイプリルフールとしては不適切でした(他の3問は嘘の問題)。

定義 問1に現れるa_nのことをフォーチュン数(Fortunate number)という。すなわち、p_n\#+1より大きい最小の素数(それは素数の無限性より存在する)をF_nとするとき、a_n:=F_n-p_n\#。ここで、p_nn番目の素数であり、p_n\#は素数階乗*2

フォーチュン予想 全てのフォーチュン数は素数である。

2013年現在、a_{2000}まで素数であることが確認されているようです。

名前の由来はニュージーランド生まれの人類学者Reo Franklin Fortuneが予想したからであって、フォーチュンクッキーのフォーチュンではありません。

Crámer予想とFiroozbakht予想

フォーチュン予想は一見「そんなの成り立たないだろう」と思うかもしれませんが*3、所謂「素数のgap」と関係があります。gapに関する次の予想は有名です:

Crámer予想 (1936) \ \ \ p_{n+1}-p_n = O(\log^2p_n) \ \ (n \to \infty)が成り立つ。

\displaystyle \limsup_{n \to \infty}\frac{p_{n+1}-p_n}{\log p_n} = \infty

が1931年にWestzynthiusによって証明されていることに注意します。

Crámer予想に対して、Crámerは次の定理を証明しています:

定理 Riemann予想の仮定のもと、次は正しい:
p_{n+1}-p_n=O(\sqrt{p_n}\log p_n) \ \ (n \to \infty).

結論の式はCrámer予想よりも弱いです。しかしながら、Crámer予想からRiemann予想が出るわけではありません。Crámer予想が正しければ「任意の自然数nに対してn^2(n+1)^2の間には少なくとも一つ(二つ)は素数が存在する」という有名なLegendre予想が十分大きいnに対して従います。Riemann予想が正しければ「任意の自然数nに対してn^3(n+1)^3の間には少なくとも一つは素数が存在する」ことが示せることは
integers.hatenablog.com
でも紹介しましたが、Legendre予想のことをRiemann予想として紹介しているトンデモ本があって驚いたことがあります。

ところで、次のような予想があることを知りました:

Firoozbakht予想 任意の自然数nに対して\sqrt[n+1]{p_{n+1}} < \sqrt[n]{p_n}が成り立つ。

これはめちゃくちゃ強い(最強の)予想で、例えば、Crámer予想よりはるかに強いです:

定理 Firoozbakht予想が正しいならば、n \geq 10に対して
p_{n+1}-p_n < \log^2p_n-\log p_n-1
が成り立つ。

n < 4\times 10^{18}でFiroozbakht予想が成り立っていることが確認されていますが、上の定理における式は十分大きいnにおいて(無限回)成り立たないだろうというGranvilleやPintzによる考察があるようなので注意が必要です(この部分はまだ勉強していません)。

フォーチュン予想より少しだけ強い予想

p_n\#+kが素数であるならば、kp_1, \dots, p_nでは割り切れません。従って、kの素因数は一番小さくてp_{n+1}です。すると、kがもし合成数ならばk \geq p_{n+1}^2となるので

区間(p_n\#+1, p_n\#+p_{n+1}^2)に素数があれば、フォーチュン数a_nは素数である。

が成り立つことがわかります。p_n\#+p_{n+1}^2は必ずしも素数ではないため、逆は言えません。よって、フォーチュン予想より強い次の予想を立てることができます*4

予想 任意の自然数nに対して区間(p_n\#+1, p_n\#+p_{n+1}^2)は素数を含む。

こうして、フォーチュン予想は素数gapに関する予想に変化し、素数定理より\log(p_n\#) = \vartheta (p_n) \sim p_nなので、Crámer予想やFiroozbakht予想と合わせて考えると成り立ってもおかしくない予想であることがわかります(ただし、GolombやGuyのフォーチュン数に関する論文では、\log(p_n\#) \sim nとして議論しています。これは間違いだと思うので注意が必要です)。

フォーチュン数最初の100個

a_{1}= 3
a_{2}= 5
a_{3}= 7
a_{4}= 13
a_{5}= 23
a_{6}= 17
a_{7}= 19
a_{8}= 23
a_{9}= 37
a_{10}= 61
a_{11}= 67
a_{12}= 61
a_{13}= 71
a_{14}= 47
a_{15}= 107
a_{16}= 59
a_{17}= 61
a_{18}= 109
a_{19}= 89
a_{20}= 103
a_{21}= 79
a_{22}= 151
a_{23}= 197
a_{24}= 101
a_{25}= 103
a_{26}= 233
a_{27}= 223
a_{28}= 127
a_{29}= 223
a_{30}= 191
a_{31}=163
a_{32}= 229
a_{33}= 643
a_{34}= 239
a_{35}= 157
a_{36}= 167
a_{37}= 439
a_{38}= 239
a_{39}= 199
a_{40}= 191
a_{41}=199
a_{42}= 383
a_{43}= 233
a_{44}= 751
a_{45}= 313
a_{46}= 773
a_{47}= 607
a_{48}= 313
a_{49}= 383
a_{50}= 293
a_{51}= 443
a_{52}= 331
a_{53}= 283
a_{54}= 277
a_{55}= 271
a_{56}= 401
a_{57}= 307
a_{58}= 331
a_{59}= 379
a_{60}= 491
a_{61}= 331
a_{62}=311
a_{63}= 397
a_{64}= 331
a_{65}= 353
a_{66}= 419
a_{67}= 421
a_{68}= 883
a_{69}= 547
a_{70}=1381
a_{71}= 457
a_{72}= 457
a_{73}= 373
a_{74}= 421
a_{75}= 409
a_{76}= 1061
a_{77}= 523
a_{78}= 499
a_{79}= 619
a_{80}= 727
a_{81}= 457
a_{82}= 509
a_{83}= 439
a_{84}= 911
a_{85}= 461
a_{86}= 823
a_{87}= 613
a_{88}= 617
a_{89}= 1021
a_{90}= 523
a_{91}= 941
a_{92}= 653
a_{93}= 601
a_{94}= 877
a_{95}= 607
a_{96}= 631
a_{97}= 733
a_{98}= 757
a_{99}= 877
a_{100}= 641

F_nの値最初の35個

F_{1}= 5
F_{2}= 11
F_{3}= 37
F_{4}= 223
F_{5}= 2333
F_{6}= 30047
F_{7}= 510529
F_{8}= 9699713
F_{9}= 223092907
F_{10}= 6469693291
F_{11}= 200560490197
F_{12}= 7420738134871
F_{13}= 304250263527281
F_{14}= 13082761331670077
F_{15}= 614889782588491517
F_{16}= 32589158477190044789
F_{17}= 1922760350154212639131
F_{18}= 117288381359406970983379
F_{19}= 7858321551080267055879179
F_{20}= 557940830126698960967415493
F_{21}= 40729680599249024150621323549
F_{22}= 3217644767340672907899084554281
F_{23}= 267064515689275851355624017992987
F_{24}= 23768741896345550770650537601358411
F_{25}= 2305567963945518424753102147331756173
F_{26}= 232862364358497360900063316880507363303
F_{27}= 23984823528925228172706521638692258396433
F_{28}= 2566376117594999414479597815340071648394597
F_{29}= 279734996817854936178276161872067809674997453
F_{30}= 31610054640417607788145206291543662493274687181
F_{31}= 4014476939333036189094441199026045136645885247893
F_{32}= 525896479052627740771371797072411912900610967452859
F_{33}= 72047817630210000485677936198920432067383702541010953
F_{34}= 10014646650599190067509233131649940057366334653200433329
F_{35}= 1492182350939279320058875736615841068547583863326864530567

*1:integers.hatenablog.com

*2:integers.hatenablog.com

*3:「全部素数なんてどうせ嘘なんでしょ?」という、他のエイプリルフール問題との関連における引っ掛けです。が、嘘の可能性も依然として残されています。

*4:Firoozbakht予想のときと同じで、フォーチュン予想を含めて成り立たない可能性も十分にあるので注意が必要です。他の幾つかの数学の予想のように絶対成り立つと信じられているタイプの予想ではないと思います。