インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

938万桁の新素数発見により10223がSierpinski数でないことが確定

以下のサイトに発見されている巨大素数のトップ10が掲載されています:

https://primes.utm.edu/largest.html

f:id:integers:20161206001717p:plain

第1位の2^{74207281}-1は今年の1月に発見が宣言されたもので記事にしました:

integers.hatenablog.com

実は先日新しい巨大素数が発見されたらしいのです!第7位を見てください!

それは9383761桁の素数であり、そのお姿は


10223\cdot 2^{31172165}+1


です!上記表におけるこれ以外の9つの素数は全てMersenne素数です*1

一人だけ10223がついており、何でこんなものを探索していたのか不思議に思われるかもしれませんが、実はこの発見はある未解決問題の解決への進展を意味します。

それは次の問題です:

未解決問題 78557は最小のSierpinski数であるか?

Sierpinski数とはk2^n+1が全ての自然数nに対して合成数となるような正の奇数kのことを言います。78557がSierpinski数であることの証明は以前紹介しました:
integers.hatenablog.com

上記未解決問題を解決するためには、78557未満の全ての正の奇数kがSierpinski数でないことを示せばよいです。そのためには、そのようなk毎にk2^n+1が素数となるようなnを1つでも見つければよいのです。

実はそのようなnが見つかっていないkが今までは

10223, 21181, 22699, 24737, 55459, 67607

の6つ知られていたのですが、今回の巨大素数の発見により、10223はSierpinski数ではないことが確認されたため、上記未解決問題を解くために調べる必要のある数が残り

21181, 22699, 24737, 55459, 67607

の5つに減ったことになります。

今回の巨大素数発見のニュースには実はこんな数学的意味が込められていたのです。果たして、78557はやはり最小のSierpinski数なのか?それとも、上の5つの数の中にSierpinski数が存在するのか?我々が生きている間にその答えを知ることはできるでしょうか??



・次の記事も合わせてお読みください:
integers.hatenablog.com


・今回のニュースは2chで知りました:
というのも、昨日から何故かSierpinskiの記事へのアクセスが増えていて、よく見てみると2chに記事を紹介されており、辿ってみるとこのニュースの記事が書かれていて「Wow!」となったので慌てて私も記事を書いた次第です。日本語版Wikipediaによれば10/31には発見されていたようです。

*1:2^p-1の形をした素数。 integers.hatenablog.com