インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

代数学の基本定理のCauchyの積分定理を用いた証明

代数学の基本定理の証明はたくさん知られています。個人的にはGalois理論を使った証明が好きです。インテジャーズでも位相空間論の言葉による証明を紹介しました:

integers.hatenablog.com

今日はBoasが1964年に発表した証明を紹介したいと思います。

代数学の基本定理は主張自体が複素数に関するものですが、一番オーソドックスな証明は複素係数多項式の絶対値をとって実数範囲の微積分の知識で乗り切るものです:

mathtrain.jp

一方、複素解析におけるLiouvilleの定理を使えば瞬時に代数学の基本定理が証明されます。或いはRouchëの定理を用いても即座に示されます。これらは複素解析の強力さを見せ付けてくれますが、Liouvilleの定理にせよRouchëの定理にせよ、それらは複素解析の基本定理とも言えるCauchyの積分公式、更に辿れば、Cauchyの積分定理から導かれるものです。Boasの証明はLiouvilleの定理やRouchëの定理を経由するのではなく、複素解析の原点であるCauchyの積分定理を直接的に使った証明と言えるでしょう。

証明. p(x)は定数でない複素係数の多項式であって、任意の複素数z \in \mathbb{C}に対してp(z) \neq 0であると仮定する。必要ならばp(x)p(x)\overline{p}(x)に置き換えることによって、p(x)

z \in \mathbb{R} \Longrightarrow p(z) \in \mathbb{R}

を満たすと仮定してよい(\overline{p}(x)p(x)の各係数をその複素共役で置き換えて得られる多項式)。p\mid_{\mathbb{R}}\colon \mathbb{R}\to \mathbb{R}は連続。仮定よりp(z)は任意の実数zに対して同符号である(そうでなければ、中間値の定理より零点を持つ)。従って、

\displaystyle \int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{p(2\cos \theta)} \neq 0

である。一方、z=e^{\sqrt{-1}\theta}と変数変換すると、この積分は

\displaystyle \frac{1}{\sqrt{-1}}\int_{|z|=1}\frac{dz}{zp(z+z^{-1})}

に等しい。q(z)=z^np(z+z^{-1})とおけば

\displaystyle \frac{1}{\sqrt{-1}}\int_{|z|=1}\frac{z^{n-1}}{q(z)}dz

となる(np(x)の次数)。pに関する仮定からz\neq 0ならばq(z) \neq 0である。また、q(z)p(z)の最高次の係数を定数項に持つような多項式なので、q(0) \neq 0も成立する。つまり、最後の積分の被積分関数は複素平面全体で正則であり、従って、Cauchyの積分定理より考えている積分は0となる。これは矛盾。 Q.E.D.