インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

リュービル数

超越数の存在は1844年にLiouvilleによって初めて証明されました。この記事ではLiouville数について簡潔にまとめます。

定義 複素数\alphaLiouville数であるとは、任意の正整数nに対して在る整数a, bであって、b > 1なるものが存在して、
\displaystyle 0 < \left| \alpha - \frac{a}{b}\right| < \frac{1}{b^n}
が成り立つときにいう。

Liouville数の例を一つ上げておきます:

Liouville数の例 \ \displaystyle \alpha := \sum_{j=0}^{\infty}\frac{1}{2^{j!}}はLiouville数である。

証明. \alphaは小数としての二進法表示においていくらでも長く0が続く区間があるので(そして1も無数に現れる)、無理数である(周期的ではない)。正整数nを任意に取る。このとき、有理数 a/b

\displaystyle \frac{a}{b} := \sum_{j=0}^n\frac{1}{2^{j!}}, \quad b=2^{n!} > 1

と定義する。\alphaは無理数なので

\displaystyle \left|\alpha -\frac{a}{b}\right| > 0

である。一方、

\displaystyle \left|\alpha-\frac{a}{b}\right| = \sum_{j=n+1}^{\infty}\frac{1}{2^{j!}} < \sum_{j=(n+1)!}^{\infty}\frac{1}{2^j} = \frac{1}{2^{(n+1)!-1}}\leq \frac{1}{2^{n\cdot n!}} = \frac{1}{b^n}

と評価できるため、\alphaがLiouville数の定義を満たすことが確認された。 Q.E.D.

補題 (代数的無理数の近似) nを正整数とし、\alphan次の代数的数とする。このとき、\alphaのみに依存する正定数 C=C(\alpha) > 0が存在して、任意の整数 a, b \ (b > 0)に対して
\displaystyle \left|\alpha-\frac{a}{b}\right| > \frac{C}{b^n}
が成り立つ。

証明. \alphaの整数係数最小多項式を \displaystyle f(x)=\sum_{j=0}^na_jx^jとする(a_n\neq 0, \ f(\alpha)=0)。\displaystyle M:=\max_{[\alpha-1, \alpha+1]}\left|f'(x)\right|とし、\alpha_1, \dots, \alpha_m\alphaと異なる f(x)の相異なる根全体とする*1。正の数 C

\displaystyle C < \min\{1, M^{-1}, \left|\alpha-\alpha_1\right|, \dots, \left|\alpha-\alpha_m\right|\}

を満たすように任意にとって固定する。この Cに対して主張が成り立つことを背理法で証明する。すなわち、或る整数 a, b \ (b > 0)に対して

\displaystyle \left|\alpha-\frac{a}{b}\right| \leq \frac{C}{b^n}

であると仮定する。このとき、

\displaystyle \left|\alpha-\frac{a}{b}\right| \leq \frac{C}{b^n} \leq C < \min\{1, \left|\alpha-\alpha_1\right|, \dots, \left|\alpha-\alpha_m\right|\}

なので、\displaystyle \frac{a}{b} \in [\alpha-1, \alpha+1] 及び \displaystyle \frac{a}{b} \not \in \{\alpha_1, \dots, \alpha_m\} がわかる。平均値の定理によって、a/b\alphaの間の実数 \xiであって

\displaystyle f(\alpha)-f\left(\frac{a}{b}\right) = \left(\alpha-\frac{a}{b}\right)f'(\xi)

なるものが存在し、このとき、\displaystyle f(\alpha)=0, \ f\left(\frac{a}{b}\right) \neq 0 なので

\displaystyle \left|\alpha-\frac{a}{b}\right| = \left|\frac{f\left(\frac{a}{b}\right)-f(\alpha)}{f'(\xi)}\right| = \frac{\left|f\left(\frac{a}{b}\right)\right|}{\left|f'(\xi)\right|}

及び

\displaystyle \left|f\left(\frac{a}{b}\right)\right| = \frac{\left|\sum_{j=0}^na_ja^jb^{n-j}\right|}{b^n} \geq \frac{1}{b^n}

が成り立つ。\left|f'(\xi)\right| \leq Mなので、

\displaystyle \left|\alpha-\frac{a}{b}\right| \geq \frac{1}{Mb^n} > \frac{A}{b^n} \geq \left|\alpha-\frac{a}{b}\right|

となって、矛盾に到達する。 Q.E.D.

定理 (Liouville) Liouville数は超越数である。

証明. \alphaをLiouville数とし、\alphaが代数的数と仮定して矛盾させる。まず、\alphaが有理数であると仮定する。このとき、整数 c, d \ (d > 0)が存在して、\displaystyle \alpha=\frac{c}{d}と書ける。2^{n-1} > dなる正整数nをとると、任意の整数 a, bであって \displaystyle b > 1, \ \frac{a}{b} \neq \frac{c}{d}なるものに対して、

\displaystyle \left|\alpha-\frac{a}{b}\right| = \left|\frac{c}{d}-\frac{a}{b}\right| \geq \frac{1}{bd} > \frac{1}{2^{n-1}b} \geq \frac{1}{b^n}

となる。これは \alphaがLiouville数であるという仮定に反する。次に、\alphaが代数的無理数であると仮定する。\alphaの次数をnとして、補題の正定数Cをとる。2^r \geq C^{-1}なる正整数rをとると、\alphaがLiouville数であることから或る整数a, b \ (b > 1)が存在して

\displaystyle \left|\alpha -\frac{a}{b}\right| < \frac{1}{b^{n+r}} \leq \frac{1}{2^rb^n} \leq \frac{C}{b^n}

と評価できるが、補題より

\displaystyle \left|\alpha - \frac{a}{b}\right| > \frac{C}{b^n}

でなければならない。これは矛盾である。従って、\alphaは超越数である。 Q.E.D.

*1:n=1のときは考えない