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INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

部分分数分解

何度でも言いたくなる魔法の言葉「ぶぶんぶんすうぶんかい」

補題1 Kを体とし、f(x), g(x) \in K[x]とする。互いに素な多項式 g_1(x), g_2(x) \in K[x]によって g(x)=g_1(x)g_2(x)と分解されているならば、f_1(x), \ f_2(x) \in K[x]が存在して、K(x)において
\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f_1(x)}{g_1(x)}+\frac{f_2(x)}{g_2(x)}
が成り立つ。

証明. g_1(x), g_2(x)が互いに素であることから、r(x), s(x) \in K[x]が存在して

r(x)g_1(x)+s(x)g_2(x)=1

が成り立つので、f_1(x):=f(x)s(x), \ f_2(x):=f(x)r(x)とおけばよい。 Q.E.D.

系1 Kを体とし、f(x), g(x) \in K[x]とする。どの二つをとっても互いに素であるような多項式 g_1(x), \dots, g_n(x) \in K[x]によって g(x) = \prod_{i=1}^ng_i(x)と分解されているならば、\widetilde{f}(x), f_1(x), \dots, f_n(x) \in K[x]が存在して、K(x)において
\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)}=\widetilde{f}(x)+\sum_{i=1}^n\frac{f_i(x)}{g_i(x)},\quad \deg f_i(x) < \deg g_i(x)
が成り立つ。

証明. 仮定より例えば g_1(x)\cdots g_{n-1}(x)g_n(x)は互いに素であり、数学的帰納法によって補題1を g(x)=\prod_{i=1}^ng_i(x)の場合に拡張できる。最後に各 g_i(x)で割り算を実行すればよい。 Q.E.D.

補題2 Kを体とし、f(x), g(x) \in K[x]とする。正整数eに対して \deg f(x) < e\deg g(x)であれば、f_1(x), \dots, f_e(x) \in K[x]が存在して、K(x)において
\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)^e}=\sum_{j=1}^e\frac{f_j(x)}{g(x)^j},\quad \deg f_j(x) < \deg g(x)
が成り立つ。

証明. 互除法で証明できる:

f(x)=f_1(x)g(x)^{e-1}+r_1(x),\quad \deg r_1(x) < (e-1)\deg g(x)

r_1(x)=f_2(x)g(x)^{e-2}+r_2(x),\quad \deg r_2(x) < (e-2)\deg g(x)

\cdots

r_{e-3}(x)=f_{e-2}(x)g(x)^{2}+r_{e-2}(x),\quad \deg r_{e-2}(x) < 2\deg g(x)

r_{e-2}(x)=f_{e-1}(x)g(x)+f_{e}(x),\quad \deg f_{e}(x) < \deg g(x)

を組み合わせればよい。 Q.E.D.

系1と補題2より次が得られます:

定理 (部分分数分解) Kを体とし、f(x), g(x) \in K[x]とする。相異なる既約多項式 p_1(x), \dots, p_n(x) \in K[x]と正整数 e_1, \dots, e_nによって g(x) = \prod_{i=1}^np_i(x)^{e_i}と分解されているならば、多項式 \widetilde{f}(x), f_{i, j}(x) \in K[x]が存在して(1 \leq i \leq n, 1 \leq j \leq e_i)、K(x)において
\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)} = \widetilde{f}(x) + \sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^{e_i}\frac{f_{i, j}(x)}{p_i(x)^j},\quad \deg f_{i, j}(x) < \deg p_i(x)
が成り立つ。

次の形の部分分数分解はよく用いられます。

系2 f(x), g(x) \in \mathbb{C}[x]とする。相異なる複素数 a_1, \dots, a_nを用いて g(x) = \prod_{i=1}^n(x-a_i)と分解されており、\deg f(x) < \deg g(x)であれば
\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)}=\sum_{i=1}^n\frac{f(a_i)}{g'(a_i)}\frac{1}{x-a_i}
と部分分数分解される。ここで、g'(x)g(x)の導関数。

証明. 定理より複素数 b_1, \dots, b_n \in \mathbb{C}が存在して、

\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)}=\sum_{i=1}^n\frac{b_i}{x-a_i}

と書ける。両辺に g(x) = \prod_{i=1}^n(x-a_i)を掛けると

\displaystyle f(x) = \sum_{i=1}^nb_i\prod_{j \neq i}(x-a_j)

なので、x=a_iを代入すれば

\displaystyle f(a_i) = b_i\prod_{j \neq i}(a_i-a_j)

が得られる。一方、\displaystyle g'(x) = \sum_{i=1}^n\prod_{j \neq i}(x-a_j)なので、

\displaystyle b_i=\frac{f(a_i)}{g'(a_i)}

が示された。 Q.E.D.