インテジャーズ

インテジャーズ

数、特に整数に関する記事。

三木の恒等式のGesselによる証明

三木の恒等式 n4以上の整数とする。このとき、次の恒等式が成立する:
\displaystyle \sum_{k=2}^{n-2}\beta_k\beta_{n-k}-\sum_{k=2}^{n-2}\binom{n}{k}\beta_k\beta_{n-k}=2H_n\beta_n.
ただし、\beta_k=B_k/kであり、H_nは第n調和数である。

integers.hatenablog.com

第二種Stirling数の母関数表示

Gesselの証明では第二種Stirling数を用います。第二種Stirling数については

integers.hatenablog.com

を参照してください。

integers.hatenablog.com

で用いた次の母関数表示を思い出します。mは正整数としておきます。

母関数表示1\ \ \ \displaystyle \sum_{n=m}^{\infty}\left\{ {n \atop m} \right\}\frac{t^n}{n!}=\frac{(e^t-1)^m}{m!}.

実は次のような母関数表示も知られており、両方とも使うことになります。

母関数表示2\ \ \ \displaystyle \sum_{n=m}^{\infty}\left\{ {n \atop m} \right\}t^n=\frac{t^m}{(1-t)(1-2t)\cdots (1-mt)}.

証明. 実は母関数表示1と母関数表示2は同値である。それは次のような観察からわかる。まず、

\displaystyle \frac{(e^t-1)^m}{m!} = \frac{1}{m!}\sum_{j=0}^m\binom{m}{j}(-1)^{m-j}e^{jt}=\frac{1}{m!}\sum_{j=0}^m\binom{m}{j}(-1)^{m-j}(e^{jt}-1) −①

が成り立つ。一方、部分分数分解により、

\displaystyle \frac{t^m}{\prod_{j=1}^m(1-jt)} = \frac{1}{m!}\sum_{j=1}^m\binom{m}{j}(-1)^{m-j}\frac{jt}{1-jt}=\frac{1}{m!}\sum_{j=0}^m\binom{m}{j}(-1)^{m-j}\frac{jt}{1-jt} −②

が成り立つ。あとは、

\displaystyle e^{jt}-1=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(jt)^n}{n!},\quad \frac{jt}{1-jt} = \sum_{n=1}^{\infty}(jt)^n

に注意すれば①、②より所望の同値性がわかる。 Q.E.D.

証明のアイデア

Gesselの証明は第二種Stirling数 \left\{ {n+m \atop m} \right\}を第二種Stirling数の二つの母関数表示を用いて二通りの表示を与え、それらの表示をmの多項式と考えて m^2の係数を比較することによって三木の恒等式を得るというものです。

三木の恒等式はnが奇数のときは 0=0を言っているに過ぎないため、以下、n4以上の偶数とします(ややこしいですが、\sumの変数に使うものは偶数とは限らないものとし、係数比較で取り出した後の固定したn4以上の偶数とします。3以上の奇数番目の関-Bernoulli数が消えることを使って若干見やすくするためだけの仮定です)

第一の計算

母関数表示1より

\displaystyle \sum_{n=m}^{\infty}\left\{ {n \atop m} \right\}\frac{t^{n-m}}{n!}=\frac{1}{m!}\left(\frac{e^t-1}{t}\right)^m

が成り立ち、これは

\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}\left\{ {n+m \atop m} \right\}\frac{n!m!}{(n+m)!}\frac{t^n}{n!}=\left(\frac{e^t-1}{t}\right)^m

と書き換えられる。よって、

\displaystyle \left\{ {n+m \atop m} \right\} = \frac{(n+m)!}{n!m!} \times \mathrm{Coeff}\left(\left(\frac{e^t-1}{t}\right)^m; \frac{t^n}{n!}\right)

が成り立つ(最後のやつは t^n/n!の係数という意味)。まず、

\displaystyle \frac{(n+m)!}{n!m!} = \left(1+\frac{m}{1}\right)\left(1+\frac{m}{2}\right)\cdots \left(1+\frac{m}{n}\right) = 1+H_nm+(\text{higher terms})

m冪に展開できる。次に、\left(\frac{e^t-1}{t}\right)^mを攻める。冪級数の等号

\displaystyle \log \left(\frac{e^t-1}{t}\right) = \sum_{n=1}^{\infty}\beta_n\frac{x^n}{n!}

が成り立つ。理由: 微分計算

\displaystyle \frac{d}{dx}\log \left(\frac{e^t-1}{t}\right) = \frac{1}{t}\left(\frac{te^t}{e^t-1}-1\right)

と関-Bernoulli数の母関数表示

\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}B_n\frac{t^n}{n!} = \frac{te^t}{e^t-1}

より

\displaystyle \frac{d}{dx}\log \left(\frac{e^t-1}{t}\right) = \sum_{n=1}^{\infty}B_n\frac{t^{n-1}}{n!}

が成り立つので、両辺を積分すればよい

正整数 jに対して \beta_n^{(j)}

\displaystyle \beta_n^{(j)}:=\frac{1}{j!}\sum_{\substack{i_1+\dots+i_j=n \\ i_1, \dots, i_j \geq 1}}\frac{n!}{i_1!\cdots i_n!}\beta_{i_1}\cdots \beta_{i_j}

と定義すると、

\displaystyle \frac{1}{j!}\left\{\log\left(\frac{e^t-1}{t}\right)\right\}^j = \sum_{n=0}^{\infty}\beta_n^{(j)}\frac{t^n}{n!}

が成り立つので、

\displaystyle \left(\frac{e^t-1}{t}\right)^m = \exp \left(m\log\left(\frac{e^t-1}{t}\right)\right) = \sum_{j=0}^{\infty}\frac{m^j}{j!}\left\{\log\left(\frac{e^t-1}{t}\right)\right\}^j

t^n/n!の係数は \displaystyle \sum_{j=1}^{\infty}\beta_n^{(j)}m^jである(実質有限和であることに注意)。以上より、

\displaystyle \left\{ {n+m \atop m} \right\} = \beta_nm+(\beta_n^{(2)}+H_n\beta_n)m^2+(\text{higher terms}) −③

が示された。

第二の計算

母関数表示2より

\displaystyle \sum_{n=m}^{\infty}\left\{{n \atop m}\right\}t^{n-m} = \frac{1}{(1-t)\cdots (1-mt)}

が成り立ち、これは

\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}\left\{{n+m \atop m}\right\}t^n = \frac{1}{(1-t)\cdots (1-mt)}

と書き換えられる。よって、

\displaystyle \log \left(\sum_{n=0}^{\infty}\left\{{n+m\atop m}\right\}t^n\right) = \sum_{j=1}^m\log\left(\frac{1}{1-jt}\right)=\sum_{n=1}^{\infty}\Biggl(\sum_{j=1}^mj^n\Biggr)\frac{t^n}{n}

と計算できる。ここで、Faulhaberの公式より

\displaystyle \sum_{j=1}^mj^n =  \frac{1}{n+1}\sum_{i=0}^n\binom{n+1}{i}B_im^{n+1-i}=B_nm+c_n(m)

である(c_n(m)mについて3次以上)。従って、

\displaystyle \left\{{n+m \atop m}\right\} = \mathrm{Coeff}\left(\exp\left(\sum_{n=1}^{\infty}(\beta_nm+c_n'(m))t^n\right); t^n\right)

がわかった(c_n'(m):=c_n(m)/n)。\expを展開して右辺を計算すると、

\displaystyle  \left\{{n+m \atop m}\right\} = \beta_nm+\Biggl(\sum_{k=2}^{n-2}\beta_k\beta_{n-k}\Biggr)\frac{m^2}{2}+(\text{higher terms}) −④

を得る。

係数比較

③、④のm^2の係数を比較することにより、

\displaystyle \sum_{k=2}^{n-2}\beta_k\beta_{n-k} = 2(\beta_n^{(2)}+H_n\beta_n)

を得る。定義より

\displaystyle \beta_n^{(2)} = \frac{1}{2}\sum_{k=2}^{n-2}\binom{n}{k}\beta_k\beta_{n-k}

なので、これは三木の恒等式を示している。 Q.E.D.