§6 Factors of almost periodic functions に入ります。まず、上の-加法族の基本事項をまとめます。
上の-加法族はそのアトム達によって生成されます(の任意の元は有限個のアトムの和集合として表わすことができる)。
理由: で ならば
が成り立つことに注意すればよい*3。
アトムについては次の事実が基本的です:
証明. 前半の存在性は明らか。一意性はが共通部分を取る操作で閉じていることから従う。後半: より であるが、がアトムであることからこの包含関係は等号でなければならない。 Q.E.D.
よって、先ほど述べたの元を有限個のアトムの和集合として表す方法は一意的であることがわかります。つまり、上の-加法族とそのアトム全体のなす集合は一対一に対応します。の部分集合族が上の-加法族のアトム全体のなす集合になるための必要十分条件はその集合族がの分割を与えることに他なりません。
。
条件付き期待値作用素のwell-definedness(値域の正当性)は補題1から従います。自明な-加法族に対しては、が唯一のアトムなので
となります(定数関数)。
証明. 自己随伴性と期待値を保つこと以外は明らか。自己随伴性は に対して
が成り立つということであるが、書き下すと等号
を言っていて、これは補題1から従う。期待値の保存は
と計算で確かめられる(やはり補題1を使用している)。 Q.E.D.
証明. と分解されたとする(は-可測関数で はと直交する関数)。このとき、条件付き期待値作用素の基本性質と-可測関数の定義より
となり、を得る。逆に、分解
において は-可測関数であり、は
を満たす。 Q.E.D.
証明. 非自明な部分は
を示すことである(これが言えれば一意性も従う)。を任意に取る。は-可測なので、-可測でもあり、
が成り立つ。よって、条件付き期待値作用素の自己随伴性から
と計算でき、内積の非退化性から
が示された*4。Q.E.D.
証明の最後の式において とすれば
がわかります。
つまり、のアトム達の作るの分割とのアトム達の作るの分割から共通部分を取ることによって得られる分割の細分をアトムの集合とするような-加法族がです。
証明. をのアトムとする。このとき、或る と が存在してでなければならないことはすぐにわかる(の定義とがアトムであることを使う)。をとる。より、。同様に。よって、
であり、 と のアトムがのアトムとのアトムの共通部分として表すことができることが示された。
逆に、をそれぞれのアトムとして、とする(空でないことは仮定)。に含まれるのアトムを一つ選ぶと、前半の主張によりのアトムとのアトムが存在して、と書ける。をとると、であり、がのアトムであることから、である。同様に。よって、となって、がのアトムであることがわかる。 Q.E.D.
次の-ノルムに関する自明な評価は§7で用います。
証明. 補題2の分解より
と計算できるが、条件付き期待値作用素の自己随伴性と の直交性より
を得る。 Q.E.D.
最後に§10で用いる上の-加法族のシフトを考えます。
に対して
が成り立つので、も上の-加法族となることがわかります。
また、のアトムはのアトムを用いてと表される(もう少し正確にみるとに対して
が成り立つ)ので、補題4より上の-加法族とに対して
が成り立つことがわかります。
証明. を取って
と計算できる。 Q.E.D.