この記事でSzemerédiの定理の証明が完結します。
§6(その一)の補題3直後の式、Cauchy-Schwarzの不等式、前記事④より、任意のに対して
が成り立つ。従って、Markovの不等式より
である。に対してを
と定義する。このとき、各に対して
が成り立つ。理由: に対してを
と定める。すると、集合の包含関係
が成り立つ。理由: であれば、任意のに対して
及び
が成り立つので、三角不等式より
となって、がわかる。 従って、
と評価できる。なので*1、①より
であり、であることから所望の不等式を得る。
を満たす或るが存在して
または
が成り立てば、ダイコトミーの(エネルギー増加)が生じる。
証明. §6(その一)の補題6より
が成り立つので、
であれば、のシフト不変性*2から
が成り立つ。もし、この状況で
かつ
であれば、三角不等式によって
となって矛盾する。従って、
または
である。④が成り立つと仮定しよう。§7のエネルギーギャップ公式より
なので、であることから(エネルギー増加) が生じている。
③が成り立っている場合はの代わりにを考えれば、はと同じ複雑度を持つ-コンパクトな上の-加法族なので、所望の(エネルギー増加) が生じている。
が成り立っている場合は、上記の議論を として適用すればよい。 補題の証明終了
補題1よりに対して
かつ
であると仮定してよい。このとき、Cauchy-Schwarzの不等式によって
なので、Markovの不等式によって
が成り立つ。同様にして、
ここで、に対してを
と定義する。このとき、各に対して
が成り立つ。理由: に対してを
と定める。すると、集合の包含関係
が成り立つ。理由: であれば、任意のに対して
及び
が成り立つので、三角不等式によって
また、
及び
が成り立つので、三角不等式によって
故に、がわかる。 従って、
と評価できる。なので、⑤、⑥より
であり、であることから所望の不等式を得る。
ここで、次の性質に注意する: 任意のに対して が成り立つ。
理由:
と確認できる。
よって、
が成り立ち、②、⑦より
が得られる。従って、前記事⑤より
が示された。定義よりは-可測関数なので、(この証明の最後の方法により)帰納法の仮定を使える状況になっている。しかしながら、の複雑度がに依存していることから(成功)には至らない。そこで、をもっと小さくする。を
と定める。
証明. と仮定してよい(そうでなければ(エネルギー増加)が生じている)。もともと と仮定しているので
が成り立つ。すると、§7のエネルギーギャップ公式より
及び
が成り立つ。これらにChebyshevの不等式を用いると
及び
が得られる。とすると、
が成り立ち、更に
または
が成り立つ。⑪が成り立つときは、三角不等式より
となり、⑫が成り立つときは
となる。従って、⑨、⑩より が成り立つことが示された。
もう一つの不等式を証明する。仮定より
なので、で
が成り立つ。理由: 背理法で証明する。
と仮定すると
となる。が整数であれば
なので、が有界関数であることに注意して
となり、
となって矛盾する。が整数でなければ
であり、 なので
となり、であれば
となって矛盾する。
仮定1. とCauchy-Schwarzの不等式より
なので、Markovの不等式より
が得られる。こうして、
となり、 なので、
を得る。なので、 と結論づけられる。 補題の証明終了
補題2より
の場合を考えればよい。このとき、
が成り立つ。理由: 補題2の最後の式変形より
と計算できることからわかる。
定義からであり、は-可測関数。は-コンパクトな上の-加法族で複雑度は高々である。よって、§6(その三)より非負値有界な一様概周期関数 であって
を満たすものを取れる。すると、三角不等式によって
であり、
である。そこで、
が成り立つだけを小さくとっておけば、Thm 3.3の主張において
として帰納法の仮定を適用することができる。その帰結として
が得られる。注意: 帰納法の仮定からは直接的には
が得られるが、
より
なので、に対して
が成り立つ。そして、積分のシフト不変性とシフト作用素の基本性質から
である。 よって、前記事(⭐︎)及び⑧より、或る定数が存在して
と評価できる。そこで、を を満たすようにとっておけば
が得られる。これは回帰定理ダイコトミーの証明の完了を宣言している。 Q.E.D.
以上でSzemerédiの定理は完全に証明されました。それではGreen-Taoの論文に移りましょう。