§5 Gowers uniformity norms, and a generalized von Neumann theorem を二回に分けて読みます。この記事ではGowers一様性ノルムの定義を行います。Tao(2006)の方でも既に取り扱っていますが、Gowers内積を用いてGowers一様性ノルムを再定義し、Tao(2006)では省略していた三角不等式を証明します。
を次元立方体と呼ぶことにします。
例) の場合
すなわち、の成分が等しければ、である。このとき、内積の非負性が成り立つ。
証明. の場合に証明する(他の場合も同様)。のとき に対してと書くことにすれば、と書くことができ、Tao(2006) §4のvan der Corputの補題より
と変形できる。これは以上である。の場合も同様というか、van der Corputの補題の証明における変形そのものとなる。 Q.E.D.
特に、に対して である。この非負性から、Gowers内積を用いてGowers一様性ノルムを定義できる。
Tao(2006)で使ったシフト作用素を用いると
と書けるので、Tao(2006)で扱ったGowers一様性ノルムと同じものであることがわかります(こちらの論文では実数値関数しか考えていませんが)。
Gowers内積に対して成り立つ、次のCauchy-Schwarz型不等式は強力です:
証明. 補題1と同様の計算を行うと(のときは若干記述を変える必要があるが同様)、
を得る。についてCauchy-Schwartzの不等式を適用すると
となるが、最後の二つのルートの中にある期待値に対して補題1の証明の式の逆向きの変形を行えば、
が得られたことになる。ならば、これはGCS不等式を与えている。のときは、として、一般に
が成り立つことを同様に示すことができるので(のときは若干記述が異なる)、特に
及び
が成り立ち、先ほどの不等式と組み合わせることにより
と評価できる。この議論を繰り返していけば、最終的には任意のに対して
が現れ、GCS不等式の証明が完了する。 Q.E.D.
GCS不等式を用いればTao(2006)では省略したGowers一様性ノルムの三角不等式を証明できるだけでなく、他の性質についても別証明を与えることができます。
証明. なので
とすると、GCS不等式より
が得られる。一方、
なので、が示された。 Q.E.D.
証明. 非負性・斉次性は定義から明らか。
三角不等式: を任意にとる。Gowers内積は定義から多重線形性をもつので、GCS不等式より
と評価できる。よって、
が成り立つ。
非退化性: 補題2によって の場合に帰着される。の場合のGCS不等式は一般に
という形をしているので、とおいて と仮定すると、任意の関数 に対して
が成り立つ。この式を用いて、任意のに対して を示せばよい。を固定する。関数 を
と定義して とする。このとき、
なので
であり、なる に対しては
とはなり得ないことから
である。よって、①より が従う。 Q.E.D.
証明. 補題2より、のときに証明すればよい。また、の定義より 乗した
を示せばよい(は依存してよいことに注意)。この左辺は
と展開できるので、部分集合 に対して
を考える(の場合はこの期待値は)。これは、-線形形式条件が使える形である: 変数は、線形形式はに対するを考える。係数の作るベクトルに対する一次独立性条件は毎にの場所が異なることからわかる。
よって、上記期待値はであり、を動かすと
となる。 Q.E.D.