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数、特に整数に関する記事。

29179の各桁の総和は29179の二乗の各桁の総和に等しい

29179の各桁の数の総和は

2+9+1+7+9=28

ですが、29179^2=851414041の各桁の数の総和も

8+5+1+4+1+4+0+4+1=28

となっています。このような正整数は(10の冪のような自明な例を除いても)無数に存在します。

定理 (Hare-Laishram-Stoll) q \geq 2とする。q進法において、nの各桁の総和とn^2の各桁の総和が一致するようなqの倍数ではない正整数nが無数に存在する。

以下、簡単のためq \geq 6の場合に限定して定理の証明を行います。

準備

補題1 1 \leq b < q^k, a, k \geq 1とする(全て整数)。このとき、
\begin{align} s_q(aq^k+b) &= s_q(a)+s_q(b) \\ s_q(aq^k-b) &= s_q(a-1)+k(q-1)-s_q(b-1)\end{align}
が成り立つ。

証明. 一つ目の等式は自明。b-1=\sum_{i=0}^{k-1}b_iq^iと書く(q進展開)。このとき、一つ目の式とs_qの定義より

\begin{align} s_q(aq^k-b) &= s_q\left( (a-1)q^k+q^k-b\right) = s_q(a-1)+s_q(q^k-b) \\ &= s_q(a-1)+s_q\left(\sum_{i=0}^{k-1}(q-1-b_i)q^i\right) \\ &= s_q(a-1)+\sum_{i=0}^{k-1}(q-1-b_i) =  s_q(a-1)+k(q-1)-s_q(b-1) \end{align}

と二つ目の式も証明される。 Q.E.D.

(\cdot )_qq進表示を表し、その中ではe^k=\underbrace{e\cdots e}_kのように略記する。

補題2 k \geq 2, n \geq k+2, 0 \leq e \leq q-2とし、u:=( (q-1)^k0(q-1)^ne)_qとおく。このとき、
s_q(u^2) = (n+1)(q-1)+f(q, e)
が成り立つ。ただし、f(q, e) = s_q( (q-e)^2)+s_q(2(q-1)(q-e) )-s_q(2(q-e)-1)である。

証明.

u = (q^k-1)q^{n+2}+(q^n-1)q+e = q^{n+k+2} -(q-1)q^{n+1}-(q-e)

なので

u^2=q^{2n+2k+4}-2(q-1)q^{2n+k+3}+(q-1)^2q^{2n+2}-2(q-e)q^{n+k+2}+2(q-1)(q-e)q^{n+1}+(q-e)^2

が成り立つ。よって、補題1より

\begin{align} s_q(u^2) &= s_q(q^{n+k+2}-2(q-1)q^{n+1}+(q-1)^2q^{n-k}-2(q-e))\\ &\quad + s_q(2(q-1)(q-e)q^{n+1}+(q-e)^2) \\ &= s_q(q^{k+1}-2(q-1) )+ s_q( (q-1)^2q^{n-k}-2(q-e) ) +s_q(2(q-1)(q-e) )+s_q( (q-e)^2) \\ &= (k+1)(q-1)-s_q(2(q-1)-1)+s_q( (q-1)^2-1)+(n-k)(q-1)-s_q(2(q-e)-1) \\ &\quad +s_q(2(q-1)(q-e) )+s_q( (q-e)^2) \\ &= (n+1)(q-1)-s_q(2q-3)+s_q(q^2-2q)+f(q, e)\end{align}

と計算できる。s_q(2q-3)=s_q(q+q-3)=q-2, \ s_q(q^2-2q)=s_q(q-2)=q-2なので証明が完了する。 Q.E.D.

定理の証明

t \geq 10とし、k:=(5t-1)(q-1)+1とする。u, v

\begin{align} u &:= ( (q-1)^{t+2}0(q-1)^{2t-5})_q = q^{3t-2}-(q-1)q^{2t-5}-1 \\ v &:= ( (q-1)^t0(q-1)^{t+2}1)_q = q^{2t+4}-(q-1)q^{t+3}-(q-1)\end{align}

と定める。iを十分大きい整数とし、n:=(u0^iv)_qとおく。このns_q(n)=s_q(n^2)=kを満たすことを示す。そうすれば、iの任意性またはtの任意性によって所望の無限性が保証されることがわかる。n \equiv 1 \pmod{q}なので、nqの倍数ではない。また、構成から

s_q(n) = ( (t+2)+(2t-5)+t+(t+2))(q-1)+1= (5t-1)(q-1)+1 = k

である。よって、示すべきことはs_q(n^2)=kのみとなった。i \gg 0にとっているので、補題1から

s_q(n^2) = s_q(u^2)+s_q(2uv)+s_q(v^2)

とできる。補題1を使えば f(q, 0)=0, \ f(q, 1) = qは容易に確認できるので、補題2より

s_q(u^2) = (2t-4)(q-1), \quad s_q(v^2) = (t+3)(q-1)+q

がわかる。s_q(2uv)を計算したい。

\begin{align}uv&=q^{5t+2}-(q-1)q^{4t+1}-(q-1)q^{4t-1}+(q-1)(q-2)q^{3t-2}-q^{2t+4}+(q-1)^2q^{2t-5}\\ &\quad +(q-1)q^{t+3}+(q-1)\end{align}

と展開できるので、補題1を使って

\begin{align} s_q(2uv) &= s_q(2q^{t+3}-2(q-1)q^2-2(q-1) ) \\ &\quad + s_q(2(q-1)(q-2)q^{3t-2}-2q^{2t+4}+2(q-1)^2q^{2t-5}+2(q-1)q^{t+3}+2(q-1) ) \\ &= 1+(t+3)(q-1)-s_q(2(q-1)q^2+2q-3) \\ &\quad + s_q(2(q-1)(q-2)q^{t+3}-2q^9+2(q-1)^2)+s_q(2(q-1)q^{t+3}+2(q-1) ) \\ &= 1+(t+3)(q-1)-(s_q(2(q-1) )+s_q(2q-3) ) \\ &\quad +s_q(2q^2-6q+3)+(t+3)(q-1)-s_q(2q^9-2(q-1)^2-1)+2s_q(2(q-1) )\\ &= 2+2(t+3)(q-1)+s_q(2(q-3)q+3)-(1+9(q-1)-s_q(2(q-1)^2) ) \\ &= (2t-1)(q-1)\end{align}

と計算できる。よって、

s_q(n^2) = (2t-4)(q-1)+(2t-1)(q-1)+(t+3)(q-1)+q = (5t-1)(q-1)+1 = k

が示された。 Q.E.D.

素数の場合

冒頭であげた29179は素数です。
nを素数に限定すると、二乗しても各桁の総和が変わらないようなものは

\begin{align}&19, 199, 379, 739, 1747, 1999, 3169, 3259, 4519, 4789, 4951, 5689, 5851, 5869, 6481, \\
&6679, 7489, 8389, 9199, 10729, 12799, 12889, 13789, 14149, 14851, 14869, 15679, \\
&17389, 17497, 17659, 17929, 22699, 26479, 26497, 26839, 28297, 28549, 29179\end{align}

が見つかります。果たして、他にもあるでしょうか?