Stokesの定理の離散版(の一つ)について軽くまとめます。通常のStokesの定理については
をご覧ください*1。
超立方体と差分形式
を正整数とし、次元Euclid空間を考える。
と に対して、を
で定める。を固定して全てのを考えた達のなす集合をとし、の有限個の元の-線形結合全体のなす加群をとする。ただし、と考える。
とに対して、を
と定義する。
証明. としてを示せばよい。
と定義から計算できる。 Q.E.D.
差分-形式を線形に延ばした関数も同じ記号で表す:
差分-形式は各 ()に対する関数によって決まる()。形式的に
と書いてもよいが、ここでは深入りしない。
証明. として、を示す。
と定義から計算できる。 Q.E.D.
離散Stokesの定理
証明. 主張はであり、線形性からのときに示せばよい。そうして、定義から
と計算される。 Q.E.D.
離散微積分学の基本定理=望遠鏡和
Stokesの定理が微積分学の基本定理の一般化であったのに対応して離散版Stokesの定理は望遠鏡和の一般化になっているが、導出に望遠鏡和を用いる。
として、差分-形式 をとってと記す。とすると
であり、
なので、離散版Stokesの定理は
を意味する。
離散Greenの定理
次に、離散版Greenの定理を記述する。
それは、の場合である。
左下のコーナーがであるような一辺の長さがの正方形(内部も含める)をと表す。このような正方形を合併(とする)が短連結であるように有限個選ぶ。
の境界をとって得られる閉曲線(半時計周り)をとする。
からへの有向線分を、逆向きのものを、からへの有向線分を、逆向きのものをと表す。
をこれら四種類の有向線分によりに分割する。
を長さの(端点が格子点であるような)有向線分全体のなす集合からへの関数とし、, と略記する。このとき、離散Stokesの定理を定義通り書き下すと
となり、これが離散版Greenの定理である。曲線に沿った和が領域内の正方形毎の和と一致している。
参考文献
- G. Labelle, A. Lacasse, Discrete Versions of Stokes’ Theorem Based on Families of Weights on Hypercubes, Discrete Geometry for Computer - Imagery, 15th IAPR International Conference, (2009), Proceedings.
- E. L. Mansfield, P. E. Hydon, Difference forms, Found. Comp. Math. (2007).
- A. N. Hirani, Discrete Exterior Calculus, Thesis.
*1:tsujimotterさんお誕生日おめでとうございます!!