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数、特に整数に関する記事。

クラトフスキの閉包・補集合定理

定理 (Kuratowski, 1922) (X,\mathcal{O})を位相空間とする。このとき、Xの部分集合Aに対して閉包および補集合を取る操作を繰り返しても高々14個の集合しか得られない。また、実際に相異なる14個の集合が得られる例がある。

この定理の証明を解説します。

Kuratowskiモノイド

位相空間(X,\mathcal{O})に対する閉包、補集合を取る写像 2^X\to 2^Xをそれぞれ b, cと表す*1。また、\mathrm{id}\colon 2^X\to 2^Xは恒等写像とする。合成を積、\mathrm{id}を単位元とし、b,cが生成するモノイドをK(X,\mathcal{O})と表すことにする。

b^2=b, c^2=\mathrm{id}である。

f,g \in K(X,\mathcal{O})に対して大小関係 f\leq gを、任意のA\subset Xに対して f(A)\subset g(A)が成り立つことと定める。f\leq gかつ f\geq gであれば f=gである。

bは包含順序を保つので (A\subset B\subset X \Longrightarrow b(A)\subset b(B))、g_1\leq g_2であれば bg_1\leq bg_2が成り立つ。

cは包含順序を逆転させるので (A\subset B\subset X \Longrightarrow c(A)\supset c(B))、g_1\leq g_2であれば cg_1\geq cg_2が成り立つ。

内部を取る写像をiとすると、i=cbcである。任意の f\in K(X,\mathcal{O})に対して if\leq fである。

補題 bcbcbcb=bcbである。

証明. cbcbcb=ibcbなので、

cbcbcb \leq bcb.

よって、bの性質より

bcbcbcb\leq bbcb=bcb \tag{1}

が成り立つ。cbcb=ib\leq bなので、bの性質より

bcbcb\leq bb=b.

cの性質より、

cbcbcb\geq cb.

よって、bの性質より

bcbcbcb\geq bcb \tag{2}

が成り立つ。(1)(2)よりbcbcbcb=bcbが示された。 Q.E.D.

高々14個であることの証明。

命題 K(X,\mathcal{O})=\{\mathrm{id},b,c,bc,cb,bcb, cbc,bcbc,cbcb,bcbcb,cbcbc,bcbcbc,cbcbcb,cbcbcbc\} である。

証明. b^2=b, c^2=\mathrm{id}という性質からK(X,\mathcal{O})\mathrm{id}以外の任意の元はbcを交互に繰り返す文字列に還元される。bcbcbcbおよび8文字以上を使うこのような文字列は補題によって必ず長さを短く還元できるので証明が完了する。 Q.E.D.

14個得られる実例

X=\mathbb{R}として通常の位相を考える。

A:=(0,1)\cup (1,2)\cup \{3\} \cup ([4,5]\cap\mathbb{Q})

とせよ。

\begin{align}
A&=(0,1)\cup (1,2)\cup \{3\} \cup ([4,5]\cap\mathbb{Q})\\
b(A)&=[0,2]\cup\{3\}\cup[4,5]\\
c(A)&=(-\infty,0]\cup\{1\}\cup[2,3)\cup(3,4)\cup([4,5]\setminus\mathbb{Q})\cup (5,\infty)\\
bc(A)&=(-\infty,0]\cup\{1\}\cup[2,\infty)\\
cb(A)&=(-\infty,0)\cup(2,3)\cup(3,4)\cup(5,\infty)\\
bcb(A)&=(-\infty,0]\cup[2,4]\cup[5,\infty)\\
cbc(A)&=(0,1)\cup(1,2)\\
bcbc(A)&=[0,2]\\
cbcb(A)&=(0,2)\cup(4,5)\\
bcbcb(A)&=[0,2]\cup[4,5]\\
cbcbc(A)&=(-\infty,0)\cup(2,\infty)\\
bcbcbc(A)&=(-\infty,0]\cup[2,\infty)\\
cbcbcb(A)&=(-\infty,0)\cup(2,4)\cup(5,\infty)\\
cbcbcbc(A)&=(0,2)
\end{align}

の14個は全て相異なっている。

*1:閉包(closure)、補集合(complement)ともに頭文字はcであるが、閉包の方はよく\overline{A}で表すので、barのbを採用した。