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数、特に整数に関する記事。

Grahamの第二論文を読む ー③

過去の記事を読むには上のカテゴリーをクリックしてください。前の記事で導入した記号・用語については説明を省略しています。

前回示した定理2によって、幾つかの仮定のもと、\mathrm{Ac}(S)を具体的に書き表すことが出来ました。その仮定におけるmの条件を強めることによって、定理2に現れる各半開区間は非交差(disjoint)になることを示せます。

定理3 S=\{a_n\}_{n=1}^{\infty}を正の実数列であって、次の二条件を満たすようなものとする:

  • \displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n = 0.
  • 自然数mが存在して、n < mならばa_nSにおいて滑らかに置換可能ではなく、n \geq mならばa_nSにおいて滑らかに置換可能である。

このとき、定理1による等式

\displaystyle \mathrm{Ac}(S) = \bigcup_{a \in P_{m-1}}[a, a+\sigma )
の右辺は、丁度2^{m-1}個の長さ\sigmaの半開区間の非交差和になっている。

証明. m=1のときは\mathrm{Ac}(S)=[0, \sigma)であり、主張は成立している。以下、m \geq 2とする。

\displaystyle a=\sum_{k=1}^ua_{i_k}, \quad b=\sum_{k=1}^va_{j_k}

1 \leq i_1 < \cdots < i_u \leq m-1, \quad 1\leq j_1 < \cdots < j_v \leq m-1

を満たすようなP_{m-1}の元とし、a \geq bかつ、abは形式的に異なる和であると仮定する(すなわち、(i_1, \dots , i_u) \neq (j_1, \dots, j_v)a=bであってもよい)。このとき、

i_l \neq j_lなる最小のlがとれる。 −①

または

i_k=j_k, \ (k=1, 2, \dots, v)かつu > v。 −②

のいずれかが成り立つ。

①の場合

\displaystyle a=\sum_{k=1}^ua_{i_k} = \sum_{k=1}^{l-1}a_{j_k}+\sum_{k=l}^ua_{i_k} > \sum_{k=1}^{l-1}a_{j_k} + \sum_{k=1}^{\infty}a_{i_l+k}

と評価できる。最後の評価はa_{i_l}Sにおいて滑らかに置換可能ではないことから従う。i_l \neq j_lなので、i_l \geq j_l+1j_l \geq i_l+1が成り立つ。もし、i_l \geq j_l+1ならば

\displaystyle a_{j_l} > \sum_{k=1}^{\infty}a_{j_l+k} \geq \sum_{k=l}^ua_{i_k}

から b > aとなって矛盾する。従って、j_l \geq i_l+1であり、

\displaystyle \sum_{k=1}^{l-1}a_{j_k}+\sum_{k=1}^{\infty}a_{i_l+k} = \sum_{k=1}^{l-1}a_{j_k} + \sum_{n=i_l+1}^{m-1}a_n + \sigma \geq b+\sigma

を得る。すなわち、a \geq b+\sigma

②の場合

\begin{align} a &= \sum_{k=1}^ua_{i_k}=\sum_{k=1}^va_{i_k}+\sum_{k=v+1}^ua_{i_k} \\ &> \sum_{k=1}^va_{j_k}+\sum_{k=1}^{\infty}a_{i_{v+1}+k} \quad (a_{i_{v+1}}\text{は}S\text{において滑らかに置換可能でない。}) \\ &\geq b+\sigma \quad (i_{v+1}+1 \leq i_u+1 \leq m)\end{align}

と評価できる。こうして、どちらの場合であってもa \geq b+\sigmaであることが示された。つまり、この定理の条件下では、P_{m-1}の元abが形式的に異なる和であれば値も異なることが分かり、更に互いの距離が\sigma以上離れていなければならないことが分かった。よって、P_{m-1}の元の個数は2^{m-1}個であり、a, b \in P_{m-1}a \neq bであれば、

[a, a+\sigma) \cap [b, b+\sigma) = \emptyset

である。これで定理の証明が完了する。 Q.E.D.


\mathrm{Ac}(S)を決定する一般論が十分な形で得られたので、E(n)^{-1}のケースに適用しましょう。

\displaystyle \max \left\{k \in \mathbb{N} \left| k^{-n} > \sum_{j=1}^{\infty}(k+j)^{-n}\right\}\right.

が存在すれば、それをt_nと定義し、存在しなければt_n:=0とします。調和級数が発散することからt_1=0であり、n \geq 2ならば

\displaystyle 1 > \sum_{j=2}^{\infty}\frac{1}{j^n}

が成り立つので、t_n \geq 1です。Grahamの第二論文を読む ー①の補題3よりt_n < (2^{\frac{1}{n}}-1)^{-1}が成り立ちます。同記事で示した補題2よりk \leq t_nなるkE(n)^{-1}において滑らかに置換可能ではないので、定理2および定理3より次が成り立ちます:

定理4 P:=P(\{k^{-n}\}_{k=1}^{t_n})とすると、\#P=2^{t_n}であり、
\displaystyle \mathrm{Ac}(E(n)^{-1}) = \bigsqcup_{a \in P}[a, a+\sum_{k=1}^{\infty}(t_n+k)^{-n})
が成り立つ。

これと、定理1を合わせれば次の結論が得られます:

主定理 nを正の整数とする。t_nn=1ならばt_1:=0n \geq 2ならば
\displaystyle k^{-n} > \sum_{j=1}^{\infty}(k+j)^{-n}
を満たすような最大の正整数kと定義する。また、Pn=1のときはP:=\{0\}n \geq 2のときは
\displaystyle P:=\left\{\left.\sum_{j=1}^{t_n}\varepsilon_jj^{-n}\right| \varepsilon_j = 0 \ \text{or}\  1\right\}
と定める。このとき、与えらた正の有理数が相異なる正のn乗数の逆数の有限個の和として表されるための必要十分条件は、その有理数が
\displaystyle \bigsqcup_{a \in P} [a, a+\sum_{k=1}^{\infty}(t_n+k)^{-n})
に属することである。

主定理においてn=1の場合を考えると、エジプト分数とグラハムの定理で紹介したFibonacci-Sylvesterの定理になっていることが分かります。主定理においてt_nの値のみが非自明ですが、上からの評価が与えられているため、与えられたnに対してt_nを計算することは有限の時間で実行可能です。

補題4 t_2=1である。

証明 t_2 \geq 1は既に確認済みであり、

\displaystyle \sum_{j=3}^{\infty}\frac{1}{j^2} = \frac{\pi^2}{6}-1-\frac{1}{4}≒0.39493406684 > \frac{1}{2^2}

なので、t_2=1が確定する。

これで、遂にGrahamの定理の証明が完了します!!!

系1 正の有理数が平方数の逆数の有限個の和として表されるための必要十分条件は次の集合に属することである:
\displaystyle \left( 0, \frac{\pi^2}{6}-1 \right) \cup \left[ 1, \frac{\pi^2}{6} \right) .

証明. 補題4よりt_2=1なので、P=\{0, 1\}であり、

\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}(t_2+k)^{-2} = \frac{\pi^2}{6}-1

である。よって、主定理より系1が得られる。 Q.E.D.

三乗数の場合もやってみましょう。

補題5 t_3=2である。

証明. Apéry定数\zeta (3)の近似値は\zeta (3) = 1.20205690315959428539\dotsであった*1

\displaystyle \sum_{j=3}^{\infty}\frac{1}{j^3} = \zeta (3) - 1- \frac{1}{8}≒0.07705690315 < \frac{1}{8}=0.125,

\displaystyle \sum_{j=4}^{\infty}\frac{1}{j^3} = \zeta (3) - 1- \frac{1}{8}-\frac{1}{27}≒0.04001986612 > \frac{1}{27}=0.0370370370\dots

よりt_3=2が従う。 Q.E.D.

系2 正の有理数が正の立方数の逆数の有限個の和として表されるための必要十分条件は次の集合に属することである:
\displaystyle \left( 0, \zeta (3)-\frac{9}{8} \right) \cup \left[ \frac{1}{8}, \zeta (3)-1\right) \cup \left[ 1, \zeta (3)-\frac{1}{8} \right) \cup \left[ \frac{9}{8}, \zeta (3)\right).

証明. 補題4よりt_3=2なので、P=\{0, 1/8, 1, 9/8\}であり、

\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}(t_3+k)^{-3} = \zeta (3)-\frac{9}{8}

である。よって、主定理より系2が得られる。 Q.E.D.


次回、Grahamの定理シリーズ最終回!!