インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

定理解説

ガウス・ルジャンドルの三平方の定理

私の整数好きを決定付けた本があります。水上 勉 (著), 黒川 信重 (監修)『チャレンジ! 整数の問題 199』単行本 – 2005/4, 日本評論社私は高校生のときにこの本を夢中になって読みました。思えば、高校生の私をワクワクさせてくれたこの本の続きを書いている…

ヤコビ記号

Jacobi記号について簡潔にまとめます。Legendre記号、平方剰余の相互法則についてはintegers.hatenablog.comをご覧ください。定義 を正の奇数とし、をと互いに素な整数とする。このとき、Jacobi記号 を次のように定義する: まず、とし、とが素因数分解され…

ミンコフスキーの凸体定理

所謂"数の幾何学"における基本的定理である、Minkowskiの凸体定理を紹介します。を正整数とし、この記事ではの格子としてのみを扱います。また、体積について厳密にはRiemann積分論などを用いて証明する必要がある事実を断りなしに使います。Minkowskiの凸体…

算術級数の素数定理

昨年、Dirichletの算術級数定理の証明を紹介しました。Dirichletの算術級数定理 を互いに素な正整数とする。 このとき、 の形で表される素数は無数に存在する。integers.hatenablog.com特殊な形に限定した場合の素数の無限性は未解決問題が多いのですが、算…

相異なるr個の素数の積で表されるような数の個数に関するランダウの定理

以前、Ramanujanの不等式integers.hatenablog.comを紹介した際に証明を割愛したLandauの定理定理 (Landau) 、は正の整数とし、を相異なる個の素数の積として表せる以下の数の個数とすると、が成り立つ。の証明を紹介します。 記号 幾つかの補助的関数を導入…

Weyl Differencing

Weyl DifferencingによってWeylの一様分布定理を二次式の場合に拡張しましょう。記号: 実数に対して、に一番近い整数との距離をと表し*1、とします ()。補題1 を任意の実数とし、を正の整数とする。このとき、が成り立つ。証明. 三角不等式よりが成り立つ。…

ソフィー・ジェルマンの定理

Fermatの最終定理に関するSophie Germainの定理とその証明を解説します。前回の記事でSophie Germainによるグランドプランが失敗に終わったことを紹介しました:integers.hatenablog.comしかし、彼女は転んでもただでは起きません。奇素数を固定します。グラ…

フィボナッチ数とp進数

を番目のFibonacci数とします:integers.hatenablog.comに対して、二つのFibonacci数の商からなる集合をと定義します。黄金比をとするとき、Binetの公式よりの元はにおいての整数乗の近くにしか分布しません。一方、次が成り立ちます:定理*1 任意の素数に対…

パワフル数に関するMcDanielの定理の証明

パワフル数に関する記事integers.hatenablog.comで紹介したMcDanielの定理定理 (McDaniel 1982) でない任意の整数に対して、その数を二つの互いに素なパワフル数で表す表し方が無数に存在する。の証明を紹介します。を平方数でないような整数とし、正整数に…

孙智伟さんによる新作定理

を以下の素数の個数、を番目の素数とします。なのでが成り立ちます。また、よりが成り立ちます。こういったものは数遊びですが、次のようにまとめると数学の定理らしくなります:定理1 を以上の整数とする。このとき、或る正の整数が存在してが成り立つ。こ…

Golombの定理

素数個数関数に関するGolombの定理を紹介します。証明に使うのは –①のみです。これは素数定理から出ますが、素数定理を用いることなく初等的に導出できる点には注意しておきます*1。は番目の素数を表します。定理 (Golomb, 1962) を以上の任意の整数とする。…

高木関数

今、目の前に高木貞治博士の論文集があります。高木貞治博士が28歳ぐらいのときに出版された論文T. Takagi, A simple example of a continuous function without derivative, Proc. Phys. Math. Japan, (1903) Vol. 1, pp. 176-177.は一ページ半に満たないも…

ウェダーバーンの定理

環と言ったら可換環のことを指すというようなことはなくて、普通は非可換環も含めて環なので、可換環しか扱わないような場合は最初に明言する必要があります。を持つかなども基本的には書かなければなりません。一方、体と言ったら普通は可換体を表します。…

Zsigmondyの定理

高校数学の美しい物語さんの記事mathtrain.jpを初めて見たとき、一つだけ知らない定理がありました。それがZsigmondyの定理です:Zsigmondyの定理 を互いに素な自然数とし、を以上の整数とする。このとき、およびかつがの冪であるという例外ケースを除いて、…

「√2+√3+√5+√7は無理数である」など

この記事は日曜数学アドベントカレンダーの17番目の記事です。http://www.adventar.org/calendars/1777www.adventar.org昨日の記事はToshiki Takahashiさんのリープグラフと複素確率 | Advent Calendar 2016 | DIY Mathematics |でした。 今日は、キグロさん…

関-ベルヌーイ数の第二種Stirling数を用いた公式

関-Bernoulli数は第二種Stirling数を用いて表すことができます。関-Bernoulli数については関-ベルヌーイ数 - INTEGERSを、第二種Stirling数についてはBell数の母関数表示と第二種Stirling数 - INTEGERSを参照してください。関-Bernoulli数は一つ目の記事で紹…

局所有限性に関する補題

定義 位相空間の部分集合族が局所有限であるとは、の各点が高々有限個のの元としか共通部分を持たないような近傍を持つときにいう。補題1 を位相空間、をの局所有限な部分集合族とし、の元は全て閉集合であるとする。このとき、も閉集合となる。証明.をの補…

ラッキー数定理

この記事ではラッキー数を紹介します。Wikipediaでは幸運数という訳語で紹介されていますが、Eulerの幸運数とは異なるものです。Eulerの幸運数についてはtsujimotter.hatenablog.comを参照してください。 ラッキー数の定義 素数はEratosthenesの篩という篩に…

ディリクレの算術級数定理のL関数を用いない証明

記念すべき250記事目ということで、整数論における極めて有名な次の定理の証明を解説します:Dirichletの算術級数定理 を互いに素な正整数とする。 このとき、 の形で表される素数は無数に存在する。 初等的証明が知られているケース 算術級数定理の証明を知…

オイラーの五角数定理の証明

Eulerの五角数定理は非常に美しい定理です。収束半径はですが、形式的冪級数の等式と考えるのがよいでしょう。この定理は過去の記事で一度使ったことがあります: integers.hatenablog.comEulerの五角数定理より偉い定理であるJacobiの三重積というものがあ…

ディガンマ関数とリーマンゼータ

ディ(ダイ)ガンマ関数はで定義されます。ガンマ関数については階乗とガンマ関数 - INTEGERSを参照してください。 Weierstrassの無限積表示の対数をとると(ガンマ関数の極は避ける) ー①が得られ、微分することにより ー②が得られます*1。更にならが成り立つの…

アペリー数の超合同式

8/24に投稿されたRosenのプレプリントでApéry数に関する次の美しい超合同式*1が示されています:定理 (Rosen) 以上の素数に対して*2 が成立する。ここで、はApéry数を表す。Apéry数については integers.hatenablog.com を参照してください。1980年出版の論文…

ジョルダンのトーシェント関数

Jordanのトーシェント関数は次のように定義されます:定義1 を自然数とするとき、でを定義し、Jordanのトーシェント関数と呼ぶ。と書けば素数です。のときEulerのトーシェント関数に一致します()。名前についているJordanはJordanの曲線定理などで有名なあ…

リーマンの再配列定理

の証明 級数を考える。これはに収束する: mathtrain.jp となるので、両辺をで割ることによってが得られる。 ちなみに、他にもたくさんのの証明が知られています: 絶対収束と条件収束 冒頭の証明のどこが間違っているかというと、(⭐︎)の行を等号で結んでい…

リーマンゼータ関数の級数表示による解析接続

リーマンゼータの解析接続には様々な証明が知られています。このブログでも、Riemann自身による二つの証明のうち、テータ関数を使う方を紹介しました: integers.hatenablog.comRiemannのもう一つの証明はコンタワー積分を使うもので、どちらも関数等式も同…

奇跡の漸化式〜creative telescoping〜

アペリーの定理の証明におけるkeyステップを別記事解説

数列の漸近挙動に関するポアンカレの定理

数列の漸近挙動に関するポアンカレの定理

一年生の夢とLucasの合同式

一年生の夢(Freshman's dream)とはのことを言います。中学生が展開を習ったときにが正しいところをと間違えてしまうことはよく見かける光景だと思います。ちなみに二年生の夢(sophomore’s dream)もあるのですが、こちらは正しい式です:mathtrain.jp 一年生…

クロネッカーの稠密定理とワイルの一様分布定理

この記事では有名なKroneckerの稠密定理とWeylの一様分布定理を解説します。高木貞治『解析概論』において (証明はむつかしいが, が無理数ならば, 単位円周上の定点を起点として同じ向きに長さがなる弧を取れば, 点は円周上に稠密に分布される). という記述…

ストーン・ワイエルシュトラスの定理

Weierstrassの多項式近似定理ワイエルシュトラスの多項式近似定理 - INTEGERSは1937年にStoneによって拡張されました(通称Stone-Weierstrassの定理)。それを述べるために言葉の導入から始めましょう。をコンパクト位相空間とします。このとき、連続関数空間…