はに最も近い整数。なお、正則素数である。
Siegelの予想
正則素数の無限性は未解決ですが、素数全体における割合が、すなわち約61%であると予想されています(Siegelの予想)。
tsujimotter氏の記事
tsujimotter.hatenablog.com
において
Wikipedia の情報によると Siegel が1964年に「正則素数の割合は全体のである」と予想しているそうです。予想の根拠が気になります。
と書かれています。根拠の一つはデータなのですが、データだけでが出てくることまでは普通は予想できませんよね。確かに気になります。というわけで、この記事ではheuristicな議論によって、どうしてが出てくるかをなんとなく理解してみましょう。
ちなみに、ですが、以下の素数における正則素数の割合はだそうです。
正則素数が関係する過去の記事を紹介しておきます:
関-ベルヌーイ数 - INTEGERS
リーマンゼータ関数 - INTEGERS
非正則素数 - INTEGERS
tsujimotter氏の記事の補足: 正則素数とFLTのファーストケース - INTEGERS
の極限公式
反復試行の確率
忘れた方は例えば
反復試行の確率の公式といろんな例題 | 高校数学の美しい物語
で復習してみましょう。
非正則指数
でした(は関-Bernoulli数。過去の記事ではではなく、既約分数表示した際の分子と書いていました。面倒なので、今後はを用います。これは、で合同式を考えることによって正当化されます。なお、がの元であることはvon-Staudt-Clausenの定理から分かります)。そして、非正則素数でないような奇素数のことを正則素数と言いました。今回は更に踏み込んで、奇素数に対して非正則指数を導入しましょう:
つまり、正則素数であり、非正則素数です。が大きい程、高度に非正則であると考えることが出来ます。
このとき、Siegelの予想は次のように拡張できます:
この予想において、とした場合()がSiegelの予想です。次の節で、この予想をheuristicな議論で導いてみましょう。
Heuristicな議論
奇素数に対して、がの倍数である確率はと見做すことにします。そうすると、となる確率は反復試行の確率を用いて
と求めることができます。そして、極限値が存在すれば、十分大きい全ての素数についてとなる確率はその値であると考えてもある程度妥当だと思えます。そして、その値をと見做すことも妥当です。
において、
であり、
なので、
得ます。よって、
と予想値が得られました*1。
*1:この論法をSiegelの予想()のときに限って書き下すととても簡単にが出ることが分かります。