有理数と無理数を分かつもの。それは「近似の精度」である。
Dirichletの近似定理 を実数とする。このとき、任意の自然数に対して整数が存在して、およびが成り立つ。
証明. を
と分ける。を考える。このとき、鳩ノ巣原理からが存在して、とは同じ小区間に属する。すなわち、および
が成り立つ。よって、, とすればよい。 Q.E.D.
定義 有理数が実数のDirichlet近似であるとは、が成り立つときにいう。
補題 実数のDirichlet近似であって、分母がであるようなものは高々二個しか存在しない。
証明. がのDirichlet近似ならば
が成り立つ。よって、これを満たすは高々二個であることがわかる。 Q.E.D.
定理1 実数が有理数ならば、のDirichlet近似は有限個しか存在しない。
証明. 、をのDirichlet近似とする。このとき、
である。従って、となり、のDirichlet近似の分母の取り得る値は有限個しか存在しない。補題と合わせると所望の結果を得る。 Q.E.D.
定理2 実数が無理数ならば、のDirichlet近似は無数に存在する。
証明. のDirichlet近似が有限個しか存在しなかったと仮定する。すると、任意ののDirichlet近似に対して
が成り立つような自然数が存在する(は無理数なので、は常に正であることに注意)。このに対してDirichletの近似定理を適用すると、であって、および
を満たすものが存在する。このとき、
となって、はのDirichlet近似であることがわかる。すると、、は矛盾する。従って、のDirichlet近似は無数に存在する。 Q.E.D.