関-Bernoulli数に関するJohnsonの手法を解説しました:
上記記事ではJohnsonの基本進関係式
から関-Bernoulli数に関する種々の 整数性を導出したり、還元した式を変形することによって幾つかの古典的合同式を証明したりしました。
しかし、せっかくなら既存の公式の再証明を与えるだけではなく、新しい非自明な公式を与えたいという欲求が生まれます。そこで、Johnsonの基本進関係式を今度は還元し、非自明な合同式を得ることを目指してみましょう。ここでは三木先生の論文に沿って計算を実行しますが、果たして新しい合同式は得られるでしょうか?それとも、やはり既存の合同式しか得られないのでしょうか?
は以上の素数とし、整数 に対してFermat商 を
と定義し、を
とします。Fermatの小定理より であり、
なので Johnsonの手法に関する記事で示した定理よりです。Faulhaberの公式
を思い出しておきます。
Fermat商に関する合同式
は関-Bernoulli数を用いた次のような表示を持ちます。
証明. より
また、Faulhaberの公式より
であり、なので
が成り立つ。①、②より
を得る。von-Staudt−Clausenの定理よりに対して であり、でもあるので、③からにおける合同式
が得られる(で一回割っていることに注意)。これより、として使うことによって
を得るが、Faulhaberの公式より
なので、に注意して
が示された。これを③に代入すればよい。 Q.E.D.
冪乗和に関する合同式
証明. Faulhaberの公式より
であるが、Johnsonの手法の記事の補題と定理1より に対して かつ なので、であれば
が成り立つ。これとvon-Staudt−Clausenの定理より主張する合同式が全て得られる。 Q.E.D.
の計算
とし、
と記号を導入します。は第調和数。
straightforwardですが若干の計算を伴います。
証明. 補題1より
が成り立つ。右辺を七つの項に分けて、補題2を使って丁寧に整理する。
一つ目: は奇数で なので、
二つ目: は偶数なので、
三つ目: がの倍数になるのはのときのみなので、であれば、であり
が成り立つ(これはが奇数でも成り立っていることに注意*1 )。よって、より
また、
なので、
が成り立つ。
四つ目: は奇数なので、
五つ目: は偶数で、なので、
六つ目: がの倍数になるのは のときのみなので、であれば
である。また、のときはなので、
七つ目: がの倍数になるのはのときのみなので、であれば
である。のときは
なので、
以上により、
が得られた。二項係数について
なので、
と変形できる。ここで、がになっている部分は最後の和ののところから持ってきていることに注意(のところは消える)。
さて、Johnsonの手法の記事で証明したKummer合同式より、でが偶数のとき
すなわち
なので、
である。更に、
なので(最後の変形は)、二通りの表現を平均化することにより
と変形できる。また、とすれば
であり、
なので、平均化することによって
を得る。⑤、⑥、⑦より
が得られた。最後に、
なので、⑧と合わせて④に代入することによって証明が完了する。 Q.E.D.
の計算
証明. 補題1より なる整数に対して
が成り立つので、
であり、
なので、
を得る。この右辺を六つの項に分けて、補題2を用いて整理する。
一つ目〜三つ目: よりなので、一つ目から三つ目については全てで割り切れることがわかる。
四つ目: がの倍数になるのはのときのみなので、であれば
のときは なので、結局
五つ目: がの倍数になるのはのときのみなので、であれば
のときは
なので、より
六つ目: がの倍数になるのはのときのみで、そのときは
であり、そうでないときは
よって、
を得る。
なので、に注意して
以上をまとめると証明が完了している。 Q.E.D.
Johnsonの手法による帰結
を偶数として、を素数とします。はTeichmüller指標で、なる整数に対して進整数はで定義されていたことを思い出します。
証明. であり、
なので、
すなわち、
が得られる。これに、を組み合わせればよい。 Q.E.D.
それでは冒頭で述べた通り、今までの計算を元にJohnsonの基本進関係式から新たな合同式が得られるかを試しましょう。
今、であり、は単数、であるため、Johnsonの基本進関係式を還元することにより
が得られます。補題5より、これは
とFermat商を使って書き換えられます。これに補題3、4の結果を代入して関-Bernoulli数に関する合同式に変換すると、
となります。の部分が消えるため、これは合同式に落ちますが、整理すると
という合同式が得られたことになります。これが非自明な合同式を与えてくれていれば嬉しいわけですが、驚くべきことに左辺はに依存していません!!!!!!
との項が見事に全て消えているのです。条件を満たすような素数は無数に存在するため、非自明な「合同式」を得たいという最初の欲求を無視して、想定外の非自明な「恒等式」
が得られたことになります!!!
これが我々人類と三木の恒等式との最初の出会いです。
*1:がの倍数になるのはのときのみで、そのとき であるから、である。