Pythagoras数
はよく知られていますが、やのことをPythagoras数またはPythagorasの三つ組と呼びます。
Hilbertの定理90
が有限次Galoisであるとき、ノルム準同型写像を
と定義します。
証明. に関する帰納法で証明する。のときは、のときなのでである。とし、のときには示されたと仮定する。任意のに対してが成り立つとして、を示す。なるをとって固定する。任意のに対して
より
が得られ、から引けば
を得る。これに対して帰納法の仮定を適用するとに対してが従うが、なのででなければならない。そうして、となるため、帰納法の仮定によりとなる。 Q.E.D.
定理90の証明. が成り立つときは、
となる。逆に、のときを考える。とする。
とを導入する()。に対してDedekindの補題を適用することにより、であって
が成り立つようなものが存在する。に対して
が成り立つので、
と計算できるが、であることに注意すると、、すなわちが成り立つことがわかった。 Q.E.D.
コホモロジー版
を有限群とし、を-加群とします。このとき、のにおける1-コサイクルをの元の族であって*1、
が成り立つようなものと定義します。のにおける1-コサイクル全体の集合をと表します(自然にアーベル群をなします)。
また、の元の族がのにおける1-コバウンダリーであるとは、を用いてと表すことができるときにいいます。のにおける1-コバウンダリー全体の集合をと表します(の部分群になっていることが簡単にわかります)。
そうして、第一コホモロジー群を
と定義します。Hilbertの定理90と言えば次の形で引用されることも多いです:
このとき、が成り立つ。
証明. のにおける1-コサイクルをとる。は乗法群なので、
が成り立つ。Dedekindの補題より()、
なるが存在する。このとき、
が任意のに対して成り立つ。と置き換えると、が成り立つので、は1-コバウンダリーである。 Q.E.D.
前節のHilbertの定理90において、のときは①よりが1-コサイクルになっていることがわかります。
Hilbertの定理90を利用した最初の定理の証明
Olga Taussky, Noam Elkies, Takashi Ono等によって独立に何度も指摘されているように、Hilbertの定理90からピタゴラス数の一般公式を導出することができます*2。
最初の定理の証明 である場合のみ非自明。であればであり、を取れるのでと仮定してよい。
を考える。は複素共役(の制限)が生成する二元群(巡回群)であり、
である。よって、Hilbertの定理90よりが存在して、
が成り立つ。必要ならば適当な有理整数倍を考えることによってはGauss整数であると仮定してよい。すなわち、有理整数を用いてと書ける。このとき、
と計算でき、証明が完了する。 Q.E.D.