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数、特に整数に関する記事。

2:二平方和の定理と一文証明、ヤコビの定理

"2"という数をみて、最初に私が思い浮かべるのは「4で割った余りが1であるような素数は必ず2つの平方数の和で書ける」という法則です。

二平方和の定理

実際に、100以下の4で割った余りが1であるような素数がそのような法則を満たすかどうかを確認してみましょう:

\begin{align}5 &= 1^2 + 2^2\\
13 &= 2^2 + 3^2\\
17 &= 1^2 + 4^2\\
29 &= 2^2 + 5^2\\
37 &= 1^2 + 6^2\\
41 &= 4^2 + 5^2\\
53 &= 2^2 + 7^2\\
61 &= 5^2 + 6^2\\
73 &= 3^2 + 8^2\\
89 &= 5^2 + 8^2\\
97 &= 4^2 + 9^2\end{align}

と実際に2つの平方数の和で書けることが確認できました。

もう少し大きい例を一つみてみましょう:

4517 = 46^2+49^2.

これらを調べただけでは、いつかこの法則は破れるかもしれないわけですが、4で割った余りが1であるような素数は必ずこのように二平方和で書けるというのです。もし、4で割った余りが1であるような素数が有限個しかなければ、それらを調べつくせば終わりですが、実際には無数に存在します:

補題 自然数nに対して、2でないn^2+1の素因数は4で割った余りが1である。

証明. pを奇素数とし、pn^2+1を割り切ると仮定する。このとき、n^2 \equiv -1 \pmod{p}かつn^4 \equiv 1 \pmod{p}であるから、n\bmod{p}において位数4の元であるとわかる。一方、Fermatの小定理よりn^{p-1} \equiv 1 \pmod{p}である(今、当然pnを割り切らないことに注意する)。よって、p-1は4の倍数であることが示された。 Q.E.D.

定理 4で割った余りが1であるような素数は無数に存在する。

証明. 4で割った余りが1であるような素数がこの世にp_1, \dots, p_Nしかなかったと仮定する。このとき、M:=(2p_1\cdots p_N)^2+1としよう。Mは2以上の整数であるから、ある素因数pをもつ。Mは奇数なので、pも奇数である。すると、補題よりpは4で割った余りが1である。最初の仮定によって、ある番号iが存在してp=p_iでなければならないが、Mp_iで割った余りは1なので、pMの素因数であることに矛盾する。 Q.E.D.

素数が無数に存在することの証明については次の記事を参照してください:
integers.hatenablog.com

また、一般に自然数aに対して、aで割った余りが1であるような素数が無数に存在することを次の記事の(おまけ)に書いています:
integers.hatenablog.com


ちなみに、2=1^2+1^2ですが、4で割った余りが3であるような素数は二平方和で書くことはできません:
証明. \bmod{4}における平方剰余は01のみであることに注意する。
integers.hatenablog.com

p4で割った余りが3であるような素数でp=x^2+y^2なる整数x, yが存在したと仮定しよう。すると、(左辺)\equiv 3 \pmod{4}であるが、(右辺)\equiv 0 or 1 or 2 \pmod{4}なので矛盾。 Q.E.D.

二平方和の定理は数に関する非常に美しい法則ですが、数体\mathbb{Q}(\sqrt{-1})の素イデアルの分解法則と考えることによって、類体論という大理論に繋がる大事な法則です。

Zagierの一文証明

二平方和の定理の証明は数多く知られていますが、ここではZagierによる一文証明を紹介します:

Zagierの一文証明

有限集合S = \{ (x, y, z )\in \mathbb{N}^3 : x^2+4yz = p \}上の対合

\displaystyle (x, y, z) \mapsto \begin{cases}(x+2z, z, y-x-z) & x < y-z \ \text{のとき} \\
(2y-x, y, x-y+z) & y-z < x < 2y \ \text{のとき} \\
(x-2y, x-y+z, y) & x > 2y \ \text{のとき}\end{cases}

は丁度一つの固定点をもつので、|S|は奇数であり、(x, y, z) \mapsto (z, x, y)で定義される対合も固定点をもつ。 Q.E.D.

D. Zagier, A One-Sentence Proof That Every Prime p\equiv 1\pmod{4} Is a Sum of Two Squares, Amer. Math. Month., Vol. 97, No. 2
(1990), p. 144.

証明の解説. p の定義は論文のタイトルで与えられていることに注意する(つまり、p \equiv 1 \pmod{4}なる素数)。まず、明らかにx, y, z < pなので、集合Sは有限集合である。また、最初に定義される写像をfと書くことにすると、fはwell-definedであり、二回施すと元に戻ることが定義により確認できる(すなわち、f \circ f = \mathrm{id}_S。このような写像のことを対合とよぶ)。また、Sにはfによる固定点が丁度一つある。実際、(x, y, z)fで固定されるのは(2y-x, y, x-y+z) = (x, y, z) \Longleftrightarrow x=yの場合のみであり、このとき、x^2+4xz=x(x+4z)=pp は素数で、x < pであるからx=y=1であることがわかる。そうして、\displaystyle z = \frac{p-1}{4}とすればよい。固定点でないような点はペアをなして対合により互いに移り合うため、固定点が丁度一つという状況から集合Sの元の個数は奇数であることがわかる。
一方、g \colon (x, y, z) \mapsto (x, z, y)S上の対合であることは明らかであるが、Sの元の個数が奇数であることから、先ほどと逆に考えることによりgによる固定点がSに少なくとも一つは存在しなければならない。そのような点を(x, y, y)とすれば、p=x^2+(2y)^2と二平方和が得られた。 解説終わり

この美しい証明はLiouvilleの証明にインスパイアされたHeath Brownの証明(3つの対合を用いる)を簡略化したものです。fを見つけることが大変だと感じます。

Jacobiの定理

p \equiv 1 \pmod{4}のときは二平方和として書くことができ、p \equiv 3 \pmod{4}のときは書けないことがわかりました。では、素数でない場合はどうでしょうか?また、そのような書き表し方は何通りあるのでしょうか?実は、この質問には完全な解答が与えられています。次のJacobiの二平方和の定理です:

定義 自然数nに対して、d_1(n)4で割った余りが1であるようなnの約数の個数を表し、d_3(n)4で割った余りが3であるようなnの約数の個数を表す。

Jacobiの二平方和の定理 自然数nを(正とは限らない整数の)二平方和で書き表す表し方の総数をr_2(n)とする。このとき、r_2(n) = 4(d_1(n)-d_3(n))が成り立つ。

素数pp \equiv 1 \pmod{4}のとき、d_1(p)=2, d_3(p)=0なので、r_2(p)=8が得られます。しかし、これは p=(\pm x)^2+(\pm y)^2=(\pm y)^2+(\pm x)^2と数えているので、本質的には一通りしかないことがわかります。また、p \equiv 3 \pmod{4}ならばd_1(p)=1, d_3(p)=1なので、r_2(p)=0となります。

Jacobiの二平方和の定理から、nが二平方和として書き表せるための必要十分条件が得られます(後で注釈が入っていますが、Jacobiの定理を用いることなく証明できる事実でした。):

補題1 \ \ \ (a^2+b^2)(c^2+d^2) = (ac+bd)^2+(ad-bc)^2.

補題2 自然数n, x, yn=x^2+y^2を満たし、np \equiv 3 \pmod{4}なる素因数pをもつならばnの素因数分解におけるpの指数は偶数である。

証明. a=\mathrm{ord}_p(x), b=\mathrm{ord}_p(y)とおく。a\leq bと仮定しても一般性を失わない。x=p^ax', y=p^ay'とおく。このとき、n=p^{2a}(x'^2+y'^2)であり、x'pと互いに素である。もし、x'^2+y'^2 \equiv 0\pmod{p}であれば、sx' \equiv 1 \pmod{p}なるs \in \mathbb{Z}をとって両辺s^2倍することにより、1+(sy')^2 \equiv \pmod{p}が得られる。これは\displaystyle \left( \frac{-1}{p} \right) = 1を示すため、第一補充則に反する:
integers.hatenablog.com

従って、x'^2+y'^2 \not \equiv 0 \pmod{p}であり、\mathrm{ord}_p(n) = 2aを得る。 Q.E.D.

定理 (Euler 1749)
自然数nが二平方和として書き表されるための必要十分条件は、nの素因数分解において4で割った余りが3であるようなnの素因数の指数が全て偶数であることである。

証明. 必要性については補題2で既に示した。十分性を示す。2=1^2+1^2であり、二平方和の定理から4で割った余りが1である素数は二平方和で書けることに注意する。また、p4で割った余りが3である素数とすると、d_1(p^2) = 2, d_3(p^2)=1であるから、Jacobiの二平方和の定理よりr_2(p^2)>0がわかる*1。補題1より二平方和で書ける数を掛け合わせても二平方和で書き表せるため、十分性が従う。 Q.E.D.

次の系は初めて聴くと、少しぎょっとします:

任意の自然数nに対してd_1(n) \geq d_3(n)が成り立つ。

では、Jacobiの二平方和の定理を証明しましょう。ここでは、Jacobiの三重積を用いたHirschhornによる証明を紹介します*2

M. D. Hirschhorn, A simple proof of Jacobi’s two-square theorem, Amer. Math. Monthly 92(1985), pp. 579–580.

Jacobiの三重積
\tau, v \in \mathbb{C}, \mathrm{Im}(\tau ) > 0に対し、次の恒等式が成立する:
\begin{equation}\begin{split} &\sum_{n=-\infty}^{\infty}e^{\pi \sqrt{-1}\tau n^2+2\pi \sqrt{-1}nv}\\ &= \prod_{n=1}^{\infty}\{ (1-e^{2n\pi \sqrt{-1}\tau})(1+e^{(2n-1)\pi \sqrt{-1}\tau +2\pi\sqrt{-1}v})(1+e^{(2n-1)\pi \sqrt{-1}\tau -2\pi \sqrt{-1}v})\}.\end{split}\end{equation}

式さえ発見してしまえば、証明は簡単なので(Liouvilleの定理を使うだけ)省略します。証明の概略はtsujimotterさんの記事に書いてあります:
tsujimotter.hatenablog.com

Jacobiの二平方和の定理の証明.
Jacobiの三重積においてx=e^{2\pi \sqrt{-1}\tau}, a=e^{-\pi \sqrt{-1}\tau /2+\pi \sqrt{-1} v+\pi \sqrt{-1}/2}とおくことにより、

\displaystyle (a-a^{-1})\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n)(1-a^2x^n)(1-a^{-2}x^n) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}(-1)^na^{2n+1}x^{\frac{n^2+n}{2}}

が得られる。右辺は\displaystyle \sum_{n=-\infty}^{\infty}a^{4n+1}x^{2n^2+n}-\sum_{n=-\infty}^{\infty}a^{4n-1}x^{2n^2-n}と変形できる。Jacobiの三重積においてx=e^{\pi \sqrt{-1}\tau /2}, a=e^{-\pi \sqrt{-1}\tau /8+\pi \sqrt{-1} v/2}とおくことにより、

\displaystyle a\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{4n})(1+a^4x^{4n-1})(1+a^{-4}x^{4n-3}) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}a^{4n+1}x^{2n^2+n}

が得られ、a\mapsto a^{-1}とすることにより、

\displaystyle a^{-1}\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{4n})(1+a^4x^{4n-3})(a+a^{-4}x^{4n-1}) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}a^{4n-1}x^{2n^2-n}

が得られる。以上を合わせて、

\displaystyle \begin{equation}\begin{split}
&(a-a^{-1})\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n)(1-a^2x^n)(1-a^{-2}x^n)\\
&=a\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{4n})(1+a^4x^{4n-1})(1+a^{-4}x^{4n-3}) \\
& \ \ -a^{-1}\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{4n})(1+a^4x^{4n-3})(1+a^{-4}x^{4n-1})
\end{split}\end{equation}

を得る。両辺をaについて微分し、a=1を代入することにより、

\displaystyle \begin{equation}\begin{split}
\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n)^3 &= \prod_{n=1}^{\infty} (1-x^{4n})(1+x^{4n-1})(1+x^{4n-3})\cdot \\
& \ \ \ \left\{ 1+4\sum_{n=1}^{\infty} \left( \frac{x^{4n-1}}{1+x^{4n-1}}-\frac{x^{4n-3}}{1+x^{4n-3}} \right) \right\}
\end{split}\end{equation}

を得る。ただし、右辺の微分において、

\displaystyle \frac{d}{dx}\left( \prod_{n=1}^{\infty}f_n(x) \right) = \left( \prod_{n=1}^{\infty}f_n(x) \right) \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\frac{d}{dx}f_n(x)}{f_n(x)}

を用いている(aで微分することに注意)。両辺を

\displaystyle \begin{equation}\begin{split}
\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n)(1+x^n)^2 &= \prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{2n})(1+x^n) \\
&= \prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{2n})(1+x^{2n})(1+x^{2n-1}) \\
&=\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{4n})(1+x^{4n-1})(1+x^{4n-3}) \end{split}\end{equation}

で割ることにより、

\displaystyle \prod_{n=1}^{\infty}\left( \frac{1-x^n}{1+x^n} \right)^2 = 1+4\sum_{n=1}^{\infty}\left( \frac{x^{4n-1}}{1+x^{4n-1}}-\frac{x^{4n-3}}{1+x^{4n-3}}\right)
が得られる。

\displaystyle \begin{equation}\begin{split}
\prod_{n=1}^{\infty} \left( \frac{1-x^n}{1+x^n} \right) &= \prod_{n=1}^{\infty}\frac{(1-x^{2n})(1-x^{2n-1})}{1+x^n} = \prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n)(1-x^{2n-1}) \\ 
&=\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{2n})(1-x^{2n-1})(1-x^{2n-1})\end{split}\end{equation}

であり、Jacobiの三重積においてx=e^{\pi \sqrt{-1}\tau}, v=1/2とおくことにより、

\displaystyle \prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{2n})(1-x^{2n-1})(1-x^{2n-1}) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}(-1)^nx^{n^2}

が成り立つので、

\displaystyle \left( \sum_{n=-\infty}^{\infty}(-1)^nx^{n^2} \right)^2 = 1+4\sum_{n=1}^{\infty}\left( \frac{x^{4n-1}}{1+x^{4n-1}}-\frac{x^{4n-3}}{1+x^{4n-3}}\right)

となる。x\mapsto -xとすれば、結局

\displaystyle \left( \sum_{n=-\infty}^{\infty}x^{n^2} \right)^2 = 1-4\sum_{n=1}^{\infty}\left( \frac{x^{4n-1}}{1-x^{4n-1}}-\frac{x^{4n-3}}{1-x^{4n-3}}\right).

を得る。さて、

\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{x^{4n-1}}{1-x^{4n-1}} = \sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=1}^{\infty}x^{m(4n-1)} = \sum_{l=1}^{\infty}d_3(l)x^l,

\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{x^{4n-3}}{1-x^{4n-3}} = \sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=1}^{\infty}x^{m(4n-3)} = \sum_{l=1}^{\infty}d_1(l)x^l

である。一方、

\displaystyle \left( \sum_{n=-\infty}^{\infty}x^{n^2} \right)^2 = 1+\sum_{n=1}^{\infty}r_2(n)x^n

なので、係数比較によりr_2(n) = 4(d_1(n)-d_3(n))が得られた。 Q.E.D.

*1:追記: p^2=(\pm p)^2+0^2 = 0^2 + (\pm p)^2r_2(p^2)=4ということなので、Eulerの定理はJacobiの定理なしで証明できる事実です。

*2:Hirschhornからメールが来たことがあって、見たことある名前だなあと思っていたらこの証明の人でした。