は円周率に関するMachinの公式や高野喜久雄の公式に現れる素数です。
この記事では逆正接関数の主値は
で考えることにします。
逆正接関数のTaylor展開
においてを代入することによって有名なLeibnizの公式
が得られます。収束半径上の代入で条件収束ですが、この公式が正しいことは実際に確認することが出来ます*1。また、Leibnizは1673年にこの公式を得ていますが、実際には同時代のGregory、更に遡って14世紀にはMadhavaが発見していたようです*2。
この公式は円周率を奇数を用いた単純な級数で表す美しいものですが*3、円周率の計算に関して言えば非常に収束が遅くて使いものになりません。
一方、1706年にMachinが発見したMachinの公式
は非常に収束が速く、円周率の計算に実際に用いられていました。
と書き直すと、で円周率の小数点以下第3位、
で第7位、
で第43位まで一致します*4。
少し脱線しますが、高木貞治先生のエッセイ『昔と今(円周率をめぐって)』の文章がとても印象に残っているので引用します。
を
桁計算したのはシャンクス(Shanks)という男で、その結果は1873-75年の英国王立学士院記事(英名略)に載っているそうであるが、予はまだそれを見たことがない。それを見るひまがない。ひまがあっても興味がない。
桁の数字そのものに、なんら科学的の価値を認め得ないのである(ここに実際は第528位に誤りがあることの注釈)。
世には計算狂-といっては、ひどすぎるならば、計算家、それは少しもったいない気がするから、まあ中を取って、計算屋とでも言うべきものがある。多くは一種変態性の持ち主である。中でも低級なのは、(西洋の話だけれども)寄席などへ出て、演技をする。5桁6桁といった大きな数を2人の客から随時に提出させて、俗歌など歌いながら、暗算で掛算をして見せるといった連中である。こういうのとは少し違うが、円周率の計算家というものが近世には多数出ている。
これは『数学の自由性』(ちくま学芸文庫)で読むことができます。
話を戻すと、Machinの公式に似た公式は大量に知られています。
例えば、Eulerは
を発見しており、Gaussは
を発見しています。
Störmerが1896年に発見した
および、高野喜久雄が1982年に発見した
は金田康正による円周率の記録: 1兆2411億7730万桁(2002/12/6)に用いられました。
ちなみに高野喜久雄(1927/11/20-2006/5/1)は詩人です。
Machinの公式の証明
とするとき、次が成り立ちます:
これは正接の加法定理の単なる書き換えです。
および
が成り立つので、
と計算されます。よって、Marchinの公式が証明されました。
高野喜久雄の公式を証明したければ、に対する計算規則を用いて
を確認すればよいわけです。つまり、Machin型の公式の証明はいつだって機械的に行えることがわかります*5。
一方、新しい公式を発見するのは簡単ではありません。
*1:についての恒等式
で積分する。左辺は
*2:Stiglerの法則。 integers.hatenablog.com
*3:もちろん、数学的にも重要です。
*4:この和の取り方の若干の工夫はWikipediaの記事を参照しました。別に工夫しなくてもよいですが、数値を参照するためにWikipediaに合わせました。
*5:タンジェントの加法定理とその拡張 | 高校数学の美しい物語で紹介されているように
は
達の
次の基本対称式(
)で、右辺の分母が
にならない場合を考えます。