-AP自由数列とSzemerédiの定理
を正整数とします。長さの等差数列を含まないような以下の正整数からなる狭義単調増大数列のことをに関する-AP自由数列と呼ぶことにし、に関する-AP自由数列として取り得る最大項数をと定義します。
この定理はSzemerédiの定理と同値です。
で証明した有限版Szemerédiの定理と無限版Szemerédiの定理の同値性を使います。
同値性の証明. 上の定理が成立すると仮定する。の上漸近密度がであったとする。仮定より任意の正整数に対してに依存する正整数が存在して、であればが成り立つ。また、なる正整数であってが成り立つようなものが存在する。ここで、と定義している。このに対してなので、の元から構成される数列は-AP自由数列ではない。すなわち、は長さの等差数列を含む。つまり、無限版Szemerédiの定理が成立することがわかった。
次に、有限版Szemerédiの定理が成立すると仮定し、を正整数とする。任意にをとる。このとき、なるに対してに関する-AP自由数列から構成される集合はを満たす必要があるため、である。これはを意味する。 Q.E.D.
の漸近挙動
Szemerédiの定理の精密化として、のより精密な漸近挙動を求めるという仕事があります。実際、を最初に示したRothは
が成り立つことまで示していました。
これに対して、現状示されていることをまとめると次のようになっています。
O'Bryant and Bloom
Green-Tao
O'Bryant and Gowers
Erdős-Turán予想と関連する疑問
で述べた
は実は否定的であることがわかります。反例の存在*2: とする。O'Bryantの結果と平行移動の原理から、十分大きい整数と任意の正整数に対して、は
を満たし長さの等差数列を含まないような部分集合を含む。を
と定義する。すると、定義よりは長さの等差数列を含まない(異なる間の元で長さの等差数列が出来ないように間隔が設定されている)。そうして、のとき
が成り立つ。そうして、任意のに対して なので、は反例になっている。 Q.E.D.
とりあえず正しい問題設定は次です:
疑問は「Erdős-Turán予想は究極の予想か?」というものでした。まず、Erdős-Turán予想が成り立たない可能性も十分ありますが、成り立つとして話を進めます。任意の長さの等差数列を含むためにはある程度ランダムに数が分布している必要がありますが、Szemerédiの定理やErdős-Turán予想はそれぞれ密度が正、逆数和が発散するという定性的性質が十分なランダム性を保証すると言っています。その範疇になくても十分なランダム性を持つ集合の存在が示されていたり予想されたりしているのは以前述べた通りです。では、それらの例はの存在によって一般的に統制されたものなのか、それともErdős-Turán予想が究極の予想であって、逆数和が収束するけれども十分ランダムな集合は例外的なものなのか、一体どちらなのでしょう?もし、前者であればErdős-Turán予想は究極の予想ではなく、逆数和の発散性を上手く制御した証明を見出すことは難しいかもしれないのかなあなどと考えています。