インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

ヤコビ記号

Jacobi記号について簡潔にまとめます。

Legendre記号、平方剰余の相互法則については

integers.hatenablog.com

をご覧ください。

定義 nを正の奇数とし、mnと互いに素な整数とする。このとき、Jacobi記号 \displaystyle \left(\frac{m}{n}\right)を次のように定義する: まず、\displaystyle \left(\frac{m}{1}\right):=1とし、\displaystyle n=\prod_{p}p^{e_p}nが素因数分解される場合は \displaystyle \left(\frac{m}{n}\right):=\prod_p\left(\frac{m}{p}\right)^{e_p}と定義する。ここで、奇素数 pに対して \displaystyle \left(\frac{m}{p}\right)はLegendre記号とする。

Jacobi記号が準同型写像 \displaystyle \left(\frac{}{n}\right) \colon (\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times} \to \{\pm 1\} を与えることは定義からすぐにわかります。

Jacobi記号に対する相互法則と補充則をまとめましょう。

補題1 a_1, \dots, a_nを奇数とする。このとき、
\displaystyle \frac{a_1\cdots a_n-1}{2} \equiv \sum_{i=1}^n\frac{a_i-1}{2} \pmod{2}
が成り立つ。

証明. n=2の場合に証明すれば十分(帰納法)。n=2の場合は

(a_1-1)(a_2-1) \equiv 0 \pmod{4}

であることから従う。 Q.E.D.

第一補充則 nを正の奇数とする。このとき、次が成立する:
\displaystyle \left(\frac{-1}{n}\right) = (-1)^{\frac{n-1}{2}}.

証明. n=1のときは自明。\displaystyle n=\prod_{p}p^{e_p}nが素因数分解される場合は、Legendre記号に対する第一補充則から

\displaystyle \left(\frac{-1}{n}\right) = \prod_p\left(\frac{-1}{p}\right)^{e_p} =\prod_p(-1)^{e_p\frac{p-1}{2}}=(-1)^{\sum_pe_p\frac{p-1}{2}}

が得られるが、補題1より \displaystyle \sum_pe_p\frac{p-1}{2} \equiv \frac{n-1}{2} \pmod{2} なので、

\displaystyle \left(\frac{-1}{n}\right) = (-1)^{\frac{n-1}{2}}

が示された。 Q.E.D.

補題2 a_1, \dots, a_nを奇数とする。このとき、
\displaystyle \frac{a_1^2\cdots a_n^2-1}{8} \equiv \sum_{i=1}^n\frac{a_i^2-1}{8} \pmod{2}
が成り立つ。

証明. n=2の場合に証明すれば十分(帰納法)。n=2の場合は

(a_1^2-1)(a_2^2-1) \equiv 0 \pmod{16}

であることから従う。 Q.E.D.

第二補充則 nを正の奇数とする。このとき、次が成立する:
\displaystyle \left(\frac{2}{n}\right) = (-1)^{\frac{n^2-1}{8}}.

証明. n=1のときは自明。\displaystyle n=\prod_{p}p^{e_p}nが素因数分解される場合は、Legendre記号に対する第二補充則から

\displaystyle \left(\frac{2}{n}\right) = \prod_p\left(\frac{2}{p}\right)^{e_p} =\prod_p(-1)^{e_p\frac{p^2-1}{8}}=(-1)^{\sum_pe_p\frac{p^2-1}{8}}

が得られるが、補題2より \displaystyle \sum_pe_p\frac{p^2-1}{8} \equiv \frac{n^2-1}{8} \pmod{2} なので、

\displaystyle \left(\frac{2}{n}\right) = (-1)^{\frac{n^2-1}{8}}

が示された。 Q.E.D.

Jacobi記号に対する相互法則 n, mを互いに素な正の奇数とする。このとき、
\displaystyle \left(\frac{n}{m}\right)\left(\frac{m}{n}\right) = (-1)^{\frac{n-1}{2}\frac{m-1}{2}}
が成り立つ。

証明. nまたはm1の場合は自明。\displaystyle n=\prod_{p}p^{e_p}, \ m=\prod_qq^{f_q}n, mが素因数分解されている場合は

\displaystyle \left(\frac{n}{m}\right) = \prod_q\left(\frac{n}{q}\right)^{f_q} =\prod_q\prod_p\left(\frac{p}{q}\right)^{e_pf_q},

\displaystyle \left(\frac{m}{n}\right) = \prod_p\left(\frac{m}{p}\right)^{e_p} =\prod_p\prod_q\left(\frac{q}{p}\right)^{e_pf_q}

なので、平方剰余の相互法則より

\displaystyle \left(\frac{n}{m}\right)\left(\frac{m}{n}\right) = \prod_{p, q}\left\{\left(\frac{p}{q}\right)\left(\frac{q}{p}\right)\right\}^{e_pf_q} = \prod_{p, q}(-1)^{e_pf_q\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}= (-1)^{\sum_{p, q}e_pf_q\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}

と計算される。補題1より

\displaystyle \sum_{p, q}e_pf_q\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2} = \Bigl(\sum_pe_p\frac{p-1}{2}\Bigr) \Bigl(\sum_qf_q\frac{q-1}{2}\Bigr) \equiv \frac{n-1}{2}\frac{m-1}{2} \pmod{2}

なので、相互法則の証明が完了する。 Q.E.D.