は知られている最大のWieferich数です。
Fermatの小定理より奇素数に対して
が成り立ちますが、
が成り立つようなのことをWieferich素数というのでした:
1093, 3511:ヴィーフェリッヒ素数 - INTEGERS
1093と3511について - INTEGERS
ところで、Fermatの小定理を一般化したEulerの定理を用いると、任意の奇数に対して
が成り立ちます。ここで、はトーシェント関数。
このことから、Wieferich数は次のように定義されます。
知られているWieferich数は以下の104個の整数です。
もしWieferich素数がのみであれば、Wieferich数はこれら104個で尽くされる。
まず、この定理を証明しましょう。
証明. これは指数持ち上げ補題指数持ち上げ補題 - INTEGERSから従う。 Q.E.D.
整数の根基の記号を用いれば
と書ける。
証明. の素因数
を固定して、
とおく。とする。トーシェント関数の明示公式から、
と互いに素な或る整数
が存在して
と書ける。すると、
が成り立つので、補題より
が得られた。がWieferich数であるための必要十分条件は
の任意の素因数
に対して
が成り立つことなので主張が従う。 Q.E.D.
証明. をWieferich数、
をその最大素因数とする。このとき、
なので、命題より
が成り立つ。よって、となって、
がWieferich素数であることがわかる。 Q.E.D.
定理1の証明. とする。これらがWieferich素数であることは二番目に上げた記事で証明しているが、
である(コンピュータによる数値計算で確かめられる)。また、
である。以下、Wieferich素数がしか存在しないと仮定する(ただし、与えられた数がWieferich数であることを確認することはこの仮定と無関係であることに注意)。仮定のもとで、系より任意のWieferich数
に対して
である。よって、命題よりは
や
を素因数として持つときに
以上の指数を取り得ない。つまり、Wieferich数は次の3つのタイプに分類される。
(I) (より小さい素因数を持つ整数)
(II) (より小さい
以外の素因数を持つ整数)
(III) (より小さい
以外の素因数を持つ整数)
実際には、(I)型Wieferich数は、(II)型Wieferich数は
、(III)型Wieferich数は
のみしか素因数を持ち得ない(
と
の素因数に注意)。
理由: (I), (II), (III)いずれかの型のWieferich数をとして、
が上記以外の素因数を持ったと仮定する。その中で最大のものを
とすれば
である。当然 はWieferich素数ではないので、命題の不等式が成立せず
がWieferich数であるという仮定に矛盾する。
以下、命題を利用して全Wieferich数を決定する。
(I)型Wieferich数は
である()。
理由: を非負整数として
とする。このとき、
であるから、がWieferich数となるのは
のときに限る。あとは
であることに注意すればわかる。
(II)型Wieferich数は
である()。
理由: を非負整数として
とする。このとき、
であるから、がWieferich数となるのは
のときに限る。あとは
であることに注意すればわかる。
(III)型Wieferich数は
である()。
理由: を非負整数として
とする。
に注意する。このとき、
であるから、がWieferich数となるのは
のときに限る。あとは
であることに注意すればわかる。
以上で、仮定のもとで、Wieferich数は (I)型Wieferich数12個、(II)型Wieferich数18個、(III)型Wienerisch数74個の計104個で尽くされることが示された。これら104個の数が定理の主張に書いた104個の数であることは掛け算すればわかる。 Q.E.D.
Wieferich素数が新たに発見されたとしても、有限個のWieferich素数からは有限個のWieferich数しか生じません*1。
証明. を任意に取る。系より
の素因数は
以下である。
とおく。命題より
の任意の素因数
に対して
であることから、
と評価できる。ここで、より
とざっくりと上から押さえていることに注意。 Q.E.D.
私はWieferich素数は無数に存在すると期待していますので、Wieferich数だって無数に存在すると期待しています。
*1:下の定理における評価はかなり粗いです。