この記事では大野予想を紹介します。先生方の敬称は本文中では省略させていただきます。
2元3次形式
を2元3次形式の空間とします:
の判別式を
で定義します。
に対して、内積を
で定義します。そして、格子を
で定義し、その双対を
で定義します。が成り立っています。
が同値であるとは、あるに対して
が成り立つときをいいます。
でない整数に対して、およびを
と定義します。
ここで、6種類の類数を導入します(全て有限値であることが証明されています)。
はにおける同値類の個数。
はにおける同値類の個数。
残り4つを導入するために記号を導入します。に対して、を
と定めます。このとき、が知られています。
はにおけるを満たすようなものの同値類の個数。
はにおけるを満たすようなものの同値類の個数。
はにおけるを満たすようなものの同値類の個数。
はにおけるを満たすようなものの同値類の個数。
新谷の4つのディリクレ級数
新谷 卓郎は論文
T. Shintani, On Dirichlet series whose coefficients are class numbers of integral binary cubic forms, J. Math. Soc. Japan 24 (1972), 132–188.
において、4つのディリクレ級数, , , を次のように定義しました。
これらは全ての実部がより大きいとき絶対収束します。そして、新谷 卓郎はこれらの関数を有理型接続し、関数等式
を証明しました。
大野予想
大野 泰生は数値計算の結果を丹念に眺めることにより、4つあるかに見えたディリクレ級数が実質的に2つであることを発見しました。論文
Y. Ohno, A conjecture on coincidence among the zeta functions associated with the space of binary cubic forms, Amer. J. Math. 119 (1997), 1083–1094.
において提示されたその予想式は
です。
この予想が正しければ、
に対して関数等式
が成り立つことが示されます。
解決
この美しい大野予想は論文
J. Nakagawa, On the relations among the class numbers of binary cubic forms, Invent. Math. 134 (1998), 101–138.
において、中川 仁によって解決されました。