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数、特に整数に関する記事。

16843:ウォルステンホルム素数、調和数、調和級数、オイラーの定数

16843は最小のWolstenholme素数です。実は、知られているWostenholme素数は168432124679の2つしかありません。以下、調和数の解説から始めます。

調和数

定義 自然数nに対して、第n調和数H_n\displaystyle H_n:=\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}で定義する。

まず、H_1=1以外の調和数が整数ではないことを確認しましょう:

定理 n\geq 2ならば、H_nは整数ではない。

証明. 2^k\leq n <2^{k+1}なる整数kをとる(k \geq 1)。このとき、2, \dots, nの最小公倍数は2^km (mは奇数)と書ける。H_n2^kmで通分したとき、1, \dots, nの中には2^kの倍数が2^kしかないため、分子は(m+\text{偶数})の形になる。すなわち、H_nは(奇数)/(偶数)の形になるので、整数にはなり得ない。 Q.E.D.

H_nを既約分数で表した時の分子をa_nとおきましょう。a_nの数値および、その素因数分解をいくつか見てみましょう:

a_1=1,
a_2=3,
a_3=11,
a_4=25=5^2,
a_5=137,
a_6=49=7^2,
a_7=363=3\cdot 11^2,
a_8=761,
a_9=7129,
a_{10}=7381=11^2\cdot 61,
a_{11}=83711=97\cdot 863,
a_{12}=86021=13^2\cdot 509,
a_{13}=1145993=29\cdot 43\cdot 919,
a_{14}=1171733=1049\cdot 1117,
a_{15}=1195757=29\cdot 41233,
a_{16}=2436559=17^2\cdot 8431,
a_{17}=42142223=37\cdot 1138979,
a_{18}=14274301=19^2\cdot 39541,
a_{19}=275295799=37\cdot 7440427,
a_{20}=55835135=5\cdot 11167027,
a_{21}=18858053,
a_{22}=19093197=3\cdot 23^2\cdot 53\cdot 227,
a_{23}=444316699=761\cdot 583859,
a_{24}=1347822955=5\cdot 577\cdot 467183,
a_{25}=34052522467=109\cdot 312408463,
a_{26}=34395742267,
a_{27}=312536252003=521\cdot 2789\cdot 215087,
a_{28}=315404588903=29^2\cdot 375035183,
a_{29}=9227046511387=43^2\cdot 4990290163.

Wolstenholmeの定理

このような数達を見ているといくらでも楽しめるわけですが、ここでは、次の数達をピックアップして観察してみます:

\begin{align}a_4&=25=5^2,\\ 
a_6&=49=7^2,\\ 
a_{10}&=7381=11^2\cdot 61,\\ 
a_{12}&=86021=13^2\cdot 509,\\ 
a_{16}&=2436559=17^2\cdot 8431,\\ 
a_{18}&=14274301=19^2\cdot 39541,\\ 
a_{22}&=19093197=3\cdot 23^2\cdot 53\cdot 227,\\ 
a_{28}&=315404588903=29^2\cdot 375035183.\end{align}

これらを眺めていると、ある法則が成り立ちそうな気がしてきます。実際、次の極めて美しい法則が成立します:

Wolstenholmeの定理 pを5以上の素数とする。このとき、a_{p-1}p^2の倍数である。

5以上であれば、どんな素数であっても、このような法則が成り立っているのです。中々、感動的ではないでしょうか。

この定理は古典的で、証明もいくつか知られていますが、ここでは、次の調和数に関するEulerの恒等式を用いる証明を紹介します(Wikipediaには"elegant combinatorial expression"と書いてありました)。

Eulerの恒等式

\displaystyle H_n = \sum_{k=1}^n (-1)^{k-1}\binom{n}{k}\frac{1}{k}.

ただし、\displaystyle \binom{n}{k}は二項係数。日本の高校では、これを{}_nC_kと書く。

証明. 積分の変数変換による:
\displaystyle \begin{equation}\begin{split}
H_n &= \int_0^1(1+x+x^2+\cdots +x^{n-1})dx = \int_0^1\frac{1-x^n}{1-x}dx = \int_0^1\frac{1-(1-t)^n}{t}dt\\
&=\int_0^1\left( \sum_{k=1}^n (-1)^{k-1}\binom{n}{m}t^{k-1}\right) dt = \sum_{k=1}^n (-1)^{k-1}\binom{n}{k}\frac{1}{k}.
\end{split}\end{equation} Q.E.D.

補題1 pを5以上の素数とする。このとき、
\displaystyle 1+\frac{1}{2^2}+\cdots +\frac{1}{(p-1)^2} \equiv 0 \pmod{p}
が成り立つ。

証明. \{ 1, 1/2, \dots, 1/(p-1)\}はmodpで考えると\{1, 2, \dots, p-1\}に一致する。故に、

\displaystyle \begin{equation}\begin{split}
1+\frac{1}{2^2}+\cdots +\frac{1}{(p-1)^2} &\equiv 1^2+2^2+\cdots +(p-1)^2 \\
&= \frac{1}{6}(p-1)p(2p-1) \equiv 0 \pmod{p}\end{split}\end{equation}

となる(p\geq 5に注意)。 Q.E.D.

補題2 pを素数とする。1\leq j\leq p-1に対し、 \binom{p}{j}=pb_jとおく。このとき、
\displaystyle b_j \equiv \frac{(-1)^{j-1}}{j} \pmod{p}
が成り立つ。

証明. \displaystyle \binom{p}{j}=p\cdot \frac{(p-1)(p-2)\cdots (p-j+1)}{j!}なので、

\displaystyle a_j=\frac{(p-1)(p-2)\cdots (p-j+1)}{j!} \equiv \frac{(-1)^{j-1}(j-1)!}{j!}=\frac{(-1)^{j-1}}{j} \pmod{p}.
Q.E.D.

Wolstenholmeの定理の証明. Eulerの恒等式より、\displaystyle H_p=\sum_{j=1}^p\binom{p}{j}\frac{(-1)^{j-1}}{j}なので、両辺から1/pを引いて補題2を用いることにより、

\displaystyle \frac{1}{p}\sum_{k=1}^{p-1}\frac{1}{k}=\sum_{j=1}^{p-1}b_j\cdot \frac{(-1)^{j-1}}{j} \equiv \sum_{j=1}^{p-1}\frac{1}{j^2} \pmod{p}.

よって、補題1に帰着された. Q.E.D.

以上で、Wolstenholmeの定理が証明されました。それでは、a_{p-1}p^3で割り切れるような素数はあるでしょうか? 実は、そのような素数のことをWolstenholme素数といいます(非常にややこしいですが、Wolstenholme数と呼ばれる概念が2種類あって、しかもWolstenholme数であって素数でもあるものをWolstenholme素数というわけではありません。この括弧内は忘れてもらっても構いません)。

定義 a_{p-1}p^3で割り切れるような素数のことをWolstenholme素数という。

そして、最初に述べたように、168432124679の2つしか知られていません。

未解決問題 Wolstenholme素数は168432124679以外に存在するか?

この問題よりも、次の確実に成り立つと思われている予想が数学的には大事です(が、誰も証明できていません)。

予想 Wolstenholme素数でない素数(非Wolstenholme素数)は無数に存在する。

この問題は何としても解決しなければなりません。

調和級数

調和数H_nにおいて、n \to \inftyとすると発散します:

定理 調和級数は発散する。すなわち、\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n} = \infty.

証明.

{\small \displaystyle \begin{equation}\begin{split}\sum_{k=1}^{2^n}\frac{1}{k} &= 1+\frac{1}{2}+\left( \frac{1}{3}+\frac{1}{4} \right) + \left( \frac{1}{5}+\cdots +\frac{1}{8}\right) + \cdots +\left( \frac{1}{2^{n-1}+1}+ \cdots +\frac{1}{2^n}\right) \\ &\geq 1+\underbrace{\frac{1}{2}+\cdots +\frac{1}{2}}_{n}= 1+\frac{n}{2} \to \infty \ (n \to \infty )\end{split}\end{equation}}.
Q.E.D.
手で計算してみると全然発散する気配がしないので、初見ではこれは不思議な定理です。実際には、調和級数の発散スピードは極めて遅く、自然対数と同じ程度の成長スピードです。それでは、調和数と自然対数の差の極限はどうなるでしょうか?

Eulerの定数

命題 極限値\displaystyle \lim_{n \to \infty}(H_n-\log n)が存在する。

証明. \displaystyle H_n > \int_{n}^{n+1}\frac{dx}{x}=\log (n+1)より、H_n-\log n > 0である。また、\displaystyle \frac{1}{n+1} < \int_{n}^{n+1}\frac{dx}{x} = \log (n+1)-\log nより、H_n-\log nnについて単調減少する。よって、極限値が存在することがわかった。 Q.E.D.

定義 \displaystyle \gamma := \lim_{n \to \infty}(H_n- \log n)Eulerの定数とよぶ。

\gammaを小数展開すると、

\begin{align}&0.57721566490153286060651209008240243104215933593992359880576723488\\ &4867726777664670936947063291746749514631447249807082480960504014486\\
&5428362241739976449235362535003337429373377376739427925952582470949\\
&1600873520394816567085323315177661152862119950150798479374508570574\\
&0029921354786146694029604325421519058775535267331399254012967420513\\
&7541395491116851028079842348775872050384310939973613725530608893312\\
&6760017247953783675927135157722610273492913940798430103417771778088\\
&1549570661075010161916633401522789358679654972520362128792265559536\\
&6962817638879272680132431010476505963703947394957638906572967929601\\
&0090151251959509222435014093498712282479497471956469763185066761290\\
&6381105182419744486783638086174945516989279230187739107294578155431\\
&6005002182844096053772434203285478367015177394398700302370339518328\\
&6900015581939880427074115422278197165230110735658339673487176504919\\
&4181230004065469314299929777956930310050308630341856980323108369164\\
&0025892970890985486825777364288253954925873629596133298574739302373\\
&4388470703702844129201664178502487333790805627549984345907616431671\\
&0314671072237002181074504441866475913480366902553245862544222534518\\
&1387912434573501361297782278288148945909863846006293169471887149587\\
&5254923664935204732436410972682761608775950880951262084045444779922\\
&9915724829251625127842765965708321461029821461795195795909592270420\\
&8989627971255363217948873764210660607065982561990102880756125199137\\
&51167821764361\dots \end{align}

といった感じです。

次の未解決問題は恐らく、超難問です。

予想 \ \ \ \gammaは無理数である。

おまけ

本日は11月29日ですが、11291129も素数です。このような日付は11月29日が一年で最終日です。