インテジャーズ

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

インテジャーズ

数、特に整数に関する記事。

12:サブライム数

12は最小のサブライム数(sublime number)です。

サブライム数とは約数の個数および約数の総和がともに完全数となるような自然数のことをいいます。

完全数については
integers.hatenablog.com
をご覧ください。

12の約数の個数は1, 2, 3, 4, 6, 126個 ←完全数!

12の約数の総和は1+2+3+4+6+12 = 28 ←完全数!

なので、12はサブライム数であることがわかります。

"sublime"は「荘厳な,崇高な,雄大な」という意味を表す英単語だそうです。荘厳数と日本語訳を付けてもよいですが、ダサい気もします。

サブライム数はもう一つだけ知られており、それはK. S. Brown氏によって発見された次の数です:

{\small 6086555670238378989670371734243169622657830773351885970528324860512791691264}

この数の約数の個数は8128、約数の総和は2^{126}(2^{127}-1)とともに完全数になっています。

Brown氏の考察

2つ目のサブライム数は何らの考察もなしに得られたわけではなく、次の考察をもとにして発見されたものです。
素数pに対して、M_p:=2^p-1が素数になるときにM_pのことをMersenne素数といい、偶数の完全数は必ず2^{p-1}M_pの形であったことを思い出しておきます。また、M_pがMersenne素数となるとき、pのことをMersenne指数とよぶことにします。

Brownの補題1 pをMersenne指数であって、M_pもMersenne指数となるような素数とし、q_1, \dots, q_{p-1}を相異なるMersenne指数であって、M_p-1=q_1+\cdots +q_{p-1}が成り立つようなものとする。
このとき、N:=2^{M_p-1}M_{q_1}\cdots M_{q_{p-1}}はサブライム数である。逆に、奇数の完全数が存在しないという仮定のもとでは、偶数のサブライム数は必ずこのような形をしていなければならない。

証明. 前半をまず示す。Nの約数の個数をd(N)、約数の総和を\sigma (N)で表すことにする。N=2^{M_p-1}M_{q_1}\cdots M_{q_{p-1}}Nの素因数分解を与えているため、

d(N)=M_p\times \underbrace{2\times \cdots \times 2}_{p-1} = 2^{p-1}M_p,

\begin{equation}\begin{split}\sigma (N) &=(2^{M_p}-1)(1+M_{q_1})\cdots (1+M_{q_{p-1}})\\ &= (2^{M_p}-1)\cdot 2^{q_1+\cdots +q_{p-1}} = 2^{M_p-1}M_{M_p}\end{split}\end{equation}

と計算される。pおよびM_pがMersenne指数であるという仮定からこれらは完全数であり、Nはサブライム数である。
次に、Nを偶数のサブライム数として、奇数の完全数が存在しないという予想を仮定する。Nは偶数であるため、N=2^kMと書ける(kは自然数、Mは奇数)。仮定より\sigma (N)は偶数の完全数なので、あるMersenne指数qが存在して\sigma (N)=2^{q-1}M_qと書ける。特に\sigma (N)は奇数因子をM_qしかもたない。これは\sigma(2^k)=2^{k+1}-1=M_qでなければならないことを意味する。つまり、k=q-1である。\ellを奇素数として、M\ell^dでちょうど割り切れると仮定する(dは自然数)。このとき、

\sigma (\ell^d) = 1+\ell +\cdots +\ell^d

2の冪でなければならない。とにもかくにも偶数でなければならないため、dが奇数であることがわかる。d=2t+1とおけば、

\sigma (\ell^d) = (1+\ell )(1+\ell^2+\cdots +\ell^{2t})

を得る。t\geq 1のときは1+\ell^2+\cdots +\ell^{2t}も偶数である必要があり、t=2s+1とおける。このとき、

\sigma (\ell^d) = (1+\ell)(1+\ell^2)(1+\ell^4+\cdots +\ell^{4s})

において、1+\ell1+\ell^2がともに2の冪でなければならない。しかし、1+\ell=2^uとすれば、

1+\ell^2=1+(2^u-1)^2=2(2^{2u-1}-2^u+1)

2の冪にはなり得ない(u\geq 2に注意)。つまり、d=1でなければならない。まとめると、Mは相異なるMersenne素数であることがわかった。よって、相異なるMersenne指数q_1, \dots, q_vが存在して、M=M_{q_1}\cdots M_{q_v}と書ける。このとき、

\sigma (M)=(1+M_{q_1})\cdots (1+M_{q_v})=2^{q_1+\cdots +q_v}

であるが、これが2^{q-1}に等しいため、q-1=q_1+\cdots +q_vが成り立つことがわかる。一方、d(N)も偶数の完全数であるとの仮定より、あるMersenne指数pが存在してd(N)=2^vq=2^{p-1}M_pでなければならない。つまり、v=p-1およびq=M_pが成り立つ。 Q.E.D.

この補題によって、偶数のサブライム数をサーチするためには、まず二重Mersenne素数を考察する必要があることが分かります。しかしながら、二重Mersenne素数は4つしか知られていないため、現状では偶数のサブライム数も高々4つしか手に入れることができないことがわかります。
integers.hatenablog.com

pの候補値が2, 3, 5, 7であるため、

\begin{align}M_2-1&=2=q_1 \\

M_3-1&=6=q_1+q_2\\

M_5-1&=30=q_1+q_2+q_3+q_4\\

M_7-1&=126=q_1+q_2+q_3+q_4+q_5+q_6\end{align}

なるMersenne指数への分解が存在すればサブライム数が手に入ることがわかります。実際にMersenne指数の表を見て確かめると、2=2は当たり前で、真ん中の二つはこのような分解が存在せず、そして、

126=3+5+7+19+31+61-①

なる分解を発見できます。このようにして、2つのサブライム数2^3(2^2-1)=12および

2^{126}(2^3-1)(2^5-1)(2^7-1)(2^{19}-1)(2^{31}-1)(2^{61}-1)

が得られるというカラクリです。理論的に考察しても12しか見つからなければ若干悲しいですが、2つ目が見つかっていることが面白いと思いました。そう考えると、①という式はなんとも美しく思えてきます。

奇数のサブライム数は見つかっていませんが、次の補題が示されています:

Brownの補題2 pをMersenne指数とし、q_1, \dots, q_{p-1}を相異なるMersenne指数であって、q:=q_1+\cdots +q_{p-1}+1がMersenne指数となるようなものとする。また、\piを奇素数であって、\pi^{M_p}-1=(\pi -1)M_qが成り立つようなものとする。このとき、N:={\pi}^{M_p-1}M_{q_1}\cdots M_{q_{p-1}}はサブライム数である。逆に、奇数の完全数が存在しないという仮定のもとでは、奇数のサブライム数は必ずこのような形をしていなければならない。

これは、補題1において\sigma(2^k)が担った役割を\sigma (\pi^k)に担ってもらうことにより、全く同様に証明できます。

例えば、\pi =5, p=2, q=5と考えると、5^{M_2}-1=4M_5は成り立ちますが、q=5=q_1+1なる分解があればq_1=4がMersenne指数ということになります。これは素数ですらないので条件は満たされません。

p=3, q=31を考えると、31=13+17+1というMersenne指数の分解があります。よって、

\displaystyle \frac{\pi^7-1}{\pi-1} = M_{31}=2147483647

なる奇素数\piを見つければ奇数のサブライム数が手に入ります。しかしながら、\displaystyle \frac{31^7-1}{6}=917087137, \displaystyle \frac{37^7-1}{6}=2636996587より、このような\piは存在しないことがわかります。