この記事は全四回で素数定理の初等的証明を紹介する試みの二回目の記事である:
integers.hatenablog.com
この記事ではSelbergの漸近公式を証明する。漸近公式は全てで考える。また、
は(必ずしも異なるとは限らない)素数とする。
自然数に対して、
とする。ここで、
はMöbius関数である。次の補題によって
の具体的な値が計算できる:
証明.
のとき: 定義より
のとき:
のとき:
は相異なる素数、
のとき:
メビウス関数 - INTEGERSの補題1より
証明. を二通りの方法で計算することによって証明する。まず、
の定義に基づいて二重和を計算すると、
と計算できる。ここで、四つ目の等号にアーベルの総和法 - INTEGERSの漸近公式2を用いており、五つ目の等号にはメビウス関数 - INTEGERSで証明した補題2および三つの漸近公式を用いている。
一方、補題1を用いてを計算すると、
を得る*1。
素数に関する漸近公式 - INTEGERSの漸近公式1、2よりまたは
である項の寄与は
であることがわかる。また、
であるから、二つ目の和のという条件も消すことができて、結局
が得られた。二通りの計算を合わせることにより、
が示されたことになる。数列を
が素数
のときは
、その他の場合は
と定義する。この
と
に対してAbelの総和法を適用すると、
なので、
を得る。ここで、二つ目の等号でChebyshevの定理を用いていることに注意。また、
である。以上を組み合わせて、Selbergの漸近公式の証明が完了する。 Q.E.D.
Selbergの漸近公式から2つの漸近公式を系として導出して今回の記事を終える:
証明. 以上の自然数
に対して
を
であり、
を得る。
素数定理 - INTEGERSで示したことから、なので、証明が完了する。 Q.E.D.
証明. であることと、
であることに注意すると、系1より
が得られる。Mertensの第一定理と素数に関する漸近公式 - INTEGERSで証明した漸近公式3を用いることにより
これとSelbergの漸近公式を合わせることによって所望の漸近公式が得られる。 Q.E.D.
*1:二つ目の和はと
を別々にカウントしているので、補題1の
における
が見かけ上消えていることに注意する。