インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

算術級数の素数定理

昨年、Dirichletの算術級数定理の証明を紹介しました。

Dirichletの算術級数定理 a, bを互いに素な正整数とする。
このとき、an+b (n \in \mathbb{N})の形で表される素数は無数に存在する。

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特殊な形に限定した場合の素数の無限性は未解決問題が多いのですが、算術級数定理は成功例です。

素数の無限性はEuclidによって大昔に証明されていますが、19世紀末にはHadamardとde la Vallée-Poussinによって素数分布の漸近公式

\displaystyle \pi (x) \sim \frac{x}{\log x}

が証明されました(素数定理)。ここで、\pi(x)x以下の素数の個数を表し、f(x) \sim g(x)\displaystyle \lim_{x \to \infty}f(x)/g(x) = 1を意味します*1


すると、an+b型素数の分布についても漸近公式を知りたくなります。それが算術級数の素数定理です:

算術級数の素数定理
a, bを互いに素な正整数とする。\pi_{a, b}(x)x以下のan+b型素数の個数を表すとき、

\displaystyle \pi_{a, b}(x) \sim \frac{1}{\varphi(a)}\frac{x}{\log x}

が成り立つ。ここで、\varphi(a)Eulerのトーシェント関数

これは、歴史的にはde la Vallée-Poussinが示しています。基本的には素数定理の証明技術と算術級数定理の証明技術をハイブリッドさせることによって証明可能です。従って、de la Vallée-Poussin以降、素数定理の証明が簡略化されているため、算術級数定理の素数定理の証明もそれに伴って簡略化されます。

素数定理の証明については現状最も簡単な証明はNewman-Zagierによる方法と考えられます:

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実際にこの方法を真似れば算術級数の素数定理を証明することができます。既にWeb上にSoprounov氏(1998)清水元喜氏(2012)による解説が存在しますが、例によって例のごとく、当ブログのself-containednessのために証明をここにもまとめることにします。

なお、Selbrergによる素数定理の初等的証明の方法に沿った証明法も存在します。最初に上げた算術級数定理の証明記事の脚注に若干の解説文があります。

算術級数の素数定理の証明

最初に上げた記事ではL関数を用いない証明を紹介しましたが、ここでは素直にDirichletのL関数を用います。まず、Dirichlet指標については既知とします:

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定義1 \chiaを法とするDirichlet指標とする。このとき、Dirichlet L関数 L(s, \chi)\mathrm{Re}(s) > 1で広義一様絶対収束する級数として定まる正則関数
\displaystyle L(s, \chi) := \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\chi(n)}{n^s}
と定義する(sは複素変数で実数tに対してt^s:=\exp(s\log t))。

収束性はRiemannゼータ関数のそれから従います。

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補題1 Dirichlet L関数は\mathrm{Re}(s) > 1においてEuler積表示
\displaystyle L(s, \chi) = \prod_p\frac{1}{1-\frac{\chi(p)}{p^s}}
を持つ。ここで、右辺の積は全ての素数pをわたる。

証明. 無限積が絶対収束することはRiemannゼータ関数の場合と同様。等号が成立することの証明はDirichlet指標が完全乗法的関数であることに注意すれば次のように確かめられる:

\left|\chi(p)p^{-s}\right| < 1なので、無限等比級数の和の公式より、

\begin{align} \frac{1}{1-\chi(p)p^{-s}}&=1+\chi(p)p^{-s}+\chi(p)^2p^{-2s}+\chi(p)^3p^{-3s}+\cdots \\ &=1+\chi(p)p^{-s}+\chi(p^2)p^{-2s}+\chi(p^3)p^{-3s}+\cdots\end{align}

が成り立つ。よって、2以上の整数Nに対し、

\displaystyle \prod_{p \leq N}\frac{1}{1-\chi(p)p^{-s}}=\prod_{p \leq N}(1+\chi(p)p^{-s}+\chi(p^2)p^{-2s}+\chi(p^3)p^{-3s}+\cdots )

を得る。右辺を展開すると、各項は\chi(n)n^{-s}という形であり、素因数分解の一意性よりこれらの正整数nは全て異なる値をとる。また、2以上の整数は素因数分解することが可能なので、N以下の正整数nに対する\chi(n)n^{-s}は全て現れることがわかる。よって、

\displaystyle \prod_{p \leq N}\frac{1}{1-\chi(p)p^{-s}}=\sum_{n=1}^{N}\frac{\chi(n)}{n^s}+\sum\nolimits'\frac{\chi(n)}{n^s}

である。ここで、\sum'\sum_{n > N}のある部分和を表す。よって、

\displaystyle \left| \prod_{p \leq N} \frac{1}{1-\chi(p)p^{-s}}-\sum_{n=1}^N\frac{\chi(n)}{n^s} \right| \leq \sum_{n > N}\frac{1}{n^{\mathrm{Re}(s)}}

となり、\mathrm{Re}(s) > 1より右辺の級数はN \to \infty0に収束するので主張は示された。 Q.E.D.

補題2 \chiが非自明な指標であれば、L(s, \chi)\mathrm{Re}(s) > 0で広義一様収束し、従ってこの範囲で正則関数である。一方、自明指標 \chi_1に対してはL(s, \chi_1)は複素平面全体に有理型接続され(s =1を除いて正則)、s=1に単純極を持ち、留数は\varphi(a)/aである。

証明. \chiを非自明な指標とする。Abelの総和法より

\displaystyle \sum_{n \leq x}\frac{\chi(n)}{n^s} = \frac{S(x)}{x^s}+s\int_1^x\frac{S(t)}{t^{s+1}}dt

が成り立つ。ここで、S(x):=\sum_{n \leq x}\chi(n)\chiが非自明であることから、直交関係式によってS(x)は有界である。従って、

\displaystyle L(s, \chi) = s\int_1^{\infty}\frac{S(t)}{t^{s+1}}dt

\mathrm{Re}(s) > 0で広義一様収束している。\chi_1に対しては補題1より\mathrm{Re}(s) > 1

\displaystyle L(s, \chi_1) = \prod_{p \mid a}\left(1-\frac{1}{p^s}\right)\zeta(s)

が成り立つので、\zeta(s)の有理型接続とトーシェント関数の公式

\displaystyle \varphi(a) = a\prod_{p \mid a}\left(1-\frac{1}{p}\right)

からL(s, \chi_1)に対する主張が従う。 Q.E.D.

注意: Newman-Zagier型の素数定理の証明では、ゼータの解析接続は\mathrm{Re}(s) > 0までで十分です。それに限定すれば簡単な証明が知られていますが、当ブログではRiemannゼータについては全平面の解析接続を一つのトピックとして解説しています。一方、Dirichlet L関数についても全平面への解析接続と関数等式が知られていますが、現状は算術級数定理の素数定理のみを目標としているため解説を省いています。

算術級数版Chebyshev関数を導入しましょう。

定義2 \vartheta_{a, b}(x)
\displaystyle \vartheta_{a, b}(x) := \varphi(a)\sum_{p \leq x, \ p \equiv b \bmod{a}}\log p
と定義します。

次はChebyshevの定理から従います:

補題3 \ \vartheta_{a, b}(x) = O(x).

証明. \vartheta_{a, b}(x) \leq \varphi(a)\vartheta(x) = O(x). Q.E.D.

補題4 aを法とするDirichlet指標 \chiに対して、
\displaystyle \Phi(s, \chi) := \sum_p\frac{\chi(p)\log p}{p^s}, \quad h(s, \chi):=\sum_p\frac{\chi^2(p)\log p}{p^s(p^s-\chi(p) )}
と級数を定義すると、\Phi(s, \chi)\mathrm{Re}(s) > 1, h(s, \chi)\mathrm{Re}(s) > \frac{1}{2}で広義一様絶対収束し、正則関数となる。また、\mathrm{Re}(s) > 1
\displaystyle -\frac{L'(s, \chi)}{L(s, \chi)}=\Phi(s, \chi)+h(s, \chi)
が成立する。従って、\Phi(s, \chi)\mathrm{Re}(s) > \frac{1}{2}に有理型接続される。

証明. \Phi(s, \chi)h(s, \chi)の収束性については素数定理の記事の命題と同様に証明できる。よって、補題1より得られる

\displaystyle \log L(s, \chi) = -\sum_p\log (1-\chi(p)p^{-s})

を項別微分することによって

\begin{align}-\frac{L'(s, \chi)}{L(s, \chi)}&=\sum_p\frac{\chi(p)p^{-s}\log p}{1-\chi(p)p^{-s}}=\sum_p\frac{\chi(p)\log p}{p^s-\chi(p)}\\
&=\sum_p\frac{\chi(p)\log p}{p^s}+\sum_p\frac{\chi^2(p)\log p}{p^s(p^s-\chi(p) )}\end{align}

が得られる。 Q.E.D.

次の定理はRiemannゼータのときと同様に\cosを用いて証明することもできますが、少し見た目の違うNewman-Zagier型の証明を採用します(本質的に異なるわけではありません)。aを法とするDirichlet指標全体を\chi_1, \dots, \chi_{\varphi(a)}として、\chi_1を自明指標とします。

定理 aを法とするDirichlet指標 \chiに対して、L(s, \chi)\mathrm{Re}(s) \geq 1に零点を持たない。

証明. 補題1で示したEuler積表示から\mathrm{Re}(s) > 1に零点を持たないことが従う。\mathrm{Re}(s)=1上に零点を持たないことをaを法とする全てのDirichlet指標に対して同時に示すために

\displaystyle \mathcal{L}(s) := \prod_{i=1}^{\varphi(a)}L(s, \chi_i)

を考える。補題2より L(s, \chi_1)s=1を単純極に持つ。一方、算術級数定理の記事の定理3より i \geq 2であれば L(1, \chi_i) \neq 0である。従って、\mathcal{L}(s)s=1を単純極に持つことがわかった。L(s, \chi_i)\mathrm{Re}(s)\geq 1s=1以外には極を持たないので、後は\mathcal{L}(s)\mathrm{Re}(s)=1上に零点を持たないことを示せばよい。そこで、任意に実数t \neq 0をとって、\mathcal{L}(s)s=1+t\sqrt{-1}における零点としての位数を\muとしたとき、\mu = 0を示せばよい。補助的にs=1+2t\sqrt{-1}における零点の位数を\nuとする。sが実数であれば

\displaystyle \overline{\mathcal{L}(s)}=\prod_{i=1}^{\varphi(a)}\overline{L(s, \chi_i)} = \prod_{i=1}^{\varphi(a)}L(s, \overline{\chi_i}) = \mathcal{L}(s)

が成り立つので、\mathcal{L}(s)は定義域を\mathbb{R}に制限すると実数値関数となる。よって、\mathcal{L}(s)s=1-t\sqrt{-1}, \ 1-2t\sqrt{-1}における零点の位数はそれぞれ \mu, \nuであることがわかる。

ここで、関数 \Phi_a(s), \ h(s)

\displaystyle \Phi_a(s) := \sum_{i=1}^{\varphi(a)}\sum_p\frac{\chi_i(p)\log p}{p^s}, \ h(s):=\sum_{i=1}^{\varphi(a)}\sum_p\frac{\chi_i^2(p)\log p}{p^s(p^s-\chi_i(p) )}

と定義する。補題4より、\Phi_a(s)\mathrm{Re}(s) > 1で、h(s)\mathrm{Re}(s) > \frac{1}{2}で広義一様収束して正則関数を定め、等式

\displaystyle -\frac{\mathcal{L}'(s)}{\mathcal{L}(s)} = \Phi_a(s)+h(s)

が成り立ち、これをもって\Phi_a(s)\mathrm{Re}(s) \geq \frac{1}{2}に有理型に延長される。対数微分の基本性質(ここで使う性質は

Wikipedia「対数微分」
有理型関数 f に対して、f の対数微分の特異性はすべて単 (simple) 極であり、位数 n の零点から留数 n、位数 n の極から留数 −n。

です)より、

\begin{align} \mathrm{Re}_{s=1}\left(\Phi_a(s)\right) &= \lim_{\varepsilon \to 0}\varepsilon \Phi_a(1+\varepsilon)=1,\\
\mathrm{Re}_{s=1\pm t\sqrt{-1}}\left(\Phi_a(s)\right) &= \lim_{\varepsilon \to 0}\varepsilon \Phi_a(1+\varepsilon\pm t\sqrt{-1})=-\mu,\\
\mathrm{Re}_{s=1\pm 2t\sqrt{-1}}\left(\Phi_a(s)\right) &= \lim_{\varepsilon \to 0}\varepsilon \Phi_a(1+\varepsilon \pm 2t\sqrt{-1})=-\nu\end{align}

が成り立つ。指標の直交関係式より、任意の\varepsilon \geq 0に対して

\begin{align}\sum_{r=-2}^2\binom{4}{2+r}\Phi_a(1+\varepsilon +rt\sqrt{-1}) &= \sum_p\sum_{i=1}^{\varphi(a)}\frac{\chi_i(p)\log p}{p^{1+\varepsilon}}\left(p^{\frac{t\sqrt{-1}}{2}}+p^{-\frac{t\sqrt{-1}}{2}}\right)^4 \\
&=\sum_{p \equiv 1 \bmod{a}}\frac{\varphi(a)\log p}{p^{1+\varepsilon}}\left(p^{\frac{t\sqrt{-1}}{2}}+p^{-\frac{t\sqrt{-1}}{2}}\right)^4  \geq 0\end{align}

なる不等式評価が得られるので、

\displaystyle \lim_{\varepsilon \to 0}\varepsilon \sum_{r=-2}^2\binom{4}{2+r}\Phi_a(1+\varepsilon +rt\sqrt{-1}) = -\nu-4\mu+6-4\mu-\nu=6-8\mu-2\nu \geq 0

でなければならない。これは \mu = 0を意味する。 Q.E.D.

系1 関数\Phi_{a, b}(s)
\displaystyle \Phi_{a, b}(s):=\sum_{i=1}^{\varphi(a)}\overline{\chi_i(b)}\Phi(s, \chi_i)
と定義する。補題4より\mathrm{Re}(s) > \frac{1}{2}で定義されているが、\mathrm{Re}(s) \geq 1における極はs=1のみであり、単純極で留数は1である。

証明. 補題4の等式より \Phi(s, \chi_i)の極の候補は L(s, \chi_i)の極と零点のみであり、定理より \mathrm{Re}(s) \geq 1 に零点は持たない。また、補題2よりi \geq 2であれば極も持たず、L(s, \chi_1)s=1にのみ単純極を持つ。従って、\Phi(s, \chi_1)s=1を単純極に持ち、留数は1である(対数微分の基本性質)。

\displaystyle \Phi_{a, b}(s) = \sum_{i=2}^{\varphi(a)}\overline{\chi_i(b)}\Phi(s, \chi_i)+\Phi(s, \chi_1)

であるから主張が従う。 Q.E.D.

Newman-Zagierの証明では次の定理を使うのがKeyでした:

(再掲) Newman-Zagierの解析的定理 f(t)t \geq 0で定義される有界な局所可積分関数とする。\mathrm{Re}(z) > 0で正則である関数
\displaystyle g(z) = \int_0^{\infty}f(t)e^{-zt}dt
\mathrm{Re}(z) \geq 0に正則に解析接続されていると仮定する。このとき、\displaystyle \int_0^{\infty}f(t)dtは収束し、
\displaystyle \int_0^{\infty}f(t)dt = g(0)
が成立する。

算術級数の場合もこれをそのまま使うことができます。

系2 広義積分
\displaystyle \int_1^{\infty}\frac{\vartheta_{a, b}(x)-x}{x^2}dx
は収束する。

証明. \mathrm{Re}(s) > 1において次のような変形ができる(直交関係式、変数変換x=e^tを使っている):

\begin{align}\Phi_{a, b}(s) &= \sum_{i=1}^{\varphi(a)}\overline{\chi_i(b)}\sum_p\frac{\chi_i(p)\log p}{p^s} \\
&=\sum_p\left(\sum_{i=1}^{\varphi(a)}\overline{\chi_i(b)}\chi_i(p)\right)\frac{\log p}{p^s}\\
&=\sum_{p\equiv b \bmod{a}}\frac{\varphi(a)\log p}{p^s} \\
&=\sum_{n=1}^{\infty}\left(\vartheta_{a, b}(n+1)-\vartheta_{a, b}(n)\right)\frac{1}{(n+1)^s}\\
&=\sum_{n=1}^{\infty}\vartheta_{a, b}(n)\left\{\frac{1}{n^s}-\frac{1}{(n+1)^s}\right\}\\
&=s\sum_{n=1}^{\infty}\int_{n}^{n+1}\frac{\vartheta_{a, b}(n)}{x^{s+1}}dx\\
&=s\int_{1}^{\infty}\frac{\vartheta_{a, b}(x)}{x^{s+1}}dx\\
&=s\int_0^{\infty}e^{-st}\vartheta_{a, b}(e^t)dt.\end{align}

そこで、f(t)=\vartheta_{a, b}(e^t)e^{-t}-1とすれば、補題3よりこれはt \geq 0で定義される有界な局所可積分関数であり、

\displaystyle g(z) = \int_0^{\infty}f(t)e^{-zt}dt = \int_0^{\infty}e^{-(z+1)t}\vartheta_{a, b}(e^t)dt-\int_0^{\infty}e^{-zt}dt
=\frac{\Phi_{a, b}(z+1)}{z+1}-\frac{1}{z}

は系1より\mathrm{Re}(z) \geq 0に正則に延長される。従って、解析的定理を適用することができ、

\displaystyle g(0) = \int_0^{\infty}\left(\vartheta_{a, b}(e^t)e^{-t}-1\right)dt = \int_1^{\infty}\frac{\vartheta_{a, b}(x)-x}{x^2}dx

は収束する(e^t=xと変数変換している)。 Q.E.D.

算術級数の素数定理の証明

素数定理の証明記事における証明の完結.の部分の議論において\vartheta(x) \mapsto \vartheta_{a, b}(x)とすることによって、系2から \vartheta_{a, b}(x) \sim x が従う。

\displaystyle \vartheta_{a, b}(x) = \varphi(a)\sum_{p \leq x, \ p \equiv b \bmod{p}}\log p \leq \varphi(a) \sum_{p \leq x, \ p \equiv b \bmod{p}}\log x = \varphi(a)\pi_{a, b}(x)\log x

であり、任意の 0 < \varepsilon < 1 に対して

\begin{align} \vartheta_{a, b}(s) &\geq \varphi(a)\sum_{x^{1-\varepsilon}\leq p\leq x, \ p \equiv b \bmod{p}}\log p \geq \varphi(a)\sum_{x^{1-\varepsilon}\leq p\leq x, \ p \equiv b \bmod{p}}(1-\varepsilon)\log x \\ &\geq (1-\varepsilon)\varphi(a)\log x\left(\pi_{a, b}(x)-x^{1-\varepsilon}\right)\end{align}

なので、

\displaystyle \frac{\vartheta_{a, b}(x)}{x} \leq \frac{\varphi(a)\pi_{a, b}(x)\log x}{x} \leq \frac{1}{1-\varepsilon}\frac{\vartheta_{a, b}(x)}{x}+\frac{\varphi(a)\log x}{x^{\varepsilon}}

を得る。故に、

\displaystyle 1 \leq \liminf_{x \to \infty}\frac{\varphi(a)\pi_{a, b}(x)\log x}{x} \leq \limsup_{x \to \infty}\frac{\varphi(a)\pi_{a, b}(x)\log x}{x}  \leq \frac{1}{1-\varepsilon}

となり、\varepsilonの任意性から

\displaystyle \lim_{x \to \infty}\frac{\varphi(a)\pi_{a, b}(x)\log x}{x} =1

が示された。以上で、算術級数の素数定理の証明を完了する。 Q.E.D.

*1:漸近挙動に関する記号は全て x \to \inftyで考えます。