これまでRamanujanのとそれから定まる数列についてその性質をいくつか調べてきました。
今回は別の無限積を考えてみましょう:
によって数列を導入します。これは実は或る重さの保型形式のFourier級数展開になっています。
素数に対するの値を少しだけ見てみましょう:
Ramanujanの関数と同様は乗法的であり、素数と自然数に対して、
なる漸化式が成り立ちます。また、不等式
が成り立ちます。これはEichlerが1954年に示しました。Ramanujanのの場合は右辺に対応するものがだったのに対し、今回はでバウンドされているので、に比較しての方が数値例において絶対値が小さくなっていることが(ある程度)納得できます。
また、Ramanujanのが様々な合同式を満たすことをこれまでに紹介してきましたが、も例えば
をなる合同式を満たすことがRamanujanによって証明されています。
ところで、先ほどの数値例を見て何かピンとこられた方はおられないでしょうか??
そうです!
で紹介した、楕円曲線から定まる数列と数値が全く一致しているのです!!実は次の驚くべき定理が成り立ちます:
なんということでしょう!(上の)楕円曲線と(重さの楕円カスプ)保型形式という生まれた場所の異なるものが結びつく。このような予期せぬ結びつきこそが数学の真骨頂です!!これは一つの実例に過ぎませんが、どんな上の楕円曲線を考えても同様の結びつきがあるというのが、所謂志村-谷山予想です。
ロマンティック数学ナイトの方ではという合同式をMordell-Weil群の捩れ元を用いて紐解きましたが、この結びつきによって保型形式の観点からも証明できることが分かるのです。
さて、楕円曲線と重さの保型形式の間の不可思議な結びつきを紹介しましたが、実は重さの異なる保型形式の間にも様々な関係があることが知られています。ここでは、とが、冒頭では今回は別のものを考えようとを導入したにも関わらず、思いがけず結びつくということを紹介して今回の記事を締めようと思います。
との差をとっていくつか計算してみましょう。
実は次の定理が成り立ちます!!
証明. に注意すれば、定義より自明である。 Q.E.D.
例えば、Elkiesの定理から「がの倍数になるような素数は無数に存在する」ことがこの合同を通して分かります。