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数、特に整数に関する記事。

エルデシュ・トゥーランの定理

Nを正の整数とし、1 \leq a_1 < a_2 < \cdots < a_r \leq Nを満たすような整数列\{a_n\}_{n=1}^rを考えましょう。\{a_n\}_{n=1}^rが等差数列をなすような三項を一切含まないとき、\{a_n\}_{n=1}^rは(Nに関する)A-数列であるといいます。

定義 A(N)Nに関するA-数列としてあり得る最大項数と定義する。

このとき、ErdősとTuránは次のようなA(N)の上からの評価を与えています。

定理1 N \geq 4であれば、例外であるN=7を除いてA(2N) \leq Nが成立する。

証明の前にA-数列に関する基本事項を三つ確認しておきましょう。

基本事項1 1 \leq a_1 < a_2 < \cdots < a_r \leq Nなる整数列\{a_n\}_{n=1}^rNに関するA-数列であれば、
N+1-a_r < N+1-a_{r-1} < \cdots < N+1-a_1
r個の整数からなる数列もNに関するA-数列である。

基本事項2 1 \leq a_1 < a_2 < \cdots < a_r \leq Nなる整数列\{a_n\}_{n=1}^rNに関するA-数列であれば、k < a_1であるような任意の正整数kに対して
a_1-k < a_2-k < \cdots < a_r-k
r個の整数からなる数列もNに関するA-数列である。

基本事項3 n, mを正の整数とする。このとき、
A(n+m) \leq A(n)+A(m)
が成り立つ。

基本事項3の証明. 1 \leq a_1 < a_2 < \cdots < a_r \leq m+nを満たすようなA-数列\{a_i\}_{i=1}^rを任意にとる。このとき、

1 \leq a_1 < \cdots < a_s \leq m < a_{s+1} < \cdots < a_r \leq m+n

を満たすようなs \leq rが一意的に存在する。このとき、\{a_i\}_{i=1}^smに関するA-数列なので、s \leq A(m)を満たす。また、基本事項2より

a_{s+1}-m < a_{s+2} - m < \cdots < a_r-m \leq n

からnに関するA-数列\{a_{s+i}-m\}_{i=1}^{r-s}が得られるので、r-s \leq A(n)である。以上によって

r = s+(r-s) \leq A(m)+A(n)

がわかった。最初にとったA-数列は任意であったからA(n+m) \leq A(n)+A(m)である。 Q.E.D.

定理1の証明

まずはNが小さい場合にA(2N)の値を順に決めていく。

A(8)=4

A(8) \geq 5であると仮定する。項数58に関するA-数列が存在する。それは1から4または5から8のいずれかの数を三つ含む。必要ならば基本事項1を用いることによって1から4の数を三つ含むと仮定してよい*1。更に必要ならば基本事項2を用いることによって1を含むとしてよい。1, 2, 3の三つは同時には含まないのだから、1, 2, 4または1, 3, 4を含むことになる。例えば1, 2, 4を含むとすると、7を含むことができないことはすぐにわかる(1, 4, 7が等差数列となる)。このようにして全ての可能性(数通りしかない)を考えるとどの場合であっても等差数列を含んでしまって矛盾する。一方、1, 2, 4, 5A数列なのでA(8)=4が確定する。

A(10)=5

A(10) \geq 6であると仮定する。項数610に関するA-数列が存在する。A(8)=4であることを考慮すると、そのような数列は必ず9, 10を含む。基本事項1を使えば1, 2を含むようにできるが、それについても先ほどのことは成り立つ必要があるので、1, 2, 9, 10を含むとしてよい。この時点で3, 5, 6, 8を含むことはできず、従って1, 2, 4, 7, 9, 10というA-数列であるということになるが、1, 4, 7は等差数列なので矛盾。一方1, 2, 4, 9, 10A-数列なのでA(10)=5が確定する。

A(12)=6

A(12) \geq 7であると仮定する。項数712に関するA-数列が存在する。A(10)=5であることを考慮すると11, 12を必ず含む必要があり、基本事項1を考えると1, 2, 11, 12を含むとしてよい。A(8)=4を考慮すると、1, 2, 11, 12を含む場合は必ず9も含む必要がある。すると基本事項1を使えば1, 2, 4, 9, 11, 12を含むとしてよい。あと1つどの数を追加しようとも等差数列が作られ矛盾する。一方、1, 2, 4, 9, 11, 12A-数列なのでA(12)=6が確定する。

A(14)=8

A(12)=6より、A(14) \leq 8。一方、1, 2, 4, 5, 10, 11, 13, 14A-数列である。

A(16)=8

基本事項3を用いると、A(16) \leq A(8)+A(8) = 8。一方、A(14)=8を実現するA-数列は16に関するA-数列でもある。

確定させるのはここらへんまでにしておいて、基本事項3により

\begin{align}&A(18)\leq A(8)+A(10)=9, \\ &A(20)\leq A(8)+A(12)=10, \\ &A(22) \leq A(10)+A(12)=11\end{align}

がわかる。あとはN \geq 12の場合に数学的帰納法で証明する。N-4で成立すると仮定すると、基本事項3により

A(2N) \leq A(2N-8)+A(8) \leq N-4+4 = N

Nの場合も成立することがわかる。 Q.E.D.

実はNが大きくなるとA(N)はもっと小さくなります。実際、Erdős-Turánは同じ論文で以下の定理2を証明しています。

定理2 任意の\varepsilon > 0に対して正整数N_{\varepsilon}が存在し、N \geq N_{\varepsilon}であれば
\displaystyle A(N) < \left( \frac{4}{9}+\varepsilon \right) N
が成り立つ。

準備となる命題の証明から始めましょう。

命題 k \geq 3とする。このとき、
A(2^k+2^{k-3}-1) \leq 2^{k-1}
が成り立つ。

証明. kに関する数学的帰納法で証明する。k=3のときはA(8)=4より成立。k-1で成立すると仮定する。2^k+2^{k-3}-1に関する項数2^{k-1}+1A-数列\alphaが存在したと仮定する。帰納法の仮定と基本事項3より

A(2^k+2^{k-3}-2) \leq 2A(2^{k-1}+2^{k-4}-1) \leq 2^{k-1}

であるから、\alphaは必ず2^k+2^{k-3}-1を含む必要がある。基本事項1によって\alpha1も含むとしてよい。すると、\alpha2^{k-1}+2^{k-4}を含むことはできない。よって、\alphaを構成する数は

1 = a_1 < a_2 < \cdots < a_s < 2^{k-1}+2^{k-4} < a_{s+1} < \cdots < a_r = 2^k+2^{k-3}-1

のようになっている。ここで、r=2^{k-1}+1である。すると、\{a_n\}_{n=1}^s2^{k-1}+2^{k-4}-1に関するA-数列なので

s \leq A(2^{k-1}+2^{k-4}-1) \leq 2^{k-2}

であり、基本事項2によって、\{a_n-2^{k-1}-2^{k-4}\}_{n=s+1}^{r}2^{k-1}+2^{k-4}-1に関するA-数列なので

r-s \leq A(2^{k-1}+2^{k-4}-1) \leq 2^{k-2}

を得る。つまり、2^{k-1}+1=r \leq 2^{k-1}となるので矛盾する。従って、A(2^k+2^{k-3}-1) \leq 2^{k-1}が示された。 Q.E.D.

定理2の証明

k \geq 3に対してf(k):=2^k+2^{k-3}-1 =9\cdot 2^{k-3}-1とおくと、N\geq 8

N = f(k_1)+f(k_2)+\cdots +f(k_r)+a

と表すことができる。ここで、f(k_1) \leq N < f(k_1+1)を満たし、k_1 > k_2 > \cdots > k_{r-1} \geq k_r\geq 3は整数で、a0から7の整数。例えばN=130であれば

130=f(6)+f(5)+f(4)+7 = 71+35+17+7.

すると、命題と基本事項3により

A(N) \leq A(f(k_1))+\cdots + A(f(k_r))+A(a) \leq 2^{k_1-1}+\cdots + 2^{k_r-1} + 4

を得る。x=2^{k_1-3}+\cdots + 2^{k_r-3}とおけばN=9x-r+aであり、k_1=kとすればr \leq k-1なので

\displaystyle \frac{A(N)}{N} \leq \frac{4x+4}{9x-r+a} \leq \frac{4x+4}{9x-k+1} = \frac{4+\frac{4}{x}}{9-\frac{k-1}{x}}

と評価できる。最後の数は4/9より大きい数であるが、N \to \inftyのときk \to \infty4/9に収束する。よって、主張が成立する。 Q.E.D.


彼らは論文でA(N)ではなくr(N)という記号を用いているのですが、

It is probable that r(N)=o(N).


と述べています。


長さ3の等差数列の存在したいという声が聴こえてきます。


これがErdős-Turánの予想であり、その後の大きな物語を生むことになるのです。


Wikipediaより画像Erdos_budapest_fall_1992_(cropped).jpg, 作者Kmhkmhを二次利用しています。

*1:この言い回しはそのような項数58に関するA-数列が存在するということ。以下同様。