をに関する-数列の最大項数とします(この記事ではRothに従ってやも正整数を表します)。Rothは以下のErdős-Turánによる予想
を1953年までに解決しました*1。彼はその直後、より精密な定理
を証明しています。この記事ではRothの論文に従って、定理の証明を解説します。Szemerédiの定理に続く最初の大成果です。なお、彼はこの二年後にFields賞受賞理由となる有名なRothの定理を証明しています。
基本事項
基本事項の番号はErdős-Turánの記事の続きとします。
この簡単な事実から次がわかります:
から -部分列 を取り出した際、に関する-数列 が付随します。
もう一つ基本事項を用意しておきます。
証明. 基本事項3よりなので1. が従う。また、
が成り立つ。理由: より左側の不等式が成立。右側は最初に述べた不等式から
に注意すれば成立することがわかる。 よって、両端を比較することにより2. が示された。3. は定義より明らか。 Q.E.D.
指数和の評価1
以下、に関する-数列 を固定します(もも正整数)。実数に対してという記号を用います()。を実数とします。このとき、指数和を
で定義します。に対し、補助的な指数和を導入します。
証明. これはDirichletの近似定理ディリクレの近似定理 - INTEGERS
においてとすればよい。とできるのは明らか。 Q.E.D.
補題2によって存在するを取って固定し、なる正整数に対し、指数和を
と定義します。はの選択に依る量ですが、ならばとなります。
理由: なのでが整数でないことに注意すれば、等比数列の和の公式によって
である。
この節の目標は次の評価を示すことです:
証明. まず、
と書くことができる。理由: に対して を満たすような整数は
の丁度個である。固定しているのうち、を満たすものについては上記個の数は全てに属す。従って、
におけるの係数はである。なる達は高々個しかなく、の係数は未満なので、その寄与はである。以上の考察からの書き換えが従う。
次に、①の内側の和について
と変形できることに注意する。理由: なので
一つ目についてはなので また、なので と書け、
である。ここで
なので(に注意)、
がわかった。 また、①の内側の和は高々項の和である。理由: , に関する和であるが、これはにある長さの等差数列のうち-数列をなす部分のみをわたっている。従って、補題1から高々項である。
そこで、その項数をと表すことにする()。以上わかったことをまとめると
を得る。ここで、2つ目の等号には基本事項5の3. を使い、3つ目の等号にはを用いた。
さて、の議論を除いて、従ってこの議論中においてはという性質を用いていない。故に、②においての場合を考えることができて、
を得る。よって、これらを組み合わせることにより
が示された。 Q.E.D.
指数和の評価2
前節の結果をより特殊なケースに適用していきます。を正の偶数、をに関する極大-数列とします。すなわち、
が成り立ちます(最後の不等号は基本事項5の1. より)。のうち偶数であるものがであるとします。
から
という-数列が得られるので(基本事項4)、基本事項5の1. と合わせて
が成り立ちます。計算: よりは偶数なので
のうち奇数であるものがであったとするとはに関する-数列(基本事項4)なので
であり、
が得られます(④を使いました)。
③、④より
です。
証明. (主張はそれらの選択に依らないものであるが)補題2のDirichlet近似を一つ選択して証明する。
の場合. とすれば前節のセッティングでとなっている。また、
であり、なのでである。よって、となっている。補題3と③より
を得る。
の場合. に関する-数列を考えると、その設定()で となる。また、先ほどと同様にである。よって、補題3と⑤より
を得る。
の場合. この場合であったので、の場合においてをに置き換えた評価が成り立つ。よって、を評価すればよい。ここで、Weyl Differencing - INTEGERSの補題1より
が成り立つことを思い出す。上記記事の補題3に近い議論をする。すなわち、
であることから
を得る。よって、に応じてとすることにより
と評価できる(基本事項5の3. よりに注意)。 Q.E.D.
証明. 三角不等式によって
なので、⑥と補題4より所望の評価が得られる。 Q.E.D.
証明. なので、⑦より
である。よって、補題4と合わせて証明が終わる。 Q.E.D.
Hardy-Littlewoodの円周法
設定は前節と同じまま、Hardy-Littlewoodの円周法によってに関する不等式を帰結します。
証明. の定義より
であり、は周期の関数なのでこの積分はに依らず
となる。ここで、積分を実行すると
なので、
がわかった。今、は-数列なので となるのは(それはということなので) である場合に限る。つまり、上の集合の元の個数はに等しい。従って、④によって積分値を上から評価できる。 Q.E.D.
証明. より
であり、
なので
と計算できる(はKroneckerデルタ)。 Q.E.D.
以下、を満たすと仮定します。
変数変換 により
なので、命題2と補題5より
です。命題1からは
次は
理由: であり、
と変形できる。ここで、 のときは なので、⑦より
がに対して成り立ち、
を得る。
と来て、最後に次の積分を計算します:
ここで、です。
従って、
と計算できました。以下、はパラメータに依らない絶対正定数とします。としてに注意すると、
と書き換えられます。を正の整数とし、としましょう。すると、最終的に
が得られました。
Rothの定理の導出
ここまでに円周法を使った評価を行いましたが、前節の最終帰結からRothの定理を導出する部分は初等的ながらも技巧的で面白いです。
ととっておきます(大きくするのは自由なので)。また、とします。このとき、
なので、基本事項5の3. より が成り立ちます。つまり、が十分大きければ 、前節の条件 は満たされます。基本事項5の3. よりであり、
なので、
を得ます(に注意)。よって、前節の帰結から
がいえました。ここで、基本事項5の1. よりは減少関数であることに注意します。
従って、なる整数に対して
です。ここで、望遠鏡和と
とを取る計算を行っています。
証明. 条件と⑪より
である。 Q.E.D.
命題4より であれば
が成り立ちます(からに向かって繰り返し命題4を用いている)。さて、これは
に他なりません。は減少関数であったので、であれば
であり、となります。最後に、を なる正整数とすると、基本事項5の2. より
となり、Rothの定理が証明されています。
写真はWikipediaのTuránの画像Bundesarchiv Bild 183-33149-0001, Leipzig, Universität, Professor Turan.jpgを二次利用しています。Rothの写真ではありません。
*1:普通Erdős-Turán予想と言ったらSzemerédiの定理のことを指す習慣がありますが、このブログでは、彼らの1936年の論文で明示されているの場合を指すこととします。