これは好きな証明Advent Calendarの22日目の記事です。
Ruzsa-Szemerédiの三角形除去補題からRothの定理を導出できることは有名ですが、SolymosiによってAjtai-Szemerédiの定理を導出することもできることが示されています。これが面白いので紹介します。
まず、三角形除去補題の主張を思い出しましょう。
次の系の形で使用します。
証明. を(後で指定)に対して三角形除去補題から定る数とし、の辺の数をとする。vacuousに評価してはのに依存した定数(とする)倍で上から評価され、
が成り立つようなをとっているものとする。の辺が作る三角形の個数はに関する仮定からなので、の取り方から
が成立している。よって、三角形除去補題よりから辺が作る三角形が一切ない状況にするために必要な辺の除去数は
を超えない。一方で、に関する仮定から上記必要な辺の除去数はである。よって、とすればよい。 Q.E.D.
次にAjtai-Szemerédiの定理の主張を書きます。
では、Ajtai-Szemerédiの定理をRuzsa-Szemerédiの系から導出しましょう。格子点と本の直線達を想像しながら読んでください。
証明. 対偶をとって証明する。がコーナーを持たないと仮定し、を任意にとる。をRuzsa-Szemerédiの系によって存在する番号とし、とする(ただし、に対するもの)。三部グラフを以下のように定める:
- は個の直線 のなす集合
- は個の直線 のなす集合
- は個の直線 のなす集合
とし、に対して、がに属するための必要十分条件は(平行でない)二直線の交点(それはa prioriにはにある)がに属することとする。
構成からの辺が作る三角形は内のコーナーおよびの元に対応するが、内にコーナーはないと仮定しているための各辺は丁度一つの三角形に含まれており、の辺の数はに等しい。従って、Ruzsa-Szemerédiの系によってが示された。は任意なので、が従う。 Q.E.D.
Ruzsa-Szemerédiの三角形除去補題は台となるグラフがであり、 これを一般のuniform hypergraphに拡張したものがGowersおよびNagle-Rödl-Schacht-Skokanによるhypergraph removal lemma (=HRL)です。Taoの論文なんかだとHRLからFurstenberg-Katznelsonの定理の導出に「有限加法群に対するSzemerédiの定理」を経由しますが、Solymosiの方法を自然に高次元に拡張してHRLから高次元コーナー定理を証明した後に、高次元空間の星座をより高次元の空間内のコーナーに移行させるテクニックを用いてFurstenberg-Katznelsonの定理を導出できることを(Gowersの論文でも示唆されているとのことですが)甲斐さんに教えていただきました。